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(一)-2
歩いていると、空から雪みたいな白い何かが降ってきた。
「雪か?」
宗ちゃんが胸の位置で手の平を上にして降ってくる白いものを受けとめた。
宗ちゃんは背が高いので、彼の胸の位置の手のひらは、私の目線と同じ位置だった。
私がじっと手の平の上に落ちた白いものを見る宗ちゃんの目をじっと見ていたら、ふっと彼の目線が私の目線とぶつかった。私の目線に気づいたのかも。
彼はちょっと恥ずかしそうにすぐに目線をよそへそらして、「ああ、これ、灰だよ、灰」と言った。
「はい?」
「そう、灰。燃えかすの灰」
「ああ、そっちか」
「どこから飛んでくるんだろう」
「川の方にある化学工場の火災のせいらしいよ」
(続く)