悪役令嬢の末路
アドリアナのヒロインへの嫌がらせの数々が明らかになれば、その後は悪役令嬢あるあるのあのセリフが待っている。そう、それはこれ!
「なんて性悪なんだ! 王家にとても相応しいとは思えない。君との婚約は破棄だ!」
婚約破棄からの、乙女ゲームであるあるの断罪。多くはここで死刑になるが、『碧色のセレナーデ』は一味違うオリジナル展開だ。
「それに君がマーガレットにした嫌がらせは度を超えている。しかも僕の婚約者という立場で、数々の悪行を働いたんだ。それは王族である僕への侮辱だと思う。アドリアナ・セレネ・サンフォード公爵令嬢。君が野放しではマーガレットも僕も気が休まらない。王族への侮辱罪を問い、クロノスの塔への幽閉とする」
婚約破棄と断罪で、アドリアナはクロノスの塔へ幽閉される。悪役令嬢でお決まりの死刑はない。だが幽閉なんて実質は死と同等。それにヒロインと攻略対象のハッピーエンドの最後に一文、こう添えられているのだ。『クロノス塔へ幽閉された悪役令嬢は、後に失意のうちに命を絶つ』と。
第二王子をヒロインが攻略対象として選ぶと、このエンディングだが、宰相の嫡男、幼なじみの公爵家の嫡男を選んでも、アドリアナの行動と末路はたいして変わらない。
ヒロインが宰相の嫡男……伯爵家の令息、もしくは幼なじみの公爵家の嫡男を選ぼうが、アドリアナは「男爵令嬢ごときが」とプライドの高さで恋路を邪魔する。ようは「血統書付きのサラブレットに、雑種が手を出すなんて生意気」ということ。そしてそれをやると、どのみち第二王子からは婚約破棄される。
もしその時、ヒロインが宰相の嫡男を攻略対象にしていた場合は「その差別主義を悔い改めた方がいい」と宰相から指摘され、アドリアナは修道院送りとなる。その修道院でもプライドの高さが仇となり、アドリアナは半年もたたず、謎の死を遂げるのだ。
ちなみにこの世界、前世と同様で、何か問題がある貴族令嬢は修道院に送られるのが常套手段となっている。修道院としては冗談ではない……はずだが、そうでもない。受け入れるとたんまり持参金が手に入るのだ。ゆえにそこは持ちつ持たれつの関係が成立していた。持参金目当てではない、本当の善意の修道院も当然あるものの。お金で動く修道院もあったわけだ。
一方で幼なじみの公爵家の嫡男をヒロインが選んでいた場合は「同じ公爵家として、見過ごすわけにはいかない。その狭すぎる視野を改善するべきだと思う」とアドリアナの両親は、幼なじみの公爵令息の父親から進言されてしまう。そこで表向きは留学だが、実質は国外追放の憂き目に遭う。
国外追放と言いつつ、留学だったら羽を伸ばせるかと思ったら、そんなことはない。金銭援助が一銭もないのだ。ゆえに留学先の学校は授業料を払えず、早々に退学し、労働に従事するしかなくなる。でもプライドだけ高い貴族令嬢がまともに働けるかというと……。二度と祖国の土を踏むことなく、家族から見捨てられ、異国地の暴漢に襲われ死亡している。
終身刑・修道院送り・国外追放と、攻略対象とヒロインの悪役令嬢への断罪は、ソフトに思える。攻略対象とヒロインが、悪役令嬢に死刑を突き付けるのは「やりすぎ」というプレイヤーの声を踏まえ、彼らが直接手を下すことはなくなったわけだ。だがヒロインが誰を攻略対象に選ぼうとも、悪役令嬢である限り、実質は悲惨なバッドエンドしか待っていないのだ。そこはきっちりざまぁを望む一部プレイヤーがいることから、ゲームの運営により、さりげない後日談で悪役令嬢は必ず抹殺される。
宰相の嫡男や幼なじみの公爵家の嫡男をヒロインが攻略した時、アドリアナが邪魔をするのはまさにお門違いに思える。でも婚約者である第二王子の時、アドリアナが邪魔をしたくなる気持ちは分からないでもない。ゆえに悪役令嬢必ず死亡フラグはちょっと可哀そう……などと同情している場合ではなかった。
私はアドリアナとして、現在既に美少女である。これでマナー、礼儀作法、ダンス、刺繍、音楽、絵画などの教養を一通り身に着けたら、第二王子の婚約者に選ばれてしまう。そうなったら悪役令嬢街道まっしぐらだ。そうはならないために行動するしかない。
ということでメイドを脅し……いえ、人材を上手く活用し、届けてもらった手紙の返信が到着した。それは両親が目を通すことになったが、既に時遅しで、二人はどうにもできない。両親はこう嘆くことになる。
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はたして私はどんな策を講じていたのか!?
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『悪役令嬢は死ぬことにした』
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