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主役になれなかった少年は美少女に恋をする  作者: 桐ヶ谷スバル
第一章 仮初の婚約から始まる同棲生活
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第18話 甘えてもいいんだよ

 部活も終わり、仁はマンションに帰るとそこにはエプロン姿で料理をしているルーシーがいた。


 ルーシーは料理に髪の毛が付かないようにポニーテールにしており、ちらりと見えるうなじがなんとも愛おしく感じていた。


 「ただいま~」


 「あらっ、帰ってきてたの?今料理作っているところだからちょっと待ってて……」


 ルーシーは待つように言おうとすると仁は手を洗いすぐさま手伝いに入る。


 「別に手伝わなくても私一人でできるから大丈夫よ?」


 「何言いよっとね、ルーシー一人に任せっきりってのも男としての面子が……」


 仁はそう言うとルーシーは「別に嬉しいとか思っていないんだから……」と頬を赤らめ視線を逸らす。


 「それと仁、ありあはああ見えて繊細な子だからあんまりからかっちゃだめよ。あの子、小学生の頃は肥満体型で必死に減量してあの体型維持しているんだからね」


 「はいはい」


 「はいは一回じゃなきゃメッ!」


 「はい……」


 ゴマすり媚び売りが下手な仁はありあを傷つけてしまったことに少し悔いており、次会った時は一言でもいいから謝罪の言葉を述べようと思っていた。


 世渡り上手ではない仁はありあの第一印象こそよくなかったが自分自身と重ねてしまうところがあった。


 仁は大の三次元の女が嫌いでありあは男嫌い、それだけでも共通点があったのだ。


 「いただきます」「イタダキマス」


 二人は手を合わせ、いつものように夕食を食べていた。


 仁はいつものようにルーシーの作った料理を美味しそうに口の中に頬張り、幸せそうな表情をし、ルーシーはそんな仁を見て微笑していた。


 「仁とありあってどことなく似てる気がするわ……」


 「そうね、まぁ噂だと男嫌いで有名らしいし現実の女が嫌いな俺と比較したら近いものはあるかもしれんね」


 「私は以外と努力家な一面とか似てると思うわよ」


 「それはどうもありがとう。そしてルーシー、いつも美味しい料理ありがとう」


 ルーシーは「当然よ、ずっと料理しているんだから不味いはずないでしょ」と自信気のある声で言う。


 「ありあだけど……仁にロリって言われたことすごく気にしてたようで私にすごく泣きついていたわよ。仁はとにかく言葉遣いの悪さをなんとかしないとだめよ、仁は本質的には優しいんだから……」


 「俺は日本にいる女を可愛いとは思っていないからそれは無理な頼みだよ」


 「仁はそうやって何でも頭ごなしに考えるのよくないと思うわよ。異世界に行った友達が大の日本人嫌いだからって仁まで日本人嫌いになる必要はないでしょ?」


 「丈は確かに侑と俺以外の日本人は嫌いなようだった。それでも丈は日本人とかアメリカ人とか関係なく仲良くなりたかったんだ……あいつだって好きで日本人を毛嫌うようになったわけじゃない、丈はそこから反骨精神が芽生えて日本にいる古い大人達に負けないように不良にならざるを得なかった。俺だって同じだ……丈と一緒に古い大人達になめられないようにするためにこうゆう風になることで気を紛らわしているだけにすぎない。それを理解できない古い大人達と周りの奴らは俺達のことを一方的に不良だの落ちこぼれだと決めつけているだけなんだ」


 仁の表情は険しく、歯噛みをしながらルーシーに恨み節を見せる。ルーシーは仁がそれほど辛い経験をしたのだろうと理解こそしていたがそんな仁を包容するほどの力がなく、そんな反骨精神剥き出しな仁の中に入り込むことができず気圧されていた。


 「すまない……女の子の前でこんな暗い話はするもんじゃなかったね……忘れてくれと言われて忘れられるわけじゃないのは分かってる。それでも、それでも俺は誰かを好きになって傷つくくらいならいっそのこと誰も好きにならずに一人で二次元のように作られた世界に入り浸ったほうが幸せだと……俺は誰かを好きになって一度もいいことがなかった……それは丈も同じだった、俺も丈も日本が……この世界が大嫌いだった。そして弱者と言う存在が許せなかった。弱者はいつも強者にいたぶられるのが怖くてオドオドとして誰も信じられず言いたいことが何一つ言えない、俺も丈もそんな弱者の一員である自分自身も許せなかった。そして気付いた……この世界に強者などいないと、強者と呼ばれる人間は自分よりも地位の低い人間を弱者と称し優越感に浸ることでそんな関係を築いた。人類全てが弱者だったんだよ。だけど俺はまだ自分を弱者と認めたくはない。ルーシーはエミリーを守るために義母から嫌われるようにしていると言っていたがそれでも君は何故そこまで強くいられる?どうして俺なんかと一緒にいても、その曇った表情から時々光が……」


