幼き日の思い出
はじめまして。結城 凪です。
今回「星の指輪」という作品書かせていただきます。
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僕は逃げた。親からの重圧や、単に嫌いだからではない。人との戦いが怖かった。臆病だった。今の時刻は夕方の五時を回ったころ。本来なら、家の道場で剣道の指南を父親から教わっている時間だ。家からおよそ五百メートル離れた公園で一人ブランコに腰かけている。およそ半年間続けてきて昨日初めて誰かと打ち合う稽古が始まった。そして、知った。人と戦うことが怖いと感覚的にも、本能的にも知ってしまった。俺の家系である一ノ瀬家は、剣道の名門として代々名を連ねている。故に、辞めたいといっても父親は許してくれなかった。だから、この公園に逃げてきた。きっと今頃怒っているだろう。初めて誰かと対立するだろう。これからどうすればいいか自分には分からなかった。
「僕は、もう剣道なんてしたくない。」
そんなことを口にしたとき、正面にある砂場から光が見えた。気が付くと勝手に足が動いていた。光につられて、砂場を掘り返してみる。
「これは、指輪?」
そこには、綺麗な指輪が一つ落ちていた。銀色に光り輝くそれに心を奪われていた。はめてみるとまだ指が細かったせいか、ぶかぶかだった。
「交番に届けた方がいいのかな?」
なんて、口にしてみたもののその美しさに惹かれた僕は手放したくなかった。幸い、元々人気が少ない上に、十二月の薄暗い公園にいるもの好きは僕一人だけだ。
「探している人がいれば、その人に渡せばいいか。」
そんなことを、心にも思っていないことを口にして、銀色の指輪を眺めること二十分。
「ちゃんと話し合おう。対立しないためにも今は頑張る時だ。」
指輪を握りしめて、帰路についた。以降、剣道をやめたことで父親との関係が悪くなってしまったが後悔していない。だって、対立したのはこの時だけだから。そんな夢のように美しい指輪に魅せられた少年、一ノ瀬朔夜の大切な思い出となったのは七五三の写真を撮りに行った二回目の冬のできごとだった。
「おーい。起きてますかー。移動教室ですよー。」
「あと十分だけ。」
「バカ。昼休み終わるぞ。吉野先生キレると全体に説教始めんだから。」
「あー。吉野先生か。」
俺は伸びをして、体をほぐす。どうもご飯を食べた後うたた寝をしてしまっていたらしい。
「ったく、珍しいな学校で寝るなんて。また、父親にドヤされたか?」
「違うよ。もうここ数年ろくに喋ってないし。」
「そうですよね。なんせ、あの一ノ瀬家を持つ当主なんだから。」
そんな軽い口調で話しているこいつは浅井直人。小学校からの親友みたいなやつである。基本的に対人関係は良好であるが、こいつとはより砕けて接することができる。これが魅力というやつなのかと考えさせられたほどだ。
「まぁ、俺はあの家では落ちこぼれですよ。」
「ううん。そんなことないよ!」
「おっす、千代。生徒会のミーティングお疲れ様です!」
「お疲れ、千代。」
俺を励ましてくれるこの女の子は、神薙千代。所謂、優等生である。クラスの学級委員長であり、なんと一年生ながら生徒会長を務めるほど学校の生徒、教師問わず絶大な信頼を置かれている。
「体は大丈夫なの、千代?」
「うん!今日は全然問題ないよ。」
「千代は体弱いんだから、無理はだめだぞ。」
「もう、大丈夫だよ。朔夜は心配性だね。」
「あ、心配で思い出したけど、二人は知ってるか?例の神隠し事件。」
「確か、朝ニュースでやってたやつだっけ?」
「そうそう、千代はしっかりチェックしてるな。朔夜は?」
「いーや、初耳。そんな話題なのそれ。」
「今日ニュースで話題になってたぞ。」
「あー、俺の部屋テレビないから知らなかったわ。」
「ったく、俗世に疎すぎはしませんか?次期当主様?」
「いや、俺は当主にならんし。」
「SNSでも話題にあがってるぞ。ほれ。」
SNSを見てみると、夜中に外出した人が帰ってこないというものである。よくある行方不明事件であるが、その被害者が昨夜で十人を超えたとのこと。最初の被害者はもう一か月も行方知れずとのこと。被害者の特徴に共通点はなく、日本各地で老若男女問わず起きており、現代の神隠しという見出しで話題になっている。
「神隠しね。行方不明者なんて別に珍しくもないだろ。人間社会はいつも人間を苦しめてるんだし。」
「お前な、人との対立はしたくないんじゃねーの?」
「客観論だよ。それに一か月も行方不明になってる人の生存確率なんて高くないだろ?」
「まぁ、そうなんだけどな。とにかく夜の外出なんて辞めとけよ?いくらこの辺で被害が起きてないとはいえ、ただでさえおっかないんだから。学生は大人しく夜は家でゲームでもしとこうや。」
「む。そこは勉強でしょ、直人、赤点ギリギリだったでしょ?」
「大丈夫っすよ、生徒会長。適度に手を抜いてるんで。」
「全く、いつか足元をすくわれるよ?」
「気を付けますよ。そろそろ時間だし、移動しようぜ。」
そういって、俺たちは立ち上がり、移動教室に向かった。
「神隠しか。」
客観論ではなく主観としては少し惹かれる内容だったことは心の内に留めておいた。まるで、あの日見つけた指輪と同じ冬風が吹く十二月の出来事に運命を感じたのかもしれない。
初作品なので、初期の頃は書き直しが発生するかもしれません。
その時はなろう、Twitter(@Yuki_Nagi_0830)の方で告知します。
次回はデート(?)回の予定です!




