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GW明け、みんな刑事コロンボになる国 ――桜の町の散髪屋で、おばちゃんだけが先に日本の変わり目を笑っていた――

✦GW明け、

 みんな刑事コロンボになる国


――桜の町の散髪屋で、

 おばちゃんだけが

 先に日本の変わり目を

 笑っていた――


………


ほんまに怖い時代いうんは、

爆発音で始まるんじゃない。


春の桜がよう咲いとる町で、

テレビが「大丈夫です」

言うとる横で、

散髪屋のおばちゃんが


「GW明けたら、みんな

 刑事コロンボになるで」


と、

笑いながら言うた時、

もう始まっとるんよ。


――爆弾は、静かに、

 笑顔で、来るんや。


………


★目次


■第一章 

 散髪屋は町の証券会社


■第二章 テレビは大丈夫、

 おばちゃんは怪しい


■第三章 

 韓国の散髪屋、

 クリーニング屋が

 先に泣いた


■第四章 

 GWまでは持たせる国


■第五章 

 レモンの次に消えるもの


■第六章 

 冷凍うどんの平和


■第七章 

 気軽に買える新米が

 ●ぬ日 


■第八章 

 ATM六万五千円の国 


■第九章 

 空の目詰まり、

 海の目詰まり 


■第十章 

 美容院、車検、

 クリーニングから

 先に崩れる


■第十一章 

 家に帰ると、

 嫁さんに叱られる 


■第十二章 

 GWのあと、

 請求書みたいに

 来る現実 


■あとがき

 シャーロック・ホームズと

 ワトソンのやすきよ漫才風



❥Z世代のあなたへ


………


■第一章 

 散髪屋は町の証券会社


わしの住む町は、古い町じゃ。


春になると、

川べりにも、

古い家並みの隙間にも、

桜がふわっと咲く。


冬になると、

背の高いポプラが、

乾いた空にすうっと立つ。


観光地いうほどやない。

でも、長う住んだ 

人間には分かる。 


この町は、昔から 

あんまり変わらん顔をして

生きてきた町なんよ。


そんな町に、

今年の春も、

いちおう同じように来た。


遊びに来とるんは、

小学校六年生の孫、

すみれ。


おばあちゃんが大好きで、

台所をうろうろしては

「今日の晩ごはん、何?」

と聞く。


わしは六十七歳、

元証券会社勤務の

おじいちゃんじゃ。


若い頃は、

株価、金利、為替、原油、

そういう数字の

顔色を見て飯を食うとった。


世の中いうもんは、

数字が先に喋るんじゃ、

ずっとそう思うとった。


でも、

今年の春だけは違う。


ほんまに先に喋り始めたんは、

数字やのうて、

近所の散髪屋の

おばちゃんじゃった。


「ちょっと散髪行ってくる」 


そう言うて

玄関を出ようとしたら、

台所から

嫁さんの

まゆみちゃんの声が飛んだ。 


「また長うなるんじゃろ。

 あんた散髪に

 一時間言うて出て、 

 三時間帰って

 こんのじゃけえ」


「今日はほんまに

 切るだけじゃ」


「切るだけって、

 あんた、 

 切るほど髪ないじゃろ」


わしは、

それを噛み切ったら

ハゲになるがな、

と心の中で毒づいた。


ニコニコ笑うて飲み込んだ。 

まゆみちゃんは、

わしが飲み込んだ顔まで 

よう知っとる。


「はいはい。

 どうせまた床屋で

 世界情勢の話じゃろ。

 男がぺらぺらぺらぺら」


すみれが横で笑うた。  


「おじいちゃん、

 髪切りに行くんじゃなくて、

 おしゃべりしに行くんだね」


その通りじゃった。


散髪屋は、古い通りにある。


赤白青のサインポール、

少し色あせた看板、

大きな鏡、

白い布。


そして、

店の隅ではテレビが流れとる。

昼のワイドショーじゃ。


「GWの旅行は――」

「ガソリン価格は――」

「備蓄は十分――」


そんな、よく通る声が流れとる。


その下で、

六十九歳の姉・節子さんと、

六十七歳の妹・弘子さんが、

散髪屋を切り盛りしとる。 


「いらっしゃい」 

「ご無沙汰です」


節子さんが言うた。


「今日は普通の散髪? 

