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神様のボードゲーム

 

「は?ボードゲーム?」


 異世界くんだりまで来てボードゲーム?この美人な神様と2人で?

…いや2人でというところは吝かではないんだけど、ボードゲーム?どゆこと?


 俺が1人テンパった思考の渦の中で溺れているとミネルヴァがこう口を開いた。


「2人でと言っても一緒にやるわけじゃないんだ。いや、一緒にはやるんだけどやらないんだよ」


「パードン?」


 何言ってるか全くわからねぇ。よし水を飲もう。喉を潤して落ち着こう。

 俺は徐に水差しに手を伸ばし一気に水を飲み込んだ。


「うーん…これは実物を見てもらった方が早いかなぁ。久我はもう立てそう?立てないなら肩貸すわ。」


 そう言われて俺はベッドからおずおずと立ち上がろうとする。

 すると、まだ足に上手く力が入らずバランスを崩して倒れそうなってしまった。


「おわっあぶね」


 俺がそう言うより早くミネルヴァが俺を支えてくれていた。目の前に彼女の美しい顔があり目のやり場に困る。


 やべぇ。やっぱり超美人だよこの人。

 うへぇ〜メチャメチャいい匂いするよ。

 なんて野暮な事を考えている間に足に力が戻ってきた。


「あ、あざす。も、もう大丈夫す」


「なんで急にどもってんのよ」

「ど、どもってねーし」


「ふ〜ん…ま、いいや。まずはシャワーでも浴びて、そのクシャクシャの顔を直しておいで」


「へ?は、はい。あざます。」


 そんなにクシャクシャなん?今の俺…


「そこがバスルームよ」


 そう言って部屋の隅にあるピンクのドアを指差す。


「じゃあ、お借りします」


「着替えも用意してあるから」


 準備のいいこって。男物の着替えなんかもあるんだな…なんて事を思いながらバスルームへ。


 ――――――――


「なんじゃこりゃ…」


 洗面台の鏡で自分の顔を見て驚く。

 髪はぐしゃぐしゃ、目は泣き腫らして真っ赤で鼻水とヨダレで口の周りはガビガビになっていた。


 こんな顔でさっきまで、あんな美人なミネルヴァと話してたのか…急に恥ずかしくなり、そそくさとバスルームへ入り、シャワーの蛇口を捻る。


少し熱めの湯を出し頭から流していく。

 気持ちがいい、生き返るような気分になる。まぁ実際異世界転移する時は死ぬと思ったしな。2度と味わいたくない。


「あれ?帰る時もアレになるのかな…やだなぁ。」


 そういや俺は気を失ってベッドに寝かせられていた。でも気を失う前の朧げな記憶を辿ると、寝室ではなかったはずだ…微かに見えた景色はあの部屋ではなかった様に思う。だとしたら誰が運んでくれたのだろう?他にも誰がいるのかな?あとで聞いてみるか…


 そんな事を考えながら俺は一時の安らぎに身を任せた。


 ――――――――


 バスタオルで体を拭きながらバスルームを出ると洗面所にはミネルヴァが言ったように確かに着替えが用意してある。そこには下着といかにも冒険者風なシャツとパンツ、そしてブーツが置いてあった。

 俺に冒険者にでもなれって言うのかよ…と独りごちながらそれらに着替え、半乾きの髪をササっと整えてから寝室に戻る事にした。


「お風呂ありがとうございました。」


「気にするな、私のせいで汚れてたのだから」


 そう申し訳なさそうに言いながらミネルヴァは手を振った。


「さて、では行こうか」


 そう言って立ち上がるミネルヴァをただ見つめる。やはり美しい…恐ろしいほどの美人だ。スタイルも良すぎだろう。


 俺が彼女に見惚れていると、ミネルヴァは俺が何処に行くのか忘れたと思ったのか


「もう忘れたのか?ボードゲームを見に行く話だっただろ?」


 そう言い微かに笑っていた。

 


「じゃあついてきて」


「う、うす」


「クスッ…変なの」


 そう言いながらミネルヴァはこの部屋の真っ白な扉を開き廊下に出て行く。俺も覚束ない足取りでミネルヴァを追いかけた。


 長い通路だなぁ、ほかにあんまり部屋も無さそうなのに。なんて事を考えながら俺はバスルームで思った疑問をゆっくり黙々と歩くミネルヴァに投げかけた。


「あの…ミネルヴァ…さん」


「何よ急に改まって、ミネルヴァでいいわよ」


 さっき見惚れてしまっていたのを悟られまいとして、逆に変に畏まってしまった。


「じゃあミネルヴァ、ここには他に神様や人はいないの?誰も見かけないんだけど?俺を誰がベッドに運んでくれたの?」


 するとミネルヴァは少しだけ寂しそうに


「ベッドに運んだのは私よ。神だもの、余裕よ。そして他には誰もいないわよ。創造神様が亡くなられた時に、仕えていた侍女達も亡くなったから。ううん、正確には侍女達は創造神様に造られ創造神様の魔力で生きていたから、創造神様が亡くなられたら程なくして消えてしまったの」


 なんとも言えない空気になってしまった。

 完全に地雷踏んだ気がする。


「でも完全に1人ってわけじゃないんだ。中々顔を合わせることはないけど、もう1人いるよ。それに創造神様が亡くなられてからそんなに時間が経ってる訳でもないから、大丈夫。それに今は久我もいるしね」


 その顔で満面の笑みでそう言われると…

 アカン、惚れてまうやろー!

 …相手神様だけども。


「それに元々、創造神様、侍女たち、私ともう1人しかいなかったから滅多にほかの人に会うこともなかったから。基本は1人だったし。」


「え?そうなの?男いないの?」


「だからさっき綺麗なんて言われ慣れてないって言ったじゃない。」


「男物の着替えがあったから、てっきり…」


「ああそれか。神だからね。着替え用意するくらい余裕余裕」


「神様スゲェ」


「それに創造神様以外の男の人に会ったのも久我が初めてよ」


 そうだったのか…え?これチャンス到来してんじゃね俺。…ってアカン相手神様や…とほほ。でもなんで男の神様とかいないんじゃろ?


「女しかいないのは創造神様の完全な好みね」


 …創造神スゲェ。己の権力MAXに使ってるわ。


そんな事話しながら15分くらい歩いたのかな?長すぎじゃね?この廊下。

そしてやっとこさたどり着いた廊下の突き当たりにあった紅いドアをミネルヴァが開けてこう言った。


「ここがそのボードゲームがある場所よ。さ、入って」


 俺はゴクリと唾を飲み込み、促されるままその部屋に入っていった。

 そしてその目に飛び込んできたものは…


「スッゲェェ!デカスギィ!なにこれ?なんなんこれ?」


 途方も無く大きいボードゲームだ。ボードゲームなのかこれ?デカすぎてワカラン。でも日本でいうスゴロクや人生を渡り歩くゲームみたいにマス目が刻んである。違うのはマス目になにも書かれていないことだ。それを不思議に思っていると


「マス目に駒が止まったら指示内容が浮かび上がるのよ。」

「へぇ素敵」


 そして意を決したような表情でミネルヴァが口にした事に俺は度肝を抜かされることにる。


  「このボードゲームの駒は…」


 得もいわれぬ不安感に体が押しつぶされそうなる


 ミネルヴァはその美しい指をゆっくりと動かし、俺を指しながら


「このゲームの駒は、久我。あなたよ」


 そうハッキリと言い、その透き通る海のような青い目は俺の目を捉えて離さなかった。



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