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主役になれなかった少年は美少女に恋をする  作者: 桐ヶ谷スバル
第一章 仮初の婚約から始まる同棲生活
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第3話 仮初の婚約

 「何よ?私がお見合い相手じゃ何かいけないことでもあるのかしら?」


 「別に……」


 ルーシーと仁は暫く沈黙し、お互い睨み合っていた。


 (ちくしょう、せっかく金髪碧眼の美少女がやって来たと思ったらよりにもよってルーシーかよ……このお見合いはなかったことにでも……合わないからと言えばルーシーが魅力のない女だと言っているようなものだしかと言って……断る理由が見つからねぇ……)


 そう思っている最中、ルーシーは口を開いた。


 「お見合いの話しだけど……私、元々する気はないのよねぇ……パパが勝手にセッティングしたから仕方なくしただけで」


 「ふ~ん、そうなんだ。ぶっちゃけもとはと言えば親父がお見合いの話しをしてくるから金髪碧眼の美少女ならと言ったのが事の発端だしなぁ……」


 仁は何故だか博多弁ではなく、標準語で喋り出した。


 「なるほどね……」


 「すまないな……迷惑かけちまって」


 「別にいいわ、実際この年で婚約なんて普通に考えたら今の時代ありえないわよね。エミリーだってジョー君と仲良くイチャラブしているのに私はお見合いさせられているわけだし」


 仁とルーシーは気付いていないだろうが恐らく、こうやって二人の距離が少しずつ縮まっていることには気づいていないだろう。


 「まっ、俺も意気揚々とせっかくお見合いを受け入れたわけだし仮初の婚約でもしとくね?」


 「仮初の婚約?」


 「いやねぇ、やっぱりさ……ここでなかったことにしたらお互いの家とかの関係とか悪化しそうだし……」


 「そうよね、せっかくお見合いをセッティングしてくれた親に婚約破棄になりましたじゃ私の方も怒られそうだし……それに、高校卒業まではそんな仮初の生活もいいかなぁとも思うのよね」


 仁の提案にあっさりと乗ってくれたルーシーに唖然としつつもそれでことが順調に進むのならと背に腹は代えられぬ状態であった。


 ポケットに入れていた煙草を口に咥えた仁はライターで火を着け、吸い始める。


 「ちょっと、未成年なのに煙草なんか吸っているの?」


 「まぁね、中学の頃から吸っているよ」


 そう言うとルーシーは肩を竦め溜め息を吐く。


 「それで、その仮初の婚約をするってことでいいのよね?」


 「やるしかないでしょ?まっ、そんなわけでよろしく」


 お見合いもなんとか無事に終了し、仁とルーシーはお互いに連絡先を交換することにした。


 「まっ、交換したところでする機会は少ないだろうけど……」


 「そうもいかないと思うわよ?婚約するとなった以上私達の関係とかもしっかり報告しなくちゃいけないわけで」


 「めんどくせえなぁ……」


 仁は気だるそうにしつつも仕方ないなと割り切った。


 そして、仁はそのままヨハンの家に泊まりに行こうとした途端、父親が眼前に現れた。


 「仁、婚約はするとね?」


 「まずさ、どうだったかを聞くべきやと思うっちゃけど?」


 仁の父親は状況よりも婚約が決まったことを前提に話を勧めようとしているため、かなり呆れていた。


 理想の美少女と婚約できるわけであるため普通なら喜ぶべきであろうが仁にとって身近にいる女子でしかも同じ学校の同級生と婚約をさせられる羽目になるなんて想像もしていなかった。


 「まぁ、婚約することにはしたばい」


 「そういうと思ってマンションも用意しとるけん今から二人でそのマンションに同棲しんしゃい」


 「はいはい、分かったばいって……ちょっと待たんね、今なんて――」


 「そいやけん婚約するとやろ?彼女の両親にも許可は得ているからくさ大丈夫ばい」


 父親は親指をグッと立てながら白い歯を見せる。


 「何でそうなるんだよぉぉぉぉぉぉぉォ!」


 仁は空を見上げながら大声で叫んだ。


 「いや、あまりにも唐突すぎるんですけど!つーか何でお見合いした一日目で急に同棲が決まるとね?普通にあり得んって!ラノベとかアニメならまぁこういう急展開はご都合主義とかで済むけどこれもうご都合主義通り越して出来レースじゃぁねぇか!」


 父親にキレのあるツッコミを入れる。当然、博多弁は殆ど使用していないようだ。


 これは意図的なのかアニメの影響なのかは分からないが少なくとも本人は無意識に行っているのだろう。





 数時間後、仁とルーシーは渡された地図を頼りにそのマンションで同棲生活を始めることになったのだ。


 「まさかこんなことになるとは……」


 「いいんじゃない?あなたどの道ラーメンばっかり食べているんでしょ?」


 「うん、ってか何で知っとるとね?」


 「いつも学食のお湯使ってカップラーメン食べてるじゃない?」


 些細な会話をしているとマンションに到着し、地図と一緒に渡された鍵を持ってドアを開けた。


 部屋の中はとてもシンプルかつ家具などの電化製品もしっかり揃っており、これは確実に出来レースではないのかと違和感を感じるほどことが上手く出来すぎていた。


 (親父達は一体何を考えているんだ?婚約や同棲にしたっていくら何でも早いし何か裏があるっちゃなかろうか?)


 仁は大人達が仕組んだ出来事からルーシーという巨乳で金髪碧眼の美少女と同棲することになったのだが未だに喜べずにいた。


 ルーシーは料亭では嫌々ながら引き受けた感が強かったのに対し、いざ同棲生活を始めるとなると躊躇いを感じつつも満更ではない様子だった。

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