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輝く太陽に祈りをこめて  作者: Sen
一等星になりたい
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心が振り回されている

 委員長に美鈴の事を調べてもらうよう頼んだ次の日、何故か美鈴から感じた後ろ暗い雰囲気は消え去っていて、キラキラと眩しいくらいに明るい雰囲気を纏っていた。


 いや、すごくいい事なんだけどさ。この急変ぶりに頭がついていってない。それに加えて私の頭を悩ますもう一つの要素があった。


「ねぇ彼方、次移動教室だから一緒に行こ」


「購買行くの? 私も一緒に行っていい?」


「テニス部ってマネージャー足りてる? インターハイ頑張ってるから私も応援したいの」


 美鈴がめっちゃ私に話しかけてくる。いつも移動教室は一緒に行くけど普段誘うのは私だし、美鈴は弁当だから購買に用事はないはずなのについて来たし、テニス部のマネージャーになりたいなんて今までそんな素振りなかった。


 美鈴を苦しめていた原因が私にあると思っていたから、こんな変化が起こるなんて予想だにしなかった。すごくいい傾向なはずなのに逆に心配になってくる。


 それから数日して、人手は多い方がいいからと美鈴はテニス部のマネージャーになった。それと同時に委員長の調査が終わり、美鈴がいじめられてるという可能性も無くなった。


 状況は完全にハッピーなのだが、あの美鈴の苦しそうな顔の理由がわからないままというのがスッキリしない。喉に魚の小骨が引っかかったみたいな感触だ。


「で、また私に相談ってことね」


 委員長はなんとも言えない顔でパンケーキを切り分けている。委員長からしても、私からあんな相談を受けた翌日にあんな元気な美鈴を見たものだから混乱しているのだろう。


「人生でこんなに混乱したのは初めてだよ。意味不明ってこんなに怖いものなんだな」

「いい傾向ではあるんだけどね。マネージャーの仕事もテキパキやってくれてるし」


 頭のいい美鈴はすぐにマネージャー業に順応、テニス部に見事に馴染んでいる。美鈴が支えてくれるおかげで適度に体を休めることができて、練習のクオリティも上がっている気がする。


「とっかかりがないから迷宮入りの予感がするね」

「正直、あの顔の理由を暴いてどうなんだって気持ちはあるんだよ。だけどあんなに急に態度が変わったって考えると、逆にあの時の状態に戻る可能性もあって……ああ! 私はどうするのが正解なんだ!」


 美鈴の秘密を暴こうにもどうすればいいのか分からない、このまま放置でもいい気がするけど何かが起こる懸念もある。この状況に頭では色々な案が出てくるけど、どれも正解とは思えない。まさに会議は踊る、されど進まずだ。


「いやー、振り回されてるねー」


 悶々と悩む私を見て落ち着いたのか、委員長は呑気に切り分けたパンケーキを口に運んだ。


「ん、甘い」

「委員長もさぁ、真面目に考えてくれよ」


 机に顎をくっつけて下から目線で美味しそうにパンケーキを食べる委員長を見上げる。おそらく今の私は人生で一番覇気のない顔をしているだろう。委員長はパンケーキを飲み込んで、一緒に頼んだカフェオレをかき混ぜ始める。


「彼方は考えすぎなのよ。どうしようもないことはどうしようもない。彼方はとにかく県大会に集中! 美鈴が彼方を応援してるっていうのは事実だろうしさ」

「……確かにそれが一番かもなぁ」


 完璧に納得はできないけど、それ以上の意見もないので委員長の言う通りにすることにしよう。


「彼方がそうやって悩んでるとさ、もしかしたら美鈴から相談受けちゃうかも。彼方が変だーって」

「なんだその面白い状況。まぁ美鈴は周りをよく見てるし、そうなっちまう可能性もあるか。委員長に苦労させないためにも県大会に集中するか」


 とにかく今は目の前のことを。そう自分に言い聞かせたところで、タイミングよく私が頼んだストロベリーアイスが運ばれて来た。


 スプーンで掬い上げて一口目。練習終わりの疲れと、柄にも無く色々考えて糖分が足りなくなった頭に冷たい甘さが染み渡る。それ以降はスイーツを食べながら委員長との女子トーク(内容はテニスが主だが)に花を咲かせた。


 県大会でさらに私の頭を悩ませる出来事が起こると知らずに。

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