優先順位を間違えてはいけない
現場で判断するしかない状況……。
その現場を取り仕切るのは、リアスの父親、レイノルズ侯爵だった。
そのレイノルズ侯爵は戦争の英雄であり、騎士であり、団長だった。騎士道では弱者をいたわる。それは相手が他国の第二皇女であっても変わらない。しかもその第二皇女はカミュ第二王子の婚約者だった時代もあるのだ。無下になど出来なかった。
「父上は人質交換に応じた。そして父上は第二皇女と交換で、反政府組織に捕らえられてしまった」
「そんな……もちろん、国王陛下はレイノルズ侯爵を取り戻すために、動いてくれるのよね?」
そこでリアスは深呼吸をして、私を見た。
その碧眼には深い深い苦悩を感じる。
「国王陛下は既に帝国の政府や皇族と連絡を取り合い、水面下で反政府組織を挟み撃ちにできる状況を作り上げていた。一気に叩けば父上を救える。ちょっとした戦闘になるが、それも帝国の政府が許可しているから、国同士の戦争にはならない」
「そうなのね! ではレイノルズ侯爵は助かる……!」
私は安堵するが、リアスの表情は暗い。
「国王陛下から条件があると言われたんだ」
「条件……?」
「父上を救いたければ……僕に婚約を解消しろと。アドリアナとの婚約を破棄すれば、すぐにでも帝国政府と連絡をとり、軍を動かすと」
これには「えっ……」と固まる。
(なぜここにリアスの婚約の話が……)
そう思ったが理解する。
(国王陛下はカミュ第二王子に泣きつかれたんだわ! 彼自身は決闘での誓約書があり、もう何もできないから……!)
どうしても私を手に入れたいカミュ第二王子は、まさに今回の事態を千載一遇のチャンスと考えた。そして自身の父親である国王陛下に、この条件をリアスに話すように頼み込んだに違いない。
(それだけではないわね。乙女ゲームの強制補正も、間違いなく作用しているはずよ)
シナリオの正しい流れに。ヒロインの幸せのために。この世界が全力で舵を切った。
(反政府組織に、レイノルズ侯爵がどんな扱いを受けるか分からないわ。一刻も早く、決断をした方がいい)
迷ってなんかいられなかった。
「リアス。その条件を飲みましょう。一刻も早く、お父様を救い出さないと」
「そんな……!」
「大丈夫。なんとかなるわ」
リアスの泣きそうな顔に、胸が詰まる。
国王陛下、とういうよりカミュ第二王子……ううん、この乙女ゲームの世界は、なんて非道な選択をリアスに迫るのだろう。
(父親を救うか、婚約者を選ぶか、だなんて)
許せないと思った。私は悪役令嬢ではあるが、その前に一人の人間なのだ。愛する人を守りたいと思うのは、当然の心の動き。
(絶対にこの乙女ゲームの世界にリベンジしてやるわ。でも、今ではない。今はレイノルズ侯爵を救い出す必要がある)
「リアス。優先順位を間違えてはいけないわ。今の最優先はレイノルズ侯爵よ。私との婚約のことは後で考えればいいの」
「でも……」と渋るリアスからレイノルズ侯爵夫人に目を向ける。
「国王陛下に伝えてください。条件を飲むと」
私とレイノルズ侯爵夫人の視線が交差する。
愛する人を守りたい気持ち。それは同じだ。
「ありがとうございます、サンフォード公爵令嬢」
涙ぐんだレイノルズ侯爵夫人は、すぐにヘッドバトラーを呼ぶ。その間に私はリアスに伝える。
「リアス、秋休みが近いのよ。秋休みは、役所も全て機能がストップするわ。教会なんかも同じ。葬儀は受けるけど、それ以外は秋休みが終わってからよ」
「それはつまり……」
「条件を飲むと伝えた後、話し合いの場は間違いなく設けられるわ。そこでこう伝えるの」
私は頭の中でいろいろを整理しながら、言葉にする。
「あの決闘で得たカミュ第二王子の誓約書。それを破棄するし、秋休みの後に婚約解消を正式に発表すると。どうせ私と婚約するにしても、秋休みには何も動かないと、カミュ第二王子殿下も分かるから、そこは譲歩するはずよ」
「アドリアナは、カミュ第二王子殿下と婚約するの!?」
「するわけないわ! 大丈夫よ、私を信じて」
もうリアスは今にも泣きそうな顔になっている。
それを落ち着かせるために言葉を紡ぐ。
「カミュ第二王子殿下が決闘をしていたなんて。誓約書があるなんて、国王陛下は知らない可能性もある。そこでちょっとした混乱も起きるだろうし、この方法で即婚約解消は回避出来るわ」
「分かったよ、アドリアナ。僕は君を信じる」
「ありがとう、リアス」
そう答えながらも、まだ全ての算段が立った訳ではなかった。どうやってカミュ第二王子との婚約を回避すればいいのか。
(大丈夫。きっと何とか出来るわ)
お読みいただき、ありがとうございます!
乙女ゲームの世界ゆえの強制される設定と抑止の力にどう立ち向かうのか!?
続きはまた明日!
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