 仁は感情的になり、ルーシーは仁を抱き寄せる。ルーシーの母性に包み込まれた仁は口を噤ませ、目を閉じ涙が流れだした。


 「お願い……そんなに思い悩まないで……あなたが苦しんでいると私も苦しい。この婚約が嘘であっても今こうして一緒にいる時間は嘘なんかじゃない!紛れもなく本物よ!何でも意固地になって考えないで……仁も私も今は一人じゃない。こうやって嘘の婚約をして一緒に暮らしているのだってこうやってお互いを支え合うためにあるかもしれないじゃない……だから……辛いときは辛い……って言って!甘えたいときは甘えなさい……べっ、別に仁に甘えられても嬉しいとかそういう気持ちは一切ないんだからね。ただ、放っておけないから……一緒に同棲しているんだからその辺りのメンタルケアも大事でしょ!」


 ルーシーの豊満な胸に仁は顔を埋め、そのまま仁はルーシーの胸を借りて号泣した。


 ルーシーの胸に顔を埋め思う存分、今まで溜め込んでいた悲しみの涙を流し、仁は我に帰りすぐさまルーシーの胸から離れ顔を赤く染めた。


 男として、女に弱みを見せることを恥ずかしいと思ったからだろう。


 しかし、今は男女平等が当たり前の世の中であることを考えれば恥ずかしいことではないのだ。


 寧ろ、仁は昭和の人間のように男は強く女はと言った固定観念に囚われていることを考えるならそのようなプライドがあってもおかしくはない。


 「こげんかしゃばいとこ見せて俺ってダメやね」


 「何言ってるの?別に泣くことは恥ずかしいことじゃないと思うわよ?昔ね、私が新しい環境に馴染めずに泣いていたらある人がこう言ったの。『泣きたいときくらい思いっきり泣けばいいだろ』って、だから辛い時は遠慮せず泣いていいじゃない」


 ルーシーは過去の出来事を回想し、仁に微笑を浮かべる。


 光を失い曇っていたルーシーの蒼い瞳からは輝きがあり、その神々しさに仁は涙を拭い見惚れていた。


 「その人いい人やんね、いつの頃かは知らないけどくさ……ルーシーはその人のこと今でも好いとるとね?」


 「知らないわ……」


 ルーシーは頬を赤らめ、両腕を組み視線を逸らした。


 仁はあまり興味がなさそうに別の話題へと切り替えようと考えるも今一度自分が何故ルーシーと一緒にいて安心できるのか疑問に思っていた。


 将来社会不適合者確定の自分と仮初の婚約とはいえ、ここまで自分に接してくれるのか、何故一緒にこうやって生活してても否応なく過ごせるのか不思議でしょうがなかった。


 人間不信になったあまり仁は誰かに甘えるといった習慣がなく、甘えることをカッコ悪いと思っていた。


 ルーシーと同棲を始めてからその考えが打ち砕かれ、少しずつ解放されている感じがしていたのだ。


 小学生の頃から媚び売りゴマスリが苦手で世渡り上手な人を羨んだりし、人生を真っ当に生きていても規制や規則と言った吹き溜まりばかりでいつも頭が爆発しそうになっていた。


 中学に入れば物事も一部だけではあるが分かるようになり、ネットで色々な情報を得ることができるようになり仁はますます世の中に絶望していた。


 人の気持ちも考えずに誰もが右にならえを強いられ、少しでも外れれば不良や落ちこぼれと言ったレッテルを貼られたりと「いい加減にしろ!」と叫びたくなるものだ。


 ジョセフに至ってはそのこともあってか完全に絶望し、死にたいと思う気持ちさえあった。


 当然、仁も数々の理不尽を知ることで誰もが敵に見えてしまうことはあったがそれでも、ジョセフに対して仁は希望を見出そうと努力をしていた。


 異世界に転移した親友でもあるジョセフの意志を継ぎ、服装から髪型まで模倣している仁だが、ルーシーとの出会いによって世界に対する見方も変わっていることに間違いはなかった。


