俺、産まれる
剣も魔法も魔物も獣人もエルフもドワーフも…何もかもが存在するこの世界で、俺は産声を上げた。
「元気な男の子ですよ!」
産婆が母に告げる。
産まれたばかりで目も開かない俺を、母は産後の震える手でそっと抱いた。
「ああ…良かった…良かった…無事に産まれてくれて…ありがとう…」
そう言って母は、俺の額に優しくキスをしてくれた。
産婆が部屋の外で祈りを捧げていた父に声を掛けた。
「旦那様、もう入っていただいて大丈夫ですよ。」
駆け出すように椅子から立ち上がり、母と俺の元へ泣きそうになりながら走り寄る父。
「エミーナ、ありがとう!ありがとう…!」
父は母の横へ跪くと、堪えきれず涙を流しながら感謝を述べ、そして俺へを視線を向けた。
「ああ…この子が…俺達の子…」
愛おしそうに頭を優しく撫でてくれたところで、俺は泣き止み、そして眠ってしまった。
これが、俺が生後数時間の出来事。
何故こんな事を知っているか…
それは、俺の誕生日を迎える度に両親が映像石の映像と共にこのエピソードを話してくれるからだ。
今年も例外なく、楽しそうに、嬉しそうに、恥ずかしそうに、愛おしそうに、話してくれた。
そんな俺は、街の武器屋を営む父ターカイドと母エミーナに惜しみ無い愛と武器を与えられ、スクスクと成長。
10歳になり、能力値を左右する紋様刻印の儀に参加する為、両親と共に神殿へ訪れた。
この世界では、10歳になった子供は自分の生活する街や村、王国や帝国の神殿や協会で必ずこの儀式を行わなければならない。
王候貴族、商人、平民関係無く、全種族が行うが、魔物や魔獣を始め、動植物はこれに該当しない。
俺は人族なので、儀式に参加する義務がある。
「父さん、儀式ってどんな事するの?」
儀式がある事は知っていたが、そこで何が行われるのかまでは知らなかった。
「んー…神様の像にお祈りして、何か、手の甲が熱くなって、紋様出た!みたいな。」
みたいな??え??
「大体そんな感じね。」
母さん??
「…そっか…」
何か、取り合えずお祈りしたら手の甲が熱くなって紋様が出るんだな、って事は分かった。
「さあ、着いたぞ!」
両親に手を引かれ、街のシンボルでもある白亜の神殿に着いた。
扉の入口には複数のシスターが待機しており、訪れた子供達を案内している。
「ここから先は俺達は入れない。近くのカフェで母さんとのんびりデートして待っているから、なるべく最後の方にしてもらってゆっくり出ておいで。」
父は母が大好きである。
「早めに家に戻って無事に儀式を終えたお祝いをしたいから、お父さんの言った事は気にせず早めに行ってサッと済ませてきちゃいなさい。」
母はどこまでも母である。
「行ってきます!」
母の言いつけ通り、俺は足早に扉の前へと向かった。
扉に入る前にチラッと見えた両親が腕を組んで幸せそうに歩いている姿が目に入る。
…母も、父が大好きである。