 それとも世界経済つき?」


「髪だけでええ」


わしが言うと、 

弘子さんが笑うた。


「この人が髪だけで

 帰ったこと、

 あったかねえ」


椅子に座って、

首に白い布を巻かれる。


テレビは相変わらず

落ち着いとる。


「日本経済は底堅く――」


それを聞いた節子さんが、

鼻で笑うた。


「底堅い、言うのは

 勝手じゃけどね。

 最近この町、

 髪型の相談より

 値上げの愚痴の方が

 倍多いわ」


「クリーニング屋の

 奥さんも来たで」


弘子さんが言う。 


「透明なカバーが高い、

 ハンガーも前みたいに

 入らん、

 洗うより店の方が

 乾いてしまう

 言うとった」 


「美容院の人も言うとった」


節子さんが続ける。


「シャンプーも、リンスも、

 地味に上がる。

 パーマ液も、カラーも、

 前みたいな値段では

 入らんのに、

 お客にはそんなに

 転嫁できんて」


ハサミが、 

ちょき、ちょき、と鳴る。


その音の合間に、

町の話が挟まる。


「あそこの車ディーラー、

 人がおらんかった

 らしいで」


「次の借りての入らん店、

 また増えとるらしい」 


「旅行会社で、

 GWの欧州ツアーが

 怪しい言うお客もおったわ」


「韓国じゃ、

 クリーニングも美容も、

 もう死にかけらしいなあ」


「ほれみい、

 やっぱり日本も来るわ。

 GW明けたら、

 町の空気、  

 ガラッと変わるで」


この店は、

ただの散髪屋やない。

町の証券会社なんよ。


株は扱わん。

でも客の顔色、

財布の開き方、

切る間隔、

旅行の話、 

スーパーの値段、

空き店舗、

そういうもん全部で

景気を読んどる


――そして、読んだ先を、

 笑いながら予言しとる。 


■第二章 

 テレビは大丈夫、

 おばちゃんは怪しい


「うちは

 学者じゃないけどね」


節子さんが、

わしの頭を見ながら

言うた。


「お客の切る間隔で、

 町の景気は

 だいたい分かるんよ」


「みんな口では

 大丈夫言うても、

 来る回数が

 伸びたら終わりよ」 


弘子さんが続ける。

テレビはその横で、

今日も落ち着いた

声を出しとる。


「生活への影響は

 限定的です」


「ガソリン価格は

 安定しています」


「備蓄は十分です」


その“十分です”いう言葉が、

この店では爆笑ものや。


なにしろ現場では、

ナフサ由来の接着剤や

シンナーの調達が

もう詰まっとる。


住宅設備や塗料、

薄め液の世界で

受注停止や

納期変更が連日出とる。


政府は「十分」言うとるけど、

海外報道じゃ

ナフサ依存企業で

配送支障や

価格引き上げが広がり、

シンナーを“いつも通り”