 「ルーシー、今日は一緒に寝てもいいね?」


 「なっ……何言ってるのよ!」


 ルーシーは顔を赤らめ、慌てた様子で声を上げる。


 異性にいきなり「一緒に寝たい」と言われれば誰しも同じ反応をしていただろう。


 「ダメ?」


 「別にダメなんて言ってないでしょ……」


 「襲ったりとかする気ないからその辺心配してるなら大丈夫よ」


 「そうなんだ……」


 ルーシーはそう言われるとどこか安堵した様子で溜め息を吐いた。


 肉体関係を築くことを想像していたのだろうが仁にはその気がないことと、ルーシーは学生の身ですることは不純異性交遊になることを警戒していたからだ。


 男女で肉体関係を築くのは結婚しているものでなければ後々面倒になるからだろう。


 妻子持ちであれば他の女性を妊娠させた場合、養育費や慰謝料を払わされる場合もあるからだ。


 二人は食事と入浴を済ませた後、ルーシーは仁の部屋へと入り、寝巻き姿で仁と二人でベッドに腰をかけていた。


 「ねぇ、本当に何もしないの?」


 「好きでもないのにしたら流石にまずいでしょ?」


 「一緒に寝るのはいいんだ……」


 「別にセックスしようと言ってるわけじゃないんだからいいと思うよ。一応婚約関係結んでるわけだからそれくらいしてないと逆に怪しまれそうだし」


 そう言うとルーシーは「そうよね……」と頷き、消灯した後に二人は横になる。


 仁との距離が近く、温もりのある息が当たりルーシーの胸の鼓動は高鳴っていた。


 アダルトゲームでもこのようなシチュエーションはあるがいざ、実際に異性と一緒に寝るとなると年端もいかない少女からしたらドキドキするものだった。


 仁の方も「少し距離が近すぎるね」と呟き、離れようとするもルーシーがしっかりと抱きつき「そのままでいいよ……」と力ない声で囁く。


 ルーシーの身体は肉付きが良いからなのかとても柔らかく、強引に扱えば壊れるのではないかと思うほどに脆く感じ、仁は女性の身体に触れることに恐怖していた。


 その反面にルーシーの柔らかい体を抱きしめ、クッション代わりにしたいとも思っていた。


 男を温めるのは女の役目というのを思い出し、仁はルーシーを実際に抱きしめて実感したのだ。


 仁はルーシーの髪の毛に残ったシャンプーの匂いを嗅ぎ、女性と男性の違いを改めて再認識し、ルーシーに甘えることにした。


 外は満月でうさぎが月見餅をついていてもおかしくないほどにとても美しく、仁とルーシーはお互いの身体を密着させることでより一層絆を深めていた。


 仁はルーシーを抱いたままぐっすりと眠りに就き、ルーシーの心拍数が増えて眠れそうになかった。


 眠っている仁の寝顔は子供のように無垢で可愛らしさがあり、ルーシーはそれを間近で見ては何かを妄想していた。


 ルーシーの妄想が如何わしいものなのか、それとも全く別の者なのかは定かではないが少なくとも、仁に対する悪い妄想でないことは間違いないだろう。


 かれこれ一時間ほどルーシーは眠れず、「羊が一匹……」と小声で数える。


 それでも尚、眠気は訪れなかった。


 何度も眠れる方法を試行錯誤するも興奮状態に陥り、仁に背を向けて横になるも結果は変わらなかった。


 背後から仁の両手がルーシーの豊満な胸を優しく鷲摑みし、「おっぱい柔らか~い」と寝言を言い出した。


 一人用のベッドであるため二人の距離はそう遠くなく、寧ろ仁が胸を鷲摑みしていることによって密着していたのだ。


 仁は夢の中でエッチなことをしているようでルーシーの胸を何度も揉みしだき、ルーシーは仁に胸を揉まれることで身体が熱く感じ始め、出そうになった声を押し殺していた。


 他人に触られると自分では感じなかった部分まで感じるようでそのことに快感を覚えたルーシーはこのまま仁が夢の中で揉み続けていればと妄想し始め、頬を赤らめ息遣いも荒くなっていた。


 「はぁっ、はぁっ……うぅん……あっ…………ダメッ…………」


 力泣き声でルーシーは声を喘がせ、胸以外も触ろうとした仁の手を豊満な胸に誘導しては揉み続けさせていた。


 自分で触るよりも他人に触れられることに快感を覚えたルーシーは絶頂に達し、疲労が蓄積したのかそのまま眠りに就いた。

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