デビュタント
美青年リアスがエントランスホールに登場した時。
私と両親は声を揃えて「ほう」とため息をもらすことになった。
だってリアスは……国宝級のカッコよさだったのだ。
いつもおろしている前髪は七三分けで、片方を後ろに流し、残りは自然な状態でおろしている。この髪型の変化だけでも、普段とは違う雰囲気で、ドキドキしてしまう。
さらに眉を綺麗に整えることで、キリッと感が増しているのだけど、表情は甘い。透明感のある美しい碧眼には甘やかな煌めきがあり、ちょっと首を傾げたような仕草は、もう前世で大人気のアイドルみたいだ。
(しかも着ているテールコートのデザインが、垢抜けているわ!)
ミッドナイトブルーはほぼ黒に見える色合いだが、光沢もあり、光の当たり具合によっては濃紺にも見える。
デビュタントで男性は、一律黒のテールコートを着用するのだ。ゆえにこの絶妙な色合いは、まさにオシャレ上級者に思える。
さらにノータックのパンツは、腰回りがすっきり見え、脚長効果は抜群。ただでさえ長く見える脚が、さらにましましで長く見えていた。そしてベストとタイは光沢のあるシルバーで、これまた洗練されている。
全体的に、細マッチョの引き締まった体型を生かした完璧な装いだった。
「レイノルズ侯爵令息、よくいらしてくれました。今日は娘を頼みましたよ」
「お出迎え、ありがとうございます。ご令嬢のデビュタントでのエスコート役。全力で務めさせていただきます」
美青年リアスは父親への挨拶を終えると、淡いピンクのドレスを着た母親にも挨拶を行い、最後に私と向き合った。
「サンフォード公爵令嬢……」
そこで美青年リアスは、透明感のある美しい碧眼をうるうるさせる。
(えええ、どうしたの、リアス!?)
「あまりの美しさに感動して……」
「!? それを言うならレイノルズ侯爵令息、あなたの方がとても素敵過ぎて言葉にならないわ!」
「今、ここに自分がいるのが、夢のようで……」
(えええ、リアス、あなた三年前の泣き虫モブ令息に退行していない!?)
ビックリ仰天で両親をチラリと見ると、なぜか二人とも美青年リアスと同じで、瞳がうるうるになっている!
(もう、みんなどうしてしまったのかしら!? これからデビュタントなんだから、泣いている場合じゃないわよ!)
そう思いつつ、みんながうるうるしていると、私までうるうるしかけたが……。
「アドリアナ! なんて美しく成長したんじゃ!」
「お祖父様!」
「父上!」「お義父様!」
まさかの黒のテールコートを着た祖父が登場し、ビックリ!
「アドリアナのデビュタント、冥途の土産に見ておきたいと思ってな」
「まあ、お義父様、ここに来るぐらいの元気がある方が、冥途の土産だなんて!」
「そうですよ、父上。しかもテールコートを着ているということ、デビュタントに同行するつもりですね!」
「まあ、そういうことじゃ。一席、空いているじゃろう?」
そう言って祖父がウィンクする。
「初めまして、サンウエスト侯爵。僕はリアス・テゼ・レイノルズ、レイノルズ侯爵の次男で、本日サンフォード公爵令嬢をエスコートさせていただきます」
(! リアスったらお祖父様の称号も知っていたのね……!)
祖父は公爵位以外にも、侯爵位を所持していた。隠居にあたり、公爵位は父親に譲り、自身は侯爵位を名乗るようになった。そしてあの森の中のポツンと一軒家で暮らしていた。だから今、祖父を称号で呼ぶなら、サンウエスト侯爵となる。
その祖父は美青年リアスに近づき、上から下までしっかり見た後。
「おお、おぬしが!」
そこでチラッと祖父が私を見るので、背中に汗が噴き出そうになる。というのも祖父には美青年リアスのことを手紙で話していたのだ。毎朝、武術と乗馬訓練を一緒にする令息ができたと。
勿論、それを話したのは、私の武術の師が祖父だったからで。両親は祖父がリアスのことを知っていたらビックリだと思う。
「レイノルズ侯爵……戦争の英雄の息子じゃな」
「ええ、そうです。僕の尊敬する父親です」
「そうか、そうか。そんな有名人の息子にエスコート役を頼むとは。孫もなかなかやりおる」
「とんでもございません。僕こそサンフォード公爵令嬢をエスコートできて、大変光栄です」
ずばずば話す祖父に臆することなく話す美青年リアスは、実に頼もしい。
(とてもモブ令息には見えず、攻略対象にしか見えないわ!)
「みんな、そろそろ出発した方がいいのでは?」
父親が声をかける。デビュタントへ行くのは私、美青年リアス、母親、そして祖父だ!
「よし、出発じゃ!」
お読みいただきありがとうございます!
まさかのお祖父様のサプライズ登場♪
本日も2話更新頑張ります!























