入手できる会社は

ごく一部だけや。


「大丈夫

 大丈夫言うてもね」


節子さんが言うた。


「本気で大丈夫なら、

 なんでこんなに

 みんな切る回数も、 

 カラーも、

 クリーニングも

 伸ばし始めるんかね」


「誰が首相でも、

 ほんまに苦しい時は

 少し生活変えてくれって

 言わにゃいけんの

 じゃないの」


弘子さんがぼそっと言うた。


これは井戸端会議じゃ。

少々大げさ。

少々毒舌。

でも、芯は外れとらん。


✲「政府はガソリン価格を

 平均170円/L前後に

 抑えるため、

 8000億円の予備費を

 ぶち込んで

 月3000億円規模の補助金を

 垂れ流しとる。 

 高市政権も

 『国民が耐えられない

  水準まで上げない』

 と繰り返しとる。

 一方で、海外報道じゃ

 政府は経済安定優先で

 節約要請を

 徹底的に避けとる?」


「石破さんの

 言うことの方が、

 まだ腹に落ちるわ」


節子さんが言うた。


「今は節約を

 呼びかけるのが

 当たり前じゃ、

 って言うとったんじゃろ」


実際に、石破氏は4月17日に

「節約を呼びかけるのは

 当たり前だ」

「今まで通り

 自動車に乗ってください、

 では必ず行き詰まる」

と言ったいう噂じゃ。


「ほら、七割方の人も

 もう節約した方がええ

 思うとるらしいで」


弘子さんが言うた。


✲TBSの調査じゃ

 74%が石油不足を

 本気で懸念しとる


つまり、

節子さんらの毒舌は、

絵空事なんかじゃない。


株屋の当たらない

お抱えアナリストより

よっぽど上手じゃ。


■第三章 

 韓国の散髪屋、

 クリーニング屋が

 先に泣いた


「韓国じゃ、

 もう地獄絵図やて」


弘子さんが、

シャンプーの

業務用ボトルを

ガチャンと置いて吐き捨てた。


✲「3月の輸入物価が

 前月比16.1%も

 跳ね上がってるんよ。

 原油なんか88.5%上昇!

 ナフサの値段は

 1トン640ドルから

 1220ドルへ、ほぼ倍や。

 韓国はナフサの45%を

 輸入に頼っとって、

 その77%が中東産、

 ホルムズ通しやったんや。

 封鎖されたら

 一発で在庫2週間分。

 LG Chemが

 Yeosuの工場止めて、

 他の大手も稼働率半分以下。

 プラスチック容器が

 作れんようになって、

 即席麺の袋も、

 ごみ袋も、

 デリバリーの容器も、

 化粧品の瓶も全部ピンチ。

 店主が『もう商売できん』 

 って泣きながら

 閉めてるんやて」


「クリーニングが

 先に泣くんよ」


節子さんがハサミを

ピタッと止めて言う。


「ワイシャツしわでも●なん。

 コート洗わんでも●なん。

 だから先に削られる。

 韓国じゃもう、

 ビニールが高すぎて

 ハンガーも溶剤も入らん。

 店が潰れ始めてる」


「散髪も同じよ」


弘子さんが続ける。


✲「パーマせんでも●なん。

 カラーせんでも●なん。

 でも、店は●ぬ。

 シャンプーも容器も

 ナフサ由来で作れん。

 美容院の客は

 『高いからやめとく』

 って、

 髪ボサボサで我慢。

 K-beautyの

 化粧品容器すら

 棚から消えかけてるんやて」


節子さんは、

鏡越しにわしを

睨むように見て、

ニヤリと笑うた。


✲「政府は3月27日から

 ナフサ輸出を

 5ヶ月全面禁止にしたんよ。

 国内生産分

 全部内需に回せ、

 買い占め禁止、

 毎日報告せえって大慌て。

 ロシア産まで

 手を出す始末やて。

 それでも在庫は2週間。

 『まだ大丈夫』

 言うてるけど、

 基金切れたら終わりや。

 そのうち、みんな

 刑事コロンボになるで。

 しわくちゃのシャツ、

 伸び放題の髪、

 色の抜けた毛先、

 ボロボロの格好で歩くんよ。

 それでも人は●なん。

 でも、町の

 “普通”は●ぬんよ。

 韓国が今、日本が明日や。

 笑える? 笑えんよ、

 これが始まりや」


わしは、

その言い方が

骨に突き刺さった。


笑えるのに、

笑って終われん。


怖いんは、

笑いながら来ることや。


■第四章 

 GWまでは持たせる国


その日の帰り道、

わしは古い町並みを歩いた。


桜はまだ残っとる。

道端には犬を連れた年寄り。

自転車で買い物へ向かう

おばあさん。

昔から変わらんような景色。


でも、

その景色の下では、

町の継ぎ目が

ガタガタに緩んできとる。


✲空き店舗

✲ベニヤ板

✲人のいないディーラー

✲現金しか受けん店 

✲問屋の遅れ

✲値上げを言い出せん

 小さい商売。


それでも町は、

ぱっと見では普通なんよ。

そこが一番怖い。


ほんまに

危ない時代いうんは、

いきなり廃墟にはならん。


ちゃんと店は開いとる。

ちゃんと商品も並んどる。

ちゃんとテレビも笑うとる。


ただ、

「次も同じように回る」

という保証だけが、

先に死ぬ。


「GWまでは持たせるんよ」


節子さんの声が、

歩きながら耳に残っとった。


「笑うとるうちが花よ。

 連休終わったら、

 請求書みたいに

 現実がドカンと来るわ」


■第五章 

 レモンの次に消えるもの


人はよう勘違いする。


スペインのレモンが来ん、

と言うたら、

レモンだけの話やと思う。


違うんよ。


欧州からアジアへ来る

果物や生鮮品が減る。


韓国もシンガポールも

マレーシアも

代わりの産地を探し始める。


フィリピン、タイ、豪州、

冷凍フルーツ、乾燥フルーツ

――全部に注文が殺到。


すると日本が

普段頼る別産地まで、

高く、少なく、遅くなる。


「一個の欠品って、

 一個で済まんのよ」


弘子さんが言うた。


「代わりを探した先まで、

 ドミノみたいに

 崩れるんよ」


✲中東ハブの乱れで、

 アジア―欧州の空の枠は

 奪い合い


Cathay Pacificも

5月中旬から減便。


欧州ではジェット燃料不足で

夏の欠航リスクが

すでに警戒レベル。


節子さんは、 

そんな数字を知らん顔で言う。


「レモンが来ん、

 で終わるんなら、

 まだ優しいわ。

 怖いんは、その次よ。

 全部が、静かに、

 笑顔で、来るんや」


■第六章 

 冷凍うどんの平和


家に帰ると、

まゆみちゃんが

冷凍庫を見て言うた。


「冷凍うどん、

 また減っとる」


今の若い人にとって、

冷凍うどんは最後の

平和みたいなもんじゃ。


一玉安い。

レンジで数分。

卵をひとつ落として、

醤油を垂らしたら、

それで晩ごはんになる。


でも、あれは

小麦粉だけで

できとるんやない。


冷凍設備。

電気。

包装フィルム。

物流。

保管。

整備。

全部いる。 


つまり、

文明の余裕でできとる

“最後の主食”なんよ。


「冷凍うどんだけは味方、

 言う人が

 増えとるんじゃろ」 


まゆみちゃんが言う。


「みんな同じこと

 考えとる時点で、

 もう終わりなんよ」


すみれが、

冷凍庫をのぞき込んだ。


「なくなるの?」


「いきなりゼロにはならん」


わしは答えた。


「でも、前みたいに

 気軽には

 買えんようになる。

 GW明けたら、 

 まずそれが来る」


■第七章 

 気軽に買える新米が●ぬ日


「今年の新米、 

 どうなんじゃろ」


その晩、

まゆみちゃんが

ぽつりと言うた。


「なくなるんかのう」


「なくなる、

 とはまだ言えん」


わしは答えた。


「でも、

 “まあ買えるじゃろ”

