冬休みの通学路・第六話 次の年からは……
結局俺はあの人に何もできないままだと。
当時は思っていたけど。
今こうしてデカくなってみて。
あの頃を振り返ってみたら。
まだ小学生の子供だったとしても。
あの人の話を素直に聞いてあげる存在が。
どれだけあの人にとって。
ありがたかったか。
……。
そう思うとこのまま部屋にいるのも。
感傷に浸っているみたいで。
俺らしくないし。
外にでも出るか。
とりあえず、点けっぱなしじゃまずいし。
ゲーム機の電源オフにしとくか。
一年前のあの時と同じ。
それも時間帯も同じくらいに。
お姉ちゃんが僕の家にやって来た。
「ごめんください」
なんで。
どうして。
お姉ちゃんが家に来る理由が。
僕には分からなかった。
パジャマ姿で。
僕は玄関まで行ってみると。
確かにお姉ちゃんの姿があったけど。
去年とはまた違うところもあった。
今年のお姉ちゃんは隣のおじさん達と。
なんならなっちゃんとも一緒で。
僕のお父さんもお母さんも。
お姉ちゃんを心配する様子はなくて。
優しく迎え入れているところだった。
「それではこの子をよろしくお願いします」
「はい、分かりました」
そう言い残して。
隣のおじさん達はなっちゃんを連れて。
どこかに行ってしまった。
「こんばんは、おじさん、おばさん、冬ちゃん」
挨拶をするお姉ちゃんは。
玄関で暖かそうなコートを着ていて。
元気そうで嬉しそうで。
僕はびっくりした。
親とケンカをしたわけでもないし。
なにか嫌なことがあって。
僕の家に逃げ込んだ感じでもないし。
なんでなんだろう。
不思議がっていると。
お姉ちゃんから僕に呼びかけてきた。
「後で冬ちゃんの部屋に来てもいい」
「うん、いいよ」
返事はこれしかない。
僕は部屋にもどって。
お姉ちゃんが来るのを待った。
しばらくお父さんとお母さんとなにか話しているみたいだったし。
部屋に来るのは話し終えてからだろう。
ゲームしながら待つのは。
ちょっと失礼な気もしたから。
勉強机の椅子に座って。
冬休みの宿題をしながら。
時間を潰していた。
十時、十一時と過ぎていって。
もう少しで除夜の鐘も鳴るな。
なんて思っていたら。
僕の部屋のドアがノックされた。
お姉ちゃんだ。
「ねえ、部屋に入ってもいいかな」
「うん、いいよ」
部屋に入るオッケーを出すと。
お姉ちゃんが僕の目の前に現れた。
流石にコートは脱いでいるけど。
去年来た時みたいな部屋着じゃなくて。
ちゃんとした外行きの服だ。
「ごめんね。突然」
「いいよ、これくらい」
去年とは違って。
元気そうで。
声も明るくて。
まるで朝一緒に通学していた頃のお姉ちゃんみたいだった。
「久しぶりだね、冬ちゃん」
「うん。もう一年くらい経つよね」
「そうだね。あっ、なっちゃんから保健室登校のこと聞いたんだよね」
「夏休みにたまたま会ってね」
「じゃあ、気を遣わずに話せそうだね」
お姉ちゃんはそう言うと。
ドアは開けっぱなしにして。
部屋の入り口で。
立ったまま話し始めた。
こっちも立ち上がらなきゃ。
なんて最初は思っていたけど。
ゆったりと話し始めようとするお姉ちゃんの姿に。
むしろ椅子に座って静かに聞いていた方が。
いいんじゃないかなと思って。
机の上に冬休みの宿題を広げっぱなしのまま。
僕はお姉ちゃんの顔を見守るみたいに。
じっと見つめて話に耳を傾けた。
きっとこれから教えてくれるだろう。
僕が知らない。
お姉ちゃんのことをしっかりと聞くために。
「あのね、私中学卒業したら鮒底市にあるお婆ちゃんの家から高校に通うの」
「えっ!?」
保健室登校していた頃のことかなと思っていたから。
お姉ちゃんから予想外の言葉が出て。
しばらく口が開きっぱなしだった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
二日分は以上になります。
前話の後書きを受けて。
過去作の登場人物が出てこない理由としましては。
今作は冬矢の回想で話が進むため。
過去作のキャラを登場させてしまうと。
どうしても。
誰かの思い出というよりも。
過去作の番外編になってしまう気がしたため。
本編には誰も登場させませんでした。
それでいて冬矢は過去作のある人物との。
つながりがあるのですが。
それは次の後書きで記します。
では、次の更新は明日元旦の1/1の17:00になります。
こちらでもご挨拶となりますが。
よいお年を。




