表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/59

ネーミングセンス

 

 夕食を終え、ミネルヴァが新たに作ってくれたリビングスペースで、家族の団欒の様なものを、久我たちは満喫していた。


 1人用ソファに座るミネルヴァと、テーブルを挟んで同じ1人用ソファに座る久我。

 そして3人用ソファに並んで座るマリルとリリル。オリちゃんはリリルの膝の上で寝ている。


 ──言い出しっぺは久我だった。


「なぁマリリル」


「なんだよ兄ちゃん。名前一纏めにするなよ」


 マリルとリリルが膨れ顔だ。


「前から気になってたんだけど、お前達の合体魔法っつーの?2人で撃つ強力な魔法あるじゃん?あれの名前は誰が考えてんの?」


「あ、それ私も聞きたい」


 ミネルヴァが乗っかってくる。やはり気になるよな。


「姉ちゃんまで何だよ急に」

「名前は2人で案を出し合って、いっせ〜の〜でで決めてるんです」

「だいたい採用されるのはリリルのだけどな」