冬休みの通学路・第一話 あの頃の僕とお姉ちゃん
2025年も残すところあと少し。
内定をもらい就活を終え。
卒論も一段落した俺は。
年末に差しかかり。
大学も休みに入ったので。
実家に帰省していた。
そんな充電期間真っ最中に。
なんとなく。
勉強机の引き出しを開けてみたら。
十年ほど前に遊んでいた携帯ゲーム機を見つけたので。
何気なく電源を入れてみたところ。
普通に起動した。
あの頃と変わらないホーム画面。
懐かしさと一緒に。
季節的なもんなのか。
昔これで遊んでいた頃の。
仲が良かったあの人。
お隣に住んでいた“お姉ちゃん“のことまで。
思い出してきた。
隣に住んでいる中学二年生のお姉ちゃんが好きだ。
今年の4月から小学五年生にもなった僕にとって。
一人っ子の僕にとって。
本当のお姉ちゃんみたいだから。
「行ってきます」
寒いし手袋とマフラーをして。
家の玄関を開ければ……。
「おはよう、冬ちゃん」
僕の名前は冬矢だから。
冬ちゃん呼びだけど。
子供っぽいからやめてほしいな。
でも、朝学校に行くタイミングはいつも同じだし。
毎朝顔だって合わせるし。
きっといつか呼び方も変えてくれる。
「おはよう、お姉ちゃん」
お父さんやお母さんにするのと違って。
ちょっとだけドキっとする。
「もうすぐ、クリスマスだね、お姉ちゃん」
「そうだね。冬ちゃんはサンタさんに何をお願いした」
「もうお姉ちゃん。サンタさんなんていないよ、でも代わりにお父さんにゲームソフトをお願いしたよ」
「あら、去年までは信じていたのに」
「もう、僕はそこまで子供じゃないよ。ちなみにお姉ちゃんはクリスマスプレゼント何かお願いした?」
「うん、でも秘密」
「ええ、ズルい。ところでお姉ちゃん」
「なに、冬ちゃん」
「今年のクリスマスパーティーは僕ん家かな、姉ちゃん家かな」
毎年僕か姉ちゃんの家でクリスマスパーティーをしているけど。
去年が姉ちゃんの家だったから。
今年は僕の家かな。
僕はウキウキしていたけど。
なぜか姉ちゃんは困ったように笑っていた。
「ごめんね、お姉ちゃんいけないの。代わりになっちゃんと楽しんでね」
なっちゃんはお姉ちゃんの妹で。
僕より一個年下だ。
私立の小学校に通っているから。
お姉ちゃんのお父さん達が送り迎えしていて。
なっちゃんとはあんまり顔を合わせていない。
正直、お姉ちゃんにいてほしいなあ。
「ねえ、なんでお姉ちゃんは来れないの。毎年来ていたじゃん」
「その日クラスの人達のパーティーに誘われちゃったんだ」
「ちぇっーー。さみしいな」
二人一緒に歩いて十分ちょい。
小学校までの道と中学校への道は。
コンビニのある交差点で分かれている。
一年生から三年生の頃までは一緒だったのに。
僕が四年生になったら。
お姉ちゃんが中学生になっちゃったから。
途中までしか一緒じゃなくて。
残念だ。
僕は横断歩道を渡らずに。
そのまま右に曲がるだけだけど。
お姉ちゃんは真っ直ぐ行かないといけないから。
赤信号の今は止まらないといけない。
「気をつけてね冬ちゃん」
「うん、お姉ちゃんも」
いつもと変わらない。
帰りは一緒じゃないのが残念だけど。
朝だけでも一緒に歩けて満足だ。
ーーーー
クリスマスパーティーの場所は。
僕の家。
今年はお姉ちゃんがいなくて。
さみしいなあと思っていたら。
なっちゃんが僕のとなりに。
切り分けられたケーキを持ってやってきた。
「ねえ、冬矢はお姉ちゃん来なくてさみしいんじゃない」
「別に、そんなことないよ」
なっちゃんに呼び捨てにされるのはなんか嫌だ。
こういうのをなれなれしいって言うのかな。
あんまり会ったことないのに。
仲良しな感じでしゃべりかけてくるのは。
親が仲良いからって。
子供同士もみんな仲が良いってわけじゃないのになあ。
「姉ちゃん、今頃好きな人に告白できたかな」
そう言って。
いたずらっぽく笑うなっちゃんを見てから。
頭が真っ白になって。
プレゼントをもらっても。
なんでか心の底から喜べなかった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
今作元々は短編で予定していたものが。
思いの外長くなってしまい。
短期集中連載形式にしました。
全九話。
一日に三話掲載となります。
年末年始に読者の皆様の。
ささやかな楽しみになることを願っております。
次回の更新は告知通り本日12/30の17:30です。




