死者のための図書館
掲載日:2025/12/27
人生や運命なんてものは、本当に複雑に絡みあい出来ている。この世に必然なんてものはなく、偶然の現実が連続しているだけなのだ。
朝、いつも通り起きていれば……
ハンカチの忘れ物に気が付いた時、素直に家に戻っていれば……
青信号になった瞬間に走り出してなんていなければ……
私は死ぬことはなかった。
ここは死者のための図書館。生きていた場合の自分の人生を、ifの物語を楽しめる、そんな図書館。
私は1冊目を手に取った。
いつも通りの時間に起きて、支度をして出かけて事故にあった。
私は2冊目を手に取った。
忘れたハンカチを取りに戻り、会社へ急いでいた道中、事故にあった。
私は3冊目を手に取った。
青信号に変わってからも、慌てず左右確認をして横断歩道へ踏み出し、事故にあった。
……私は1573冊目を手に取った。
そして、事故にあった。
そうして私は気が付きたくもない現実を認めざるを得なかった。
”非常”な現実に屈服せざるを得なかった。
偶然の導きで事故にあったのではない。
いや、あれは事故ではなかったのだ。
私は死んだのではない。
私は殺されたのだ。
偶然と偶然が重なって、必然的に……殺されたのだ。
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