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星の指輪  作者: 結城 凪
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悪霊ヴォロ

 大公園に向かう道すがら、俺はアヴァロンのことを考えていた。精霊と生物が絶対に一つ持っている地球の自然存在の一つだと。なら、あいつも元々は地球のいずれかの生物だったのだろうか。けれど、地球に残り続ければ汚染されるとも言っていた。だが、アヴァロンからはなんというか害悪性を感じなかった。規格外だからなのだろうか。アヴァロンはまだ自分のことを開示していない。まだ話せないのか、もしくは今はまだ話す時期ではないのか。どちらにせよ、俺はあいつの友達だし、あいつは俺の友達だ。あいつが話したい時まで俺は待っているつもりだ。そんなことを考えながら歩くこと二十分。目の前には一人の男らしき人物が立っていた。見るからにフラフラだ。お酒でも飲んでいたのだろうか。あまりにも、不安で俺は声をかけてしまった。

「あの、大丈夫ですか?」

 その瞬間俺は鳥肌が立った。これは昨日と同じ、いやそれ以上の。咄嗟に俺は全力で後ろに引いた。

「へぇ~。感覚だけで気づくのか。だが、お前から力を感じない。外れか。」

「だったら?」

「決まってる。殺してやるよ。俺の名はヴォロ。俺の遊びに付き合ってもらうぞ、人間!」

 逃げる?いや無理だ。昨日のやつとは大きく違う点がある。それは自我の芽生えだ。昨日の悪霊は自我がない分ただ逃げているだけでよかった。しかしこいつは違う。しっかりと思考力がある。背中を見せるのはそれこそ自殺行為だ。

「なんだ、逃げないのか?弱者は情けなくその背中を向けて逃げるものだろう?まぁいい。その蛮勇に免じて俺の力を見せてやる。重力操作!」

 その瞬間、俺にとてつもない重力がかかる。とても立っていられず、地面に倒れてしまう。この能力間違いない。アヴァロンと同じ、

「スキルってやつか・・・」

「ほう、知ってるのか?どこかでみたことがあるのか?まぁいい。とりあえず散り様を俺に見せてくれ。爆散する様をな!重力弾(グラビティ・バレット)!」

 あいつの手の先の空間が歪む。そして、その歪みが俺に向かってくる。だが、動けない。重力に押しつぶされているせいで立ち上がることすらできない。何もできない。悔しさに打ちひしがれているところにその歪みがやってくる。俺の目の前に来た瞬間それははじけ飛ぶように爆散した。俺の体はその爆発の勢いでブロック塀に体をぶつける。その衝撃のせいでもう体に力が入らない。まだ、目と耳は生きているが、それも時間の問題だ。目の中に血が入ってくる。どうも、頭にもダメージがあるらしい。

「ちっ。距離制限か。本当は内側から破裂する様を拝みたかったんだが。まだ生きてるか?生命力は感じるな。だが、長くは持たないと見える。このまま朽ちていく様子を見るのも一興だが、俺は人間が肉片をバラまきながら吹き飛ぶさまを見るのが大好物なんだ。だから、もう一度受けてくれるよなぁ?」

 けたけたと笑いながら、そんなことを抜かしている。だが、もう俺に成せることはない。

「じゃあな!人間!重力弾(グラビティ・バレット)!」

 歪みが俺の方に向かってくる。今度こそダメだと思ったその時、俺のポケットが光りだす。

「これは、お守りか?」

 光っているポケットの中に入れていたのは千代からのお守りだ。その瞬間、空にも光がさす。

「朔夜!」

 聞きなれた声がした。声のする方に頑張って顔を動かす。そこには俺にこのお守りを託してくれた千代がいた。服装は何か仰々しいものになっていたが、約十年の付き合いだ。見間違えるはずがない。

「なんで、千代が。」

 声を振り絞り、聞いてみる。

「その話はあとでね。今はまずこいつを倒す。」

 いつもの千代とは違い強い言葉が出る。目の前の敵から視線を逸らさない。

「お前、何者だ?普通の人間ではないのは分かるが魔力を一切感じない。」

「答える義理はない。下郎。大人しくあの世に送ってやろう。」

「ほう、自分の立場が分かっていないようだな。たかが人間、俺の敵ではない!重力操作!」

 敵はそういって俺と同じ術をかける。しかし、俺と千代ではその反応が違った。まるで千代には効いていないのだ。しかし、千代の周りの空間は歪んでいる。間違いなく奴のスキルは発動している。

「なぜだ!なぜ効かぬ!術は発動しているのに!」

「この程度、私には造作もない。これで終わりか?ならばこちらから行くぞ。」

 千代は地面を蹴り相手への距離を一気に詰める。そして、無数の拳と蹴りによる打撃を相手に浴びせる。

「うっ、この!」

 相手も負けじと拳を放つ。徐々にスピードが速くなり、俺には見えない戦闘が繰り広げられる。時折、衝撃波のようなものが生まれている。そして、何かが地面に叩き落とされる。煙が晴れるとそこには敵が倒れていた。少しして、千代も空中から降りてくる。

「ば、バカな!魔力も持たぬ人間にこの私が!」

「これで終わり?なら、死になさい!」

 一気に千代がトドメさしにかかる。勝負が決まるであろうその瞬間に、

「ぐわっ!」

 俺にまたも強大な重力がかかる。その声を聞いた千代は踏みとどまる。

「屑が!」

「ははっ。確かに貴様は強いが、あれが足手まといになったな。このまま向かってきてもいいぞ?しかし、あいつは押しつぶされることになるがな!」

「くっ!」

 俺のせいだ。俺が弱いからこんなことに。

「さぁ、どうする?このまま俺を見逃すのならあいつは生かしてやるが?」

 千代は沈黙している。敵は自分に分があると踏んで強気だ。

「賢明な判断を期待しているぞ?」

 その瞬間、千代の周りにオーラが纏う。このオーラ尋常ではない。

「な、なんだこの圧倒的な迫力は。いや、これはまさか。貴様一体・・・」

「死ね。」

 その瞬間、千代は光を放った。俺にはそれしかわからないが、光が消える頃には敵は消えていた。光によって敵は消滅したのか。千代の大量に出ていたオーラが薄くなった。そして俺の方に駆け寄る。

「朔夜!大丈夫?」

「い、いや。ダメっぽい。体、動かねーわ。」

「待ってて。」

 そういって、千代はまた光を放つ。しかし、先ほどのものとは違いどこか温かい光だった。少しずつ体が楽になっていく。

「どう?」

「あ、ああ。とりあえず歩けるくらいには。何をしたんだ?」

「私の力を使って朔夜の治癒力を極限まで高めたの。でも、まだ安全じゃないわ。今、朔夜の体はぐちゃぐちゃよ。家まで送ってあげるから。手を貸して。」

「わ、悪い。まだ帰れない。俺には行くとこが・・・」

「な、何を言ってるの?そんな体で行かせるわけないでしょう。それに、私すごい怒ってるんだからね?」

「外出したことか?」

「そう。分かってるなら帰るよ?さぁほら。」

「いや、だから・・・」

 千代と言い合っていると、空から声が聞こえた。

「ふーん。私との約束を破って女の子とイチャイチャしているとか私のことを舐めているようね、朔夜?」

 そこには麗しき規格外の精霊、アヴァロン・アークレーヴェルが佇んでいた。


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