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剣聖との邂逅、再び

『難しい話ね…久我の気持ちも分かるし、マリルやリリルの気持ちもよく分かるから…』


『だよなぁ…出来れば墓参りくらいさせてやりたいが…誰かの目について、嫌な目に合わせるのもアレだし…』


 久我は焚き火の番をしながら、毛布にくるまって眠って火に照らされているマリルとリリルの瓜二つな顔を交互に見る。


 今はザナスから次の街へ向けて野宿をしているところだ。交代しながら見張りと火の番をしていて、久我の番になったところでミネルヴァに念話で相談していた。


『どっちかって言ったら、マリルのが帰りたくない感じなんだよな。リリルは墓参りには行きたい言ってるし…』


『…マリルはお兄ちゃんだしね。バカだけど地頭はいいし、心の機微には敏感…きっとリリルを嫌な目に合わせたくないのよ』


『お!?意外にマリルの評価が高いじゃない』


 ミネルヴァのマリルに対する評価が、思いの外高い事に久我は驚きを隠せない。ただの空気を読めないバカだと思われていると考えていたからだ。


『久我はあの子がただのバカだとでも思ってるの?』


 今度は逆にミネルヴァが久我にマリルの評価を聞く。


『いや…バカはバカだけどな。妙な所で感がいいし、空気を()()()読まない度胸もあるしな…一概にバカとは言えないかな?』


『そうね…あの子の場合は、空気を読めないじゃなくて、読まないだもんね。本当に強い子だわ』


 ミネルヴァと久我のマリル評が概ね一致する。2人からは、かなりの評価が高いが調子に乗るといけないので、2人は本人には言わないと示し合わせる。


『リリルはリリルで常に他人の事を思える優しい子だしな』


『リリルは芯がしっかり通ってるのよ…強い子だわ』


『何とか墓参りだけさせてやれないかな…』


『とりあえず次のリョウザンの街が、あの子達の故郷の森に1番近い街だから、そこに着いてから考えてみたら?交易都市だから宝の情報もあるかもだしね』


『へえ…次の街は交易都市か…確かに宝があってもおかしくはないか。まあ、2人の事は本人達の意思を尊重するさ』


『…そうね、それがいいわね。じやあ、私もそろそろ休ませてもらうわ…おやすみ』


『おう…おやすみ』


 そして久我はしばらくして、起きたマリルと交代して眠りについた。


 …………


 …………


 …………


 ……ガ…


 …ク……


 …クガ…


『クガ!』


 ───!?

 誰かの呼びかけに、眠りから目覚めた久我は驚き辺りを見回している。

 ザナスを出て次の街への途中で野宿をして、焚き火の近くで眠った筈だ…だが、周りを見渡しても焚き火もマリルもリリルもオリちゃんもいない…。

 それどころか景色なんてものは何も無く、ただ白い。真っ白な空間が広がっていた。いや…距離感が全く掴めないので、広い空間なのかもわからない。


 だが、久我にはこの空間に憶えがあった…そう、以前ローランの街の宿で寝ている時に、夢の中で剣聖と出会った場所──バルムンクの中だ。


『やっとお目覚めかい?』


「剣聖マナ・ブラックリーバ…」


『思考が追いついてきたようだね…だが、そんな他人行儀な呼び方はしないでおくれ…君と私の仲じゃないか』


 ……一体どんな仲だと言うのか。確かに肌身離さず持っているバルムンクの中に魂が封印されているわけだが、会ったことは今回で2度目だというのに…話した事ですら数回程度だ。

 久我からしてみれば、剣の師匠というのが一番近い気はするが、それでも親しい仲かと問われれば疑問符が付く。


『何やら頭の中でゴニョゴニョ考えているな?』


「いや…俺達そんな親しい間柄だったかな?と、思って…」


『…ヒドイなぁ…薄情だなぁ…この間も力の使い方を教えてあげたばかりだというのに…』


 ──!!絶剣・日輪のことか!?