 いう気楽さは、

 ●ぬかもしれん」


✲「USDAの見通しじゃ、

 日本の2026/27年の

 コメ生産は前年度比

 約1.5%減。

 高齢化、作付減少、

 物流とエネルギーの

 重さを考えたら、 

 “平年通り”はもう幻想や」


すみれが首をかしげる。


「お米って、

 毎年ちゃんと 

 食べられるもん

 じゃないの?」


わしは少し笑った。


「その“ちゃんと来る”が、

 一番高いもんなんよ。

 GW明けたら、

 まずそれが崩れる」


■第八章 

 ATM六万五千円の国


最近、まゆみちゃんは

前より現金を

持つようになった。


「また下ろしたん?」


「そりゃ下ろすよ。

 現金しか受けん店、

 まだ多いし。

 冠婚葬祭もあるし。

 カード手数料が

 嫌な店も多いし」


ATMでの引き出し額が

増えとるのは、

物価高だけやない。


✲現金しか受けん店

✲キャッシュレス手数料に

 耐えられん中小店

✲ATM手数料を避ける

 まとめ引き出し


つまり今の日本は、

キャッシュレスが

進んだ国というより、

店が便利さの手数料を

払えんほど痩せた国に

なりかけとるんよ。


空き店舗。

ベニヤ板。

人のいない車ディーラー。


それでもテレビは言う。


「景気は

 持ち直しつつあります」


その言葉を聞くたび、

わしは背筋が寒くなった。


■第九章 

 空の目詰まり、

 海の目詰まり


GW特集がテレビで

流れるたび、

節子さんはよう言うた。


「今ごろ海外行って、

 帰りどうするんかね」


「また始まった」


弘子さんが笑う。


「でもほんまよ。

 飛行機が飛ぶか

 飛ばんかやない。

 前みたいな値段で、

 前みたいな便数で、

 前みたいに帰れるかの

 話になっとるんじゃろ」


その通りなんよ。


✲欧州では

 ジェット燃料不足の

 警戒が強まり、

 旅客便の減便や

 欠航の懸念が高まっとる。

 中東ハブの制限で、 

 人の移動だけやのうて

 腹下貨物の枠まで細る。 


島国は、

法律で鎖国するんやない。


値段と減便で、

静かに鎖国になるんよ。


■第十章 

 美容院、車検、

 クリーニングから先に崩れる


六月が近づくにつれ、

散髪屋の会話は

もっと生々しくなった。


「カラーは今月やめとく」


「クリーニング、

 高うてのう」


「車検、

 もう少し先でええかな」


「ネイルどころやないわ」


「エステなんか行かれん」


そういう話が、

白い布のまわりに毎日転がる。


「ほれ見い」


節子さんが言うた。


「命に直結せんもんから、

 みんな切り始めるんよ」


「でも、それって」


わしが言いかけると、

弘子さんが先に切り捨てた。


✲「町が痩せ始めた証拠よ。

 GW明けたら、

 韓国みたいに美容院が

 バタバタ潰れるで。 

 ナフサ来んようになって、

 シャンプーも容器も作れん。

 店は●ぬ。

 お客は 

 しわくちゃの髪で我慢。

 クリーニングも同じ。

 ワイシャツは

 洗わんで済ます。

 店は潰れる。

 韓国じゃもう

 ごみ袋が品薄で

 買い占め禁止令が

 出とるんやて。

 ラーメンの袋すら作れん。

 LG Chemの工場止めて、 

 大手が『不可抗力』

 言うてる。

 政府は輸出5ヶ月

 禁止にしたけど、

 在庫2週間分しかない。

 補助金はGWまで

 持たせとるけど、

 基金は2ヶ月で

 底つくんやて。

 5月になったら

 ガソリン200円超え、

 ATMは一回6万5千円の壁。

 現金引き出しラッシュで

 銀行も悲鳴。

 みんな、

 刑事コロンボみたいに

 ボロボロの格好で、

 テレビの嘘を

 疑い始めるんよ。

 韓国が先に見せた地獄が、

 日本に来る。

 笑うてる場合ちゃうわ」


■第十一章 

 家に帰ると、

 嫁さんに叱られる 


その日も、

わしは散髪屋に長居した。


家に帰ったら、

まゆみちゃんが腕を組んどった。


「あんた、

 散髪に行ったんじゃろ。

 なんで毎回、

 世界経済まで

 切って帰ってくるん」


「いや、ちょっとの。

 韓国の散髪屋の話から

 始まって――」


「なんで髪切りに行って

 韓国の散髪屋になるん。

 少しはしゃべるの

 やめなさい」


すみれが吹き出した。


「おじいちゃん、

 髪切りに

 行くんじゃなくて、

 世界を聞きに

 行ってるんだね」


わしは黙って

味噌汁をすすった。


でも、

心のどこかでは

救われとった。


家に帰って、

こうして叱られるうちは、

まだ完全には

壊れてないんじゃと

思えたからじゃ。


■第十二章 

 GWのあと、

 請求書みたいに来る現実


GWは終わった。


でも、

町は翌日に急変したわけやない。


桜はまだ少し残っとる。

店もまだ開いとる。

冷凍庫も動いとる。

居酒屋も人がおる。

テレビも笑うとる。 


じゃけど、何かが違う。


値札。量。納期。

会話。客足。顔色。

財布の開き方。


全部が、ほんの少しずつ、 

でも確実に違う。


パニックいうんは、

棚が空になってから

来るんやない。


その前に、  

「次も同じように来るはず」 

という思い込みが、

音もなく●ぬ。


戦争が遠い海の話じゃと

思うとった人も、

そのうち気づく。


しわくちゃのシャツ。

切る間隔が伸びた髪。

高うなった米。

減った冷凍うどん。

現金しか受けん店。

空いたままの店舗。

テレビの「大丈夫です」。


その全部が、

ホルムズ海峡の続きなんよ。


そして一番怖いんは、

それが爆発みたいには

来んことじゃ。 


笑いながら。 

節約しながら。

我慢しながら。

少しずつ、 

普通の顔をしたまま来る。 


だから怖いんよ。


政府がGWまで

必死に隠した

“本当の日本”が、

請求書みたいに、 

ドカンと届くんや。


………


★あとがき

 シャーロック・ホームズと

 ワトソンのやすきよ漫才風


✲ホームズ


「ワトソン君、

 今回の事件は単純だよ。

 ホルムズ海峡が詰まった。

 その結果、

 日本人がみんな

 刑事コロンボになる」


✲ワトソン


「雑すぎるやろ先生!」 


✲ホームズ


「いや、かなり正確だ。

 まずクリーニングが減る。

 美容院を我慢する。

 整備も後回し。

 そして、

 しわくちゃのシャツで歩く」


✲ワトソン 


「コロンボさんに謝れ!」


✲ホームズ


「だが彼は生き延びた」


✲ワトソン


「そこだけ説得力あるな……」


✲ホームズ


「人類は、危機になると 

 まず“整える余裕”を

 失うんだよ」


✲ワトソン 


「ほんなら

 次は何失うんです」


✲ホームズ


「“次もあるはず”という

 安心だ。

 政府がGWまで

 国民に押し付けた

 “平常心”が、

 ポキッと折れる」


✲ワトソン 


「うわ、急に重いな先生」


✲ホームズ


「重いとも。

 人はガソリンが

 なくなるより前に、

 普通の暮らし方をなくす」


✲ワトソン


「笑うとる場合やないのに、

 なんでちょっと笑うて

 しまうんやろな……」


✲ホームズ


「井戸端会議はね、

 ワトソン君。

 文明の最後の

 防衛線なんだよ」 


………


❥Z世代のあなたへ


ほんまに怖いのは、

世界が終わることやない。


昨日まで普通やったことが、

今日から少しずつ

普通じゃなくなる

ことなんよ。


✲冷凍うどんが少し高い

✲米を買う時ちょっと悩む

✲飛行機が高い

✲美容院が遠い

✲クリーニングを我慢する

✲店が静かに消える

✲ごみ袋すら買えんくなる 


そういう小さい変化を、

「まだ大丈夫」で

流し続けると、

ある日、 

自分の生活そのものが

別の世界へ移っとる。


Xで韓国や欧州の惨状を

見てる君らは、

もう気づいとるはずや。


韓国じゃ今、 

✲ナフサ在庫2週間分、

✲輸出5ヶ月禁止、

✲LG Chem工場停止、

✲プラスチック容器消えて

 ラーメン袋も

 ごみ袋も品薄。

✲美容院潰れ、

✲クリーニング屋●に、


みんなボロボロの格好で

我慢しとる。 


テレビが

「大丈夫」言うてる間、

政府はGWまで

「平常心」を

国民に押し付けて、

補助金と備蓄を

ぶち込んで隠しとる。


でも、


✲基金は2ヶ月で枯渇


5月になったら、

韓国みたいに

シャンプーも容器も

なくなるかもしれん。


ガソリンは200円超え。

ATMは現金引き出し制限。

美容院・クリーニング屋が

ドミノ倒し。


散髪屋のおばちゃんが、

笑いながら予言した

通りかもしれん。


GW明け、日本中が

刑事コロンボになる。


しわくちゃの現実を、

君らはもう見逃さんでくれ。


小さい違和感を、ちゃんと見ろ。

世界は、いきなり終わらん。

でも、普通はある日、

急に戻らんようになる。

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