あれから8年
カンカンカンカン
「ん…?」
朝から何やら騒がしい。
トンカチで何かを打ち付けているような音が響いている。
「母さん、おはよう。」
ベッドから起き上がり、母の居るダイニングへ入る。
「おはよう!顔洗ってらっしゃい、歯磨いたらご飯食べて良いからね!」
俺が起きたのを確認すると、サッとパンとシチューをテーブルに置き、店へ続く扉に入ってしまった。
母の作るシチューは絶品で、俺は幸せな気持ちで洗面所に向かった。
少しして両親が戻ってきた。
今日の目覚ましになった音はもう聞こえない。
「何してたの?」
おかわりしたシチューとパンを食べながら少し汚れている父に聞いてみた。
「看板を付け直してたんだ!後で見てごらん!」
とても満足げに父は言った。
「恥ずかしいからやめてって言ったんだけどね…」
母はため息混じりに椅子に座った。
「ご馳走さまでした!」
早速看板を見に行くことにする。
「…これは…」
【勇者メータの生家】
まだ新しい木の板が、店名の前に増えていた。
「確かにちょっと恥ずかしいけど…父さんと母さんに迷惑掛けちゃうから、勇者として間違ったことは出来ないね(笑)」
笑いながらそう言うと、両親も楽しそうに笑っていた。
「そうだぞ!そもそも人として間違った事をしてはいけないけどな!」
「そうね、勇者とか関係無く、人道を外れた事はしてはダメ。」
新しい看板の前で、家族で新しい映像石を起動させた。
今日から、俺はお城に行かなければならない。
―城 謁見の間―
「良く来た、勇者、顔を上げよ。」
この人が王様…
「私の代で勇者が選ばれたこと、大変嬉しく思う。」
「…。」
何と言って良いか分からず、王様を見ながらただ軽くうなずく事しか出来なかったが、王様は特に気にしていないようだ。
「しかし、それは魔王復活を意味する。本来であれば、18になってから一人旅出来る権利を得るが…魔物が現れた場合、勇者は年齢に問わず旅をしてもらう事となる。」
水神父は18歳になってからと言っていたが、あくまでそれは一般的に旅に出られる年齢なだけで、俺の場合は適用されないらしい。
「そうですか…」
「…まだ若い君を、危険な旅に行かせてしまう事、心よりお詫びする。」
「…。」
「本日より、勇者には剣術、魔術、体術、医術等、必要な知識を得てもらう為に~」
こうして、俺はその日から毎日何かしらの知識を勉強し、何事もないまま無事に18歳になった。
―再び 謁見の間―
「無事にこの日を迎えられて私は大変嬉しく思う。」
10歳の頃に会って以来、二度目の謁見。
「臣下達から、勇者の勤勉ぶりは聞いている。」
死にたくはないので、自分なりに勉強はとても頑張った。
「3日ほど前から、領地で魔物が目撃されている事が確認出来た。18になって幾月…時が来たようだ。旅に出る前に、ご両親に挨拶してからが良かろう。」
手紙ではやり取りしていたが、8年ぶりに父と母に会える!
「はっはっは!嬉しそうで何より!」
顔に出ていたか。
「勇者の出城を許可する!直ちに勇者を城下のご実家に送り届けよ!」
王様の言葉を聞き、臣下達はスムーズに動き、俺は再び城の外へと足を運んだ。
早く、両親に会いたい。