「いや!その節は力を貸して頂きありがとうございます。お力添えがなければ、私は今ここにはいなかったでしょう」


『そうだろそうだろう?私としてもクガに死なれるのは困るからね…本当ならもっと力を貸してあげたいんだが、中々魂だけというのも不便でね…』


「いえ…助けていただけるだけでもありがたいです!…これからは師匠とお呼びしても?」


『…本当はマナさんって呼んで欲しいけど、師匠で手を打つか…』


「ありがとうございます!それで師匠…今日はどういったご用件で?」


 剣聖マナ・ブラックリーバは急に真剣な顔つきになり、身に纏う雰囲気をガラリと変えた。


『用件は2つ。1つ目は魔族についてだ』


「魔族…あのエリゴスとかいう騎士…」


『そうだ…。魔族は先の戦いでほぼ全滅したんだが…やはり力を蓄えて出てきたようだ…』


「バティンとかいう奴の話では、最近目覚めたとか言ってたけど…」


 バティンとかいう名の魔族の話では、目覚めたばかりなのでリベレイションとか言う技は使っちゃダメだとかなんとか…。


『リベレイション…魔族が全力戦闘する時に使う全魔力解放状態になる技だな。それにしても魔族の生き残りか…何人いるかは分からないが、全員手強いぞ』


「ですよね〜。ミネルヴァ含めた4人全員で何とか倒せたからなぁ」


『ミネルヴァ…女神の名前だったな。その女神含めお前達はまだ弱い…強くならなければ、この先の戦いで生き残れないぞ?』


「…力不足は、俺が一番痛感してますよ…」


『…。そこで2つ目の用件だ。今からクガに剣の稽古をつけてやる。私が教えられる事全て教えてあげよう』


「マジすか!?」


 久我は、剣聖マナ・ブラックリーバの提案にひどく驚いた。何故なら剣聖は以前、長い時間はこの空間で話せないと言っていた気がしたからだ。


『驚いている様子だな。私としても魔族が出て来たとなったら、無理をしてでも君に会いに来るしかない。君の腕が上がりバルムンクとの繋がりが強くなった今、ここを維持できる時間も増えた。なので私の魂が消滅するまで、稽古をつけられる時は会いに来よう。さ…時間がない、稽古を始めよう』


 そう言って剣聖マナは木剣のような者を二振り出現させ、久我に一振り投げて渡す。

 久我は剣聖の魂というスキル…バルムンクに剣聖の魂が封印されている事で、バルムンクを通じて剣の使い方を感覚的に理解したのだが、剣聖曰く、あくまでも基本的な使い方だけなのだそう。久我の運動能力があればこそ、基本だけであれだけの戦闘力があるという話だ。

 そして剣聖は、その基本ですら完璧ではないと言う…久我はその空間を維持出来なくなるまで、剣聖マナ・ブラックリーバに剣の稽古をつけてもらったのだった。



 ……………


 …………


 ………


 ……


 …


「───ぶはぁっ…はぁっ…はぁっ…はぁっ…」


 汗だくで飛び起きた久我に、火の番をしていたマリルがビクッと体を震わせた。


「ビックリしたぁ…兄ちゃん大丈夫かよ!?」


「…地獄かよ…」


「地獄?何言ってんの?」


「イヤ…こっちの話だ。俺ってどのくらい寝てた?」


「?小一時間てとこだと思うけど?」


 ……小一時間てマジかよ。あの永遠とも思える地獄のような時間が、たったの一時間?あの空間と現実の世界じゃ、時間の流れにかなりの差異があるのか…?

 前回あの空間に師匠に呼ばれた時は、そんなに時間の差を感じなかったんだけどな…。

 寝たらまたあの地獄の特訓かと思うと、寝るに寝られない…。


「おかしな兄ちゃんだな」


「すまんすまん。マリルにも話したことあるけど、俺の剣って剣聖の魂が封印されてるじゃん?」


「言ってたね〜」


「その剣聖に夢の中で呼び出されて、地獄の稽古つけられてた…剣聖がら時間切れにならなけりゃ、いつ終わったのやら…」


「…なんだよそれ?寝ぼけてんのか?」


「そりゃ信じられないよなぁ…」


 久我はマリルに信じて貰えないことに、もどかしさを感じつつも無理もないかと諦念に至る。

 信じてもらえないのは仕方がない。だが、寝ると再び地獄の稽古になる可能性が捨てきれない…とにかく今日はもう稽古したくない。

 寝ないで済むようマリルに火の番を代わってもらうのが得策だな。


「マリル頼みがある…」


「なに?」


「火の番を代わってくれ」


「さっき迄兄ちゃんがやってたのに?」


「うん…俺は今日はもう寝たくないんだよ…」


「……。別にいいけど、寝落ちとかやめてよ?」


「大丈夫!寝たくないから起きてるよ」


「…ならいいけど…頼むぜ?」


 そう言ってマリルは自分の毛布に包まり眠りにつき、久我は結局朝までマリルとリリルを起こすことなく、火の番を続けたのである。

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