大丈夫ではない事態!?
「大丈夫よ」
そう美少年リアスに私は言ってしまった。
だが「全然大丈夫ではない!」事態になる。
「お嬢様、お手紙です」
池にドボン事件の翌日。
侍女が届けてくれた手紙は三通だ。
三つの封筒、差出人を確認すると……。
ジャスパー・レッドシーク、セーブル・ブラックウッド、アンバー・ゴールドウィン……って、あのモブ令息三人組ではないですか!
何かと思い、確認すると、三人とも同じ時間に公爵邸へ訪問したいと書かれている。
(これはどういうことかしら!? 何かの罠……?)
かなり不安になりつつも、公爵邸に来たいと言っているのだ。何か悪さをしようにも、さすがに私の本拠地では何もできないだろう。そこで会うことにしたが、とても不思議に感じる。三人とも同じ日時を指定するなら、手紙は一通でいいのに、そうしなかったことが謎過ぎた。
(もしや私から断られる可能性を考え、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるで、三通送って来たのかしら!?)
とりあえず三人には個別で手紙をくれたが、全員が同じ日時を希望しているから、三人まとまってくるようにと返事をした。なおかつこの件を美少年リアスに話すと「サンフォード公爵令嬢に何かあると困るから、僕も同席する!」となった。
◇
美少年リアスは勿論、ジャスパー、セーブル、アンバーのことを、両親も認識している。よって彼らが公爵邸に来ると話しても「きっとまだ謝罪が足りないと思い、お詫びを言いに来るのだろう」とあっさり快諾。応接室にはいつもの侍女やヒューズ卿も同席するので、子供たちだけで会うことも認められていた。
かくして四人が訪問する日となる。
四人が来る時間はティータイムなので、そこにあわせ昼食後、着替えをすることになった。
セレストブルーのドレスを着て、髪はサイドポニーテール、夏を楽しめるマンゴーやパイナップル、ウォーターメロンを使ったスイーツを用意し、四人の到着を待つことに。
「お嬢様、レイノルズ侯爵令息がいらっしゃいました」
「レッドシーク伯爵令息がいらっしゃいました」
「ブラックウッド侯爵令息がいらっしゃいました」
「ゴールドウィン子爵令息がいらっしゃいました」
次々と報告を受けた私は「!?」と驚く。
美少年リアスが単独で来るのは理解できる。
だが残りの三人には、待ち合わせて一台の馬車で来るように!と伝えたのに!
(いつも三人で行動しているのに、なぜ今日に限ってバラバラなのかしら!?)
とはいえ、別々の馬車で来ることはマナー違反でもなんでもないのだから、エントランスホールでお出迎えをすると……。
「サンフォード公爵令嬢、お会いできて嬉しいです! 僕の大切な命の恩人ですから! 今日はお土産に、父上から譲り受けたこちらの宝剣を贈ります」
美少年リアスとは今朝もいつもの公園で会い、剣の手合わせをしている。それなのにリアスが、久しぶり感と丁寧な言葉で話していることに、不思議な気持ちになってしまう。
(一体どうしたのかしら!? あ、でも、そうね。ここは公爵邸で、リアスと私は、あの池ドボン事件で知り合ったことになっているから……)
しかもわざわざ空色のフロックコートを着て正装しているのだ!
(美少年リアスの正装、眼福、眼福)
「サンフォード公爵令嬢、受け取ってください」
「あ、ありがとうございます」
流れで受け取ることになった宝剣、よくよく見て腰が抜けそうになる。
(鞘や柄頭に埋め込められている宝石がとんでもないことになっているんですけど!? これは本当に文字通り、宝の剣だわ……!)
とんでもないお土産をもらい、驚いていると、ルビー色のこちらもフロックコート姿のジャスパーが声をあげる。
「サンフォード公爵令嬢、先日は本当にご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした!」
体を二つに折る勢いで頭を下げたジャスパーは自身の従者に目配せをする。
「ご覧になることはないと思いますが、これ、法律全書の初版本です。いざとなったらオークションで高値で売れると思います」
「!? とてつもなく貴重なものだと思うのですが! まさかお父君の愛蔵書を勝手に持ち出したわけではないですよね!?」
「ち、違います! 父上から贈られたものです。でも俺は法律に興味がなくて……。一度も読んだことがなくて、部屋の片隅で埃を被っていたから……。サンフォード公爵令嬢ならきっと有効活用してくれると思い……」
これには「なるほど」と思い、ならば「受け取っていいかしら!?」と一瞬思った。でも「違うわ!」と思い、ジャスパーを説得することになる。
「食わず嫌いかもしれないわ。一度も読まないのはもったいないと思うの。まずは読んでみて。分からないことが出てきたら、お父君に尋ねてみて。そうやって読んでみると、何かが変わると思います。その上で、やっぱり自分に不要と感じたら、私が受け取るので」
私の言葉を聞いたジャスパーは尋ねる。
「それは俺に法律を勉強した方がいい……ということですか?」
「違うわ」
「?」
キョトンとするジャスパーに私はこう伝える。
「お父君の気持ちを学んで欲しいのです」
「父上の気持ち……?」
「初版本で貴重だから、その本を贈っただけではないと思うんです。実際に読むことで、なぜ法律全書をあなたに贈ったのか。そのお父君の気持ちを感じられると思います」
ハッとした表情のジャスパーはチョコレート色の瞳をキラキラさせる。
「言わんとすること、理解しました。俺、読んでみます、師匠!」
「ええ、そうしてちょ……え、師匠?」
「サンフォード公爵令嬢!」
ジャスパーが変なことを言ったと思ったが、今度はワイルドヘアのセーブルが声をあげるので「は、はいっ!」と応じることになる。
お読みいただき、ありがとうございます!
ジャスパーに続き、セーブルは……
もう1話更新します~























































