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冬休みの通学路 第九話 冬休みだけにしか現れない交差点

もうすぐ家に着く。

短い距離だったけど。

ミルクティーもほとんど残っていない。

まあ、いい気分転換にはなったな。

そう思いながら家の前まで辿り着いた時。

そこで俺は……。

僕が中学生になってからというもの。


分かりきっていたけど。


お姉ちゃんと一度も顔を合わせたことはなく。


更に忙しいことに。


クラスの流行や話題についていくので精一杯だった。


RAIライパッドにどんなアプリ入れてーー」


「隣のクラスに動画配信者やっている奴がーー」


「Zi Sタッチの次に出るゲーム機ってさぁーー」


いつの間にかお姉ちゃんを、いいやーー。


あの人のことを。


考えられないくらいに。


とにかく忙しく。


これに加えて中学生になって。


難しくなっていく勉強もある。


だから、時間が過ぎるのは。


小学生の時よりもあっという間で。


僕は、俺はーー。


あっという間に中学を卒業していた気さえしていた。


高校生活もこんな感じで。


「生徒の皆さん。ご入学ーー」


「うちら付き合っているんだし、冬矢くんのこととうっぴって呼んでもーー」


「雪村、この前の模試の判定残念だったーー」


あっという間に高校を卒業していて。


大学受験にも合格して。


親元を離れて。


一人暮らしも始めて。


大学生活も。


時間が過ぎるのが早く感じていて。


「よろしくな、雪村。これからのゼミ、楽しくやっていーー」


「ねえ、ユッキュ。ううん、冬矢。もうなんか一緒にいるのしんどーー」


「雪村くん。キミの卒論は“世代と時代で見る愛称”で本当にーー」


俺の中でお姉ちゃんはーー。


あの人はもう完全に思い出の存在になっていた。


……。


…………。


そういえば。


そうだよ。


俺、十年前の。


あの元旦の。


冬休みの通学路を一緒に歩いて以来。


“あの人“から最後に呼んでもらったっきり。


誰からも。


一度も。


ふゆちゃん“って呼ばれていないや。



ーーーー


夏に企業から内定をもらい就活を終え。


卒論も一段落して。


十二月、年末にさしかかり。


色々と疲れ切っていた俺は。


羽休みしたくて実家に帰省した。


そんな時だ。


あの頃遊んでいたゲーム機に触れ。


季節的なもんもあったせいか。


小学五、六年生の時の。


“あの人”との思い出があふれてきて。


センチメンタルというか。


感傷的になるのが自分らしくないと思って。


俺は外出して。


あの人と通った道とは真逆にあるコンビニまで足を運んだ。


そして、その帰り道。


自分の家の前で。


向かい側の。


俺が小学生や中学生の頃まで。


通学路としていた道の方向からやって来る。


あの人が、お姉ちゃんがーー。


いいや。


お姉ちゃんからお母さんになったあの人に。


俺は声をかけられた。


あの頃の呼び名のまま。


「もしかして、ふゆちゃん」


偶然にも俺は。


ベビーカーを押すあの人と出会でくわした。


あの人の声は弾んでいて。


とても幸せそうな姿に。


俺は嬉しくてたまらなかった。


涙が出そうだった。


でも、久々の再会だ。


ここは思い切り笑わなくちゃ。


あの人にとっての。


思い出の中の、あの頃の俺らしくない。


それこそ妙に気取って丁寧な喋り方をするんじゃなく。


子供っぽいと思われないくらいに。


シンプルにうなずく程度にしておこう。


「うん」


目を瞑りながら。


今俺は笑っているから。


あの人がどんな顔しているか。


分からない。


苦笑いしているかもしれない。


ああ、聞こえてくるベビーカーの車輪の音が。


どんどん大きくなる。


「ねえ、冬ちゃん。どうしたの」


寒空の下で俺は。


あの人に。


あの頃と同じ呼び方をされて


目のあたりがどんどん熱くなっていった。


ホント。


いい歳こいてダセェな、俺。


「なんでもないよ、お姉ちゃん」


言ってしまった。


子供っぽいと思われたくないのに。


俺もまたあの人に。


自分が小学生だったあの頃の呼び方をしてしまった。


だったら、いつまでも目を閉じているわけにもいかない。


ゆっくりとまぶたを開けていくとーー。


「変わらないね、冬ちゃん」


最後にちゃんと顔を見たのは。


もう十年くらい前になるし。


化粧もしているみたいだけど。


小学生だったあの頃の俺が見ていたーー。


俺がお姉ちゃんと呼んでいた頃の面影を残したままの。


優しいあの人の笑顔が目の前にあった。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

では、以前予告していた通り。

“お姉ちゃん“となっちゃんの本名を明かしますと。

お姉ちゃんは牡丹実可ぼたんみか

なっちゃんは牡丹七菜ぼたんなな

今作で二人の名前を曖昧にした理由を伝えますと。

小学生の頃は仲が良くても。

どんどん疎遠になっていき。

普段から愛称でしか読んでいなかったため。

もはや苗字しか思い出せず。

妹のなっちゃんと混同しないように。

冬矢は思い出の中の彼女を。

あの頃の呼び名である“お姉ちゃん”としか。

思い出すことができませんでした。

今作のテーマは『愛称』つまりはニックネームであり。

昔自分がなんと呼ばれていたのか。

あるいは親しい人をなんと呼んでいたかが。

コンセプトになります。

今作全体の後書きにつきましては。

本日1/1の22:00を目安に活動報告にて投稿しようと思います。

読後前提かつ長くなっておりますが。

お目通しいただければ幸いです。

それでは最後に改めて。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

読者の皆様へ。

今年もどうかよろしくお願いします。

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