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冬休みの通学路・第八話 遅刻確定の登校

コンビニで買ったミルクティーを飲みながら。

俺は家に帰っているのだが……。

そう言えばあの人も。

今俺が飲んでいる種類のミルクティーが好きだったけど。

これは単なる偶然だ。

偶然だ。

お雑煮を食べ終えて。


手袋とマフラーをして。


これまでお姉ちゃんと一緒に登校する時と。


同じ感覚で僕は玄関を出た。


ただ、一番の違いは。


コートを着たお姉ちゃんが。


隣の家の前で待っているんじゃなくて。


僕と一緒に出発してくれること。


「普通に登校してたら遅刻確定だね」


家を出たのはもう朝の九時を過ぎていて。


そのままお隣のお姉ちゃんの家まで。


真っ直ぐ家に帰るーー。


なんてわけはなく。


「ねえねえ久しぶりに一緒に通学路歩いてみない」


お姉ちゃんのアイディアで僕は。


冬休みで学校があるわけでもないのに。


一年生から五年生の頃まで。


ずっと一緒にお姉ちゃんと歩いた。


あのコンビニのある交差点まで。


あの通学路を。


ゆったりとたどっていった。


お姉ちゃんがらみで。


僕の予想は外れてばかりだけど。


今度だけは。


確実にわかる。


ここをお姉ちゃんと一緒に歩くのは。


本当にこれが最後だって。


そうして、コンビニが向かい側にあるあの交差点に。


小学校と中学校で行き先が違うから。


途中で分かれたあの場所に。


僕達はたどりついた。


「なんでかな。去年まで当たり前だったのに、今はすごく懐かしい感じがする」


「お姉ちゃん……」


冷たい風が吹いていて。


近くで流れている川も。


表面がうっすら凍っているのに。


お姉ちゃんの顔の涙は。


凍っていなかった。


僕が見つめているのに気付いたからかな。


お姉ちゃんは少しの間後ろを向いて。


振り返った時には。


もうお姉ちゃんの顔には涙はなかった。


「ごめん、ごめん。変なところ見せちゃって」


「ううん、そんなことないよ」


「……ありがとう。それじゃ帰ろうか」


お姉ちゃんはなにごともなかったように。


僕の手をつかんで。


ここまで来た道を後もどりして。


帰り道に……。


そういえば僕は。


お姉ちゃんと一緒にこの道を歩いて帰るのは。


初めてだ。


ずっと一緒に同じ道を歩いていたと思っていたのに……。


なんだかお姉ちゃんに失礼な気がしてきて。


自分でもよくわからなかったけど。


お姉ちゃんの手をぎゅっと僕は強く握り返した。


「どうしたの、冬ちゃん」


「よくわかんない」


「なにそれ。でも、ありがとう冬ちゃん」


一瞬お姉ちゃんがハッとして驚いたのを。


僕は見逃さなかった。


でも、お姉ちゃんはすぐに。


あの頃の。


朝一緒に僕と登校していた時の。


落ち着いた笑顔にもどっちゃって。


お姉ちゃんの手は。


強く握っていた僕の手の中から。


スルリと上に抜け出していった。


それからは家に着くまで。


おたがい一言も喋らずに。


お姉ちゃんの家まで歩いた。


もうすぐお別れだ。


「冬ちゃん、今日はわがまま聞いてくれてありがとう」


「これくらいなんてことないよ」


「最後にもう一回いい。明けましておめでとう、今年もよろしくね」


「うん、よろしく」


僕はお姉ちゃんの家の前で。


お姉ちゃんがきちんと家に入るまで。


見届けると。


しばらく道の真ん中で立ち止まっていた。


この気持ちがなんなのか。


まだ僕には分からないから。


ゲームのバグみたいに。


僕の頭の中がぐちゃぐちゃだった。


よく分からないから。


考えてもムダなのに。


でも、色々と考えていないと。


僕はおかしくなりそうだった。


お年玉とか。


ゲームのボスの倒し方とか。


宿題とか。


僕の頭の中からお姉ちゃんを追い出さないと。


カゼをひくまで。


ずっとここに立ち止まっていそうで。


僕は目の周りが熱くなりだすと。


すぐに走って自分の家まで帰った。


「「おかえりなさい」」


玄関を開けると。


お父さんとお母さんの声が聞こえてきたけど。


それもどうでもよくなっていて。


二人に返事もせずに。


自分の部屋に入ると。


すぐにドアを閉めて。


僕は思いっきり泣いた。


「っあああああ。っうああああーー」


僕もお姉ちゃんと同じで。


涙は凍っていない。


理由は違うんだろうけど。


新しい年が始まってすぐに。


どうしようもないことに。


どうしようもなくて。


どうにかなりそうだったから。


泣くしかなかった。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

前回の後書きで触れた。

来人と冬矢との関係は。

バイト先の先輩後輩の間柄になります。

彼らは都会である編鮎市あみあゆしにある同じ大学に通っていて。

冬矢が一年生の頃に始めたコンビニバイトの店舗に。

来人は先輩として働いていました。

そして、来人自身が鮒底市出身だったため。

冬矢は知り合いがいるという話題から。

仲良くなり。

来人が就活を始めた際には。

わずかながら彼に。

地元について思いを振り返らせる。

きっかけを与えた人物となります。

なお、今作の時系列としては。

青の欠片を巡って(以下略)のエピローグから。

一年後となっております。

それでは次回最終話の更新は本日1/1の18:00になります。

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