私的恋愛
三角関係って、モヤモヤする。
恋愛の話によくありがち、友情と愛情がドロドロに混ぜ合わさって、胸をかき乱される。
例えば、男女の仲良し友達のバランスが崩れるとか、仲睦まじい幼馴染に絶対的な運命の相手が現れてどうしようもないとか、さーー。
報われなさ過ぎるのに、なんでそこいっちゃうかなーーって、なったこともないのに熱が入っちゃう。
そんな気持ち、想像するだけだ、と思っていたけど……。
大学に入って一年、私、野沢奈緒は、同級生の男子に密かに恋してた。
佐々木くん。
背はまぁまぁ高い、顔も悪くない、友達もそれなりに多い。
彼と同じ高校だった子にちょろっと聞いてみたら、特に浮いた話もなく今に至るそうだ。
やった、彼と仲良くなって、恋仲になるチャンスがあるってことだ!!
なーーんて安心しきって彼を愛でながら、淡い気分に浸りきって過ぎた一年。
二年生になって、温めた恋心を昇華させるべく行動しようと思っていた矢先。
彼は、私の友達の花枝と交際を始めた。
秘めて堪能した片想い、そして突然の失恋。
恋活も告白もせずに終了、なんて急展開な散り際よ。
一年間、トキメキをありがとう。
想って見ているだけじゃ何もないよね、私がそんなんしている間に、二人は愛を育んでいたわけで。
フラれず傷も浅く済んだかな。
花枝はいつから好きだったんだろう、もともとそんなに恋の話とかしてこなかったけど、春休みとかなんかに、急展開だったのかな。
どっちから、好きって言ったのかーー。
あああ、不毛!!
いっそノロケられて気持ちの整理をしたい、でも交際の報告だって一言で終わったし、彼女は自分からそういう話をするタイプじゃない。
まぁそれなら、花枝と佐々木くんと一緒につるむこともなさそうだし、きっと私の気持ちも自然と落ち着くよね。
佐々木くんが恋彼から友彼に変化した今、彼への気持ちをセーブしながら、花枝とも彼とも平和にやっていきたいわ。
小さな恋の歴史の幕をしっかり下ろせるように、裏腹な気持ちとも向き合って、人生の修業を積んで徳を高めていこう。
そんな感じで、恋仲になった二人を、私は友達として静かに見守ってきた。
大学では、当然ながら二人で一緒にいることは多い。
でも、授業が違うと花枝は女友達といて、恋人にベッタリということもなかった。
週に2、3回は二人でいるところを見るけど、割とそれぞれの友達と別にいて、節度のあるおつき合いのようだった。
人前ではわきまえて、二人だけの時にデレているのかーー、やっぱり妄想は尽きない。
けど二人が無駄にラブラブアピールをしてこないおかげで、私のヤキモキも抑制されていった。
プライベートを公にし過ぎないのって、一般人でも大切なことなのね。
春先まで憧れていた私の気持ちも穏やかになり、二人の関係もすっかり認められた。
大人的につき合う二人は本当にお似合いで、彼をよき男として見ていた私の目に狂いはなかった……、と自己評価まで高まっていた。