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ザナス防衛戦1 開戦

「ショットガンフレア!」

「ファイアアロー!」


「「からの〜…」」


「「赤帝(せきてい)鳳凰殺(ほうおうさつ)!!」」


 炎が鳳凰を形作り虫の大群の中心で炸裂する。


 ──!!惜しい!鳳凰までは良かったのに!だが相変わらず威力はえげつないな。2人が別々に放った火魔法ですら散々虫を撃ち落としてたのに、協力魔法は次元が違う威力ですわ。虫の大群にポッカリ穴が空いたからね。


「いいぞ!バンバン撃て!」


「さすがにさっきのレベルのは連発出来ねえわ」

「無駄口叩かない!撃てるヤツから撃っていこ!」

「へいへい」


 双子の魔法の他にも、防壁の上に設置されたバリスタや冒険者達から魔法と矢の雨が虫の大群に降り注ぐ。

 防壁の上には大量の矢とポーラが手配してくれた魔力回復剤が大量に置かれている。随時補給しながら戦う形だ。

 ザナス全体の半分近い戦力が、この防壁の上で戦っている。到底無理だろうが、ここを越えられなければ最高の形だからだ。


 久我も魔法や弓矢で取りこぼした虫を腹目掛けてバルムンクの斬撃を飛ばす。だが連発が出来ないのでギリギリまで引きつけてから攻撃している。

 久我の担当は防壁を越えられてからが本番だからだ。

 ザナスの入口の門自体は固く閉じられ、容易く突破される事はないだろう。よしんば突破されても冒険者と鍛治師が配置されているから、すぐさま街になだれ込まれる事はないはずだ。

 そもそも敵は陸路はあまり計算に入れていないように空からのみ攻めてくる。


「ひ〜、キリがないなぁ」

「だから無駄口を叩かない。口を開くときは回復剤飲む時だけだよ!」

「へいへい」


 まだ2人も余裕が感じられる。今のペースなら保つ…と言いたいが敵もまだ全力ではないだろう。このまま行ければ一番なのだが…いつかは数に対応出来なくなるだろう。


『ミネルヴァ!今回も転送魔法か!?』


『おそらくそうね。だいぶ離れた所に大きな魔力を感じるわ』


 ──やはりそうか…敵は前回と同じ何者かに転送されてきている。発生源を叩きたいが、流石にこの数の魔物の下を走って行っては無事では済まないだろう。

 打ち止めになるまで耐えるしかないのだろうか?


「フレアサンバースト!」

「ファイアストーム!」


 魔力回復剤を飲みながら、火魔法を連発しているマリルとリリル。他の冒険者の魔法より明らかに威力が強く連発の回転も速い。……こいつら一体何種類の魔法使えるんだ?火魔法だけでもだいぶ多そうだが…。


『久我!後方の魔力が増大してる!』


『増大するとどうなる!?』


『転送陣が増えるか大きくなるかよ!』


『…マジか』


 ミネルヴァが言ったように虫の大群のはるか後方が激しく光り、転送陣が目に見えるに大きく拡大した。

 そしてそこから沸き出る魔物の数が飛躍して増える。


「空が黒いやんけ…」


「うわぁ」「ひぃぃキモい!」


 空を埋め尽くすほどの虫の魔物の大群だ。

 まるで地獄の釜の蓋が開いてしまったように感じた。


「これは…抜かれるぞ兄ちゃん」

「出来るだけ減らそう」


「虫どもがここを狙うようなら全員で下がるぞ」


 久我は防壁の上の人員に伝えて回る。

 それと同じくしてバリスタの矢が尽き始める。


 ──ヤバイな…バリスタは連射性能は低いが、威力が高く貫通性能も良い。弓使いの冒険者が一匹の虫に対して、数発矢を撃ち込まなきゃ倒せないのに比べ、バリスタは命中さえすれば確実に一撃で虫を倒している。ここでバリスタが止まると手数が足りなくなるのは明白だ。


「ほれ!矢の追加じゃ!」


 ポーラの指示でバリスタと弓用の矢が届けられた。運んできたのはサポートに回っているドワーフ達だ。


「助かりました!」


 矢の尽きかけたバリスタと冒険者に運ばれて行く。これであと少しは持ちそうだ。

 マリル達の下に戻ると相変わらずド派手に魔法を撃ちまくっている。


「フレイムシャワー!」

「ウインドブロウ!」


 マリルの放った火炎放射にリリルが風の魔法で火を煽って火力の上がった炎を広範囲に撒き散らしている。

 まるで火炎放射器で虫の大群を焼いているみたいだ。


 ──はて?いつものの協力魔法と何が違うのだろうか?2人で一つの魔法を使っているわけではないから、いつものとは違うのだろうが…訊ねてみると、協力魔法は魔力消費が激しいから、魔力を抑えつつ威力を上げるための工夫らしい。しかもマリルの提案で始めたみたいだ。マリルのくせに…こういう事だけは頭が回りやがる。だが今は前線の要はこの2人だ。

 迫りくる圧倒的物量に、双子の魔法が無ければとうの昔に防壁上空は抜かれていただろう。


「兄ちゃん、そろそろキツイぜ」

「私ももうすぐ限界です」


 魔力回復剤を飲みながら、魔法を連発していた2人から限界が近い事を告げられる。

 周りの冒険者達もおそらく似たようなものだろう…前線を下げなくてはならない…それは市街地上空での戦闘の開始を意味する――だが、ここで双子や他の冒険者やドワーフを犠牲にするわけにもいかない。ここにいる者達は、ほとんどが近接戦闘では無力に近い者達なのだから。


「仕方ない…防壁を放棄して下がるぞ!殿は俺がやる!マリル!リリル!最後に派手なの一発頼めるか!?」


「余裕だっつーの!」

「いけます!」


「双子が強力な魔法を撃ったら、その隙に他の者は撤退して後方に下がって休息をとってください!」


 久我は冒険者とドワーフに指示を出して撤退の準備をさせる。まさか抜かれる前に撤退する事になるとは…マリルとリリルや冒険者達が、予想以上に活躍して前線を保たせてくれたおかけなんだけど。


「とっておきの奴いっくぜ〜」

「皆さん、退避を開始してください!」


 マリルとリリルの魔力の高まりに、大気が震えだす。少し離れた所で見ていた魔法初心者の久我でさえ、今から放たれる魔法が超強力な魔法なんだとわかるくらいだ。

 2人は世界樹の短杖を一つに重ねて叫んだ。


「「ブレイズリボルバー・エクスプロード!!」」


 ──おお!?名前が残虐じゃない!意味はよく分からんが、これはマリル命名だな?なんだよ…採用されてるのもあるんじゃないか。


 2人の短杖から放たれた炎の弾は、押し寄せる虫の大群の先頭集団を通り抜け、中団くらいまで何のアクションもせずに飛んで行った…そしてその時、奴が叫んだ!


業火炎(ごうかえん)大爆殺(だいばくさつ)!!」


 ───ファ!?どうゆう事!?え?これが名前を

 合体させたってやつ!?それとも2人ともが名前を譲れなくて両方採用したの!?んで、やっぱ殺は入るのねリリル…。


 マリルとリリルが何故か2人で体を支え合い、何かに耐えるように踏ん張っている。

 それと同時に着弾した炎の弾丸が、映画なんかで見るミサイルの着弾点のように爆発した。

 爆発にワンテンポ遅れて、凄まじい爆風が防壁の上にいる者たちに、容赦なく襲いかかる。


「う…うわ!うわ…うわぁぁああぁぁ!」


 退避を始めていた冒険者達は無事なようだが、気を抜いて放たれた魔法を見ていた久我や退避が間に合っていなかったドワーフ達が後方に吹き飛ばされた。


「いてててて…」


 久我もドワーフ達も防壁の石壁にしこたま体を打ちつけていた。


「お〜い大丈夫か〜」

「リカバリー!」


 リリルの回復魔法がドワーフ達を癒していく。そして立ち上がったドワーフ達は我先にと防壁から退避して行った。


「お前らな〜…なんか自分らだけ踏ん張ってんなぁと思ったら…」


「わりぃわりぃ。ほらよっとリカバリー」


 マリルの回復魔法で怪我を癒してもらう。

 魔力回復剤を飲みながらリリルが、


「あれが今の私達の火魔法の最大火力です」

「そそ。あれが精一杯…俺達も少し後方で休むけどいいよな?」


「無茶苦茶な魔法のおかげで随分余裕が出来た。俺も下がるからお前らは休んでていいよ」


 久我は魔物が進軍して来ている方向に目をやると、そこに居たはずの魔物が半数近く減っており、だいぶ時間的に余裕が出来たと考えていた。

 双子と一緒に市街地に下がりながらふと考える――まだまだ転送陣から魔物は出てきているとは言え、双子の火力がここまで凄まじいのなら、戦力を防壁に集中して防衛線を張った方が良かったのでは…本当に正面から敵が攻めてくるとは決まっていなかったのだから仕方のない事なのだが。


 今回久我達が敷いているシフトは防壁は抜かれる事を前提に組んでいる。市街地戦も想定内なのだ。だが、もし防壁で食い止められるなら、それが最善なのは明白だ。


「たらればを言ったらキリがないか…」


 双子を後方に下がらせ、市街地の高台に登った久我は、次に備えバルムンクを握りしめながら呟いていた。

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