父がやっと死んだ。やっと、やっと死んだ。
父が死んだ。
病院から電話がきた。早く死んでくれと思っていたが、本当に死んだことが分かると少し動揺した。
葬式は身内だけで行い、私が喪主を務めた。葬儀の手順はシステムが出来上がっていて、葬儀会社の言う通りに手足をバタバタと動かしていたら滞りなく終わった。
やっと、父親が死んだ。
葬儀が終わった次の日、部屋のソファで実感が湧いた。
私の中に蠢いていた、言葉と声と景色は消えなかった。
私の顔に飛んできた平手打ち。フローリングで正座をしていた。流れているテレビ画面に視線をやった瞬間だった。趣味の悪いgif映像のような数秒間が、15年経っても頭にへばりついている。
それでも、身体はしなやかに伸び始めた。
指の関節を一つずつ曲げていき、手首を回す。
仰向けに寝転び、背中をうんと伸ばしてブリッジをする。
「やっと死んだか、くそジジイ」
この番号は現在使われておりません…自動音声を聞きながら、天井に中指を立てた。
それから手を振った。