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主役になれなかった少年は美少女に恋をする  作者: 桐ヶ谷スバル
第一章 仮初の婚約から始まる同棲生活
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第12話 ルーシーの涙

 福海が仁とルーシーに謝罪した次の日、ルーシーのクラスには綾野侑という仁の幼馴染の美少女がいた。


 その侑という少女は高校生でありながらラノベ作家も兼業している清楚系美少女だがかなりの男嫌いで、毒を吐いては告白を断っていた。


 とは言っても侑は現在、ヨハンと付き合っている。


 その理由はヨハンが義理の兄である綾野丈ことジョセフ・ジョーンズと雰囲気が似ている気がしたからだ。


 ルーシーはそんな侑の隣に座っている如何にも地味で意識しなければ存在さえ忘れそうな幽霊のような少年、赤丸耕陽あかまるこうようの悩みを相談する侑が何故仁やヨハン以外の男子と会話しているのか理解できなかった。


 男嫌いで有名な侑が男子と会話していることが不思議に思い、そんな耕陽の顔立ちは仁同様に中性的だけど俗にいう陰キャで髪の毛はボサボサでおしゃれに疎そうな少年で、真面目だがオドオドとしていた。


 何故あのような男子と会話をしてるのか尋ねてみるも「小説のネタになりそうだから」の一言で会話を済ませ、ルーシーにとって侑という少女は感じの悪く反りの合わない存在だった。


 ルーシーはそんな侑が許せなかった。


 小説のネタになりそうだからと冴えない男子と会話をしていることが。


 「ルーシーさん、一体私に何かようかしら?」


 「何って、あの子を小説のネタにするつもりで相手にしているなんて失礼よってことを伝えに来ただけよ」


 「仕方ないじゃない、耕陽君が自分から『女子に免疫ができたら克服できるかも』ってわたしに頭を下げて来るんだから」


 そう言って侑はルーシーに事の経緯を説明する。


 「それで、彼は一体どんな悩みを持っているのかしら?」


 「おしゃれになりたいんだって。だから初歩的なものから教えているのよ。そしたら取材とか行かなくてもラブコメ小説書けそうな気がしたのよ」


 「そうなの……勝手な思い込みで怒っちゃってごめんなさい……」


 ルーシーは顔を俯かせ侑に謝罪をする。


 「本当にルーシーは小学生の頃から変わっていないわね。そんなことだから覚えてもらえないのよ」


 「何よ!侑には関係ないでしょ!」


 「ないこともないと思うわ。彼は私のボーイフレンドでありながらお兄ちゃんの親友だからね。それに分かったでしょ?彼はもう昔のようには戻れないって」


 「……そっ、それは……」


 侑に論されたルーシーは口を噤ませる。


 「それにあなたは彼があんな風になったのか知らないでしょ?お兄ちゃんも彼も中学に入ってからかなり虐められてたのよ。《《自分達とちょっと違うから》》って理由で……二人はバンドと筋トレで学校さぼったり、学校に来たかと思えば喧嘩に明け暮れて他校の不良と喧嘩するほどにまで悪化して周りからは後ろ指をさされたり、女性嫌いになったりと壮絶なものよ……そんな彼をあなたは心からの支えることができるの?今のままなら無理ね」


 「どうしてあなたはそう論理的にしか物事を見れないの?一緒にいた時間が私より長いからって知ったような口で言わないでよ!」


 ルーシーは感情的になったあまり周りが見えていない様子で大声をあげ、周囲は「侑とルーシーが喧嘩している」程度の認識でざわざわしていた。


 二人の口論は長時間にわたり続き、終わった頃にはルーシー涙を流しながら教室を出た。


 「何も知らないくせに……」


 ルーシーは愚痴をこぼし、その涙を堪えようとするも止まることなくどんどん溢れていた。


 早退届を出して仁と一緒に暮らしているマンションへと踵を返し自室のベッドに飛び込み号泣した。


 仁の前でもこんなにも泣いたり涙を流すことがなく、そんな情けない姿を見せたくはなかった。


 「こんなの、仁に見せられるわけないじゃない……こんな姿を見たら仁は幻滅するに違いないわ……」


 ルーシーはかなり自意識過剰になり、思い込みが激しくなっていた。


 年頃の女の子以前にルーシーは繊細でピュアであるが故にこうなるのは仕方のないことだった。


 しかし、侑の言っていることも正論ではあるものの自分の意見を否定されたことが腹立たしくてしょうがなかった。


 そしてルーシーは立てかけてあった写真を手に取りベッドでそれを眺めていた。


 「あの頃の彼はあんなに優しくて女の子のように可愛い顔立ちしていたのに……今じゃ私の嫌いな煙草に暴力なんて当たり前の不良になっちゃうなんて……神様、もしも奇跡が起きるならば彼の歪んだ心をお清めください……アーメン」


 ルーシーはそんな彼のことを思いながら神様に祈りを捧げていた。


 すると、扉からノックする音が聞こえた。


 「ルーシー、おるね?」


 聞き覚えのある声だ。


 「待って、今出るから……」


 ルーシーは慌てて写真を隠し、涙を拭い取りドアを開けた。


 「心配したとよ。ルーシーが早退したって侑が直接俺んとこ来て教えてくれたけんくさ。俺も早退届出して今帰って来たとよ。具合は悪なかね?」


 仁は慌てた様子でルーシーの額に手を当て体温を確認していた。


 「大丈夫って言ってるでしょ!私のことはほっといて!」


 ルーシーは頬を赤らめそんな仁を突き放す。


 「ちょっとお節介すぎたようやね。ごめん……でも、ルーシーのことが心配になったけんくさ」


 「私もごめんね……ついカッとなって仁の気持ちを踏みにじっちゃって……」


 二人はお互いに謝罪の言葉を述べ俯いていた。


 「お腹すいたね、ラーメン食べるね?コンビニで買ってくるばい」


 仁は気を取り直したのかルーシーにラーメンを勧めた。


 「……うん、本当はラーメン禁止って言ってたから食べたくないけど今日だけよ……」


 ルーシーと仁は途中で早退したからなのかお腹がすいていたようだ。


 「でも、私達昼休み前に帰っちゃったからちゃんとお弁当食べた後にラーメン食べましょう」


 「そうやね、まず弁当食べてからにしようか……」


 仁は肩を竦め溜め息を吐きながらもルーシーとテーブルで弁当を食べていた。

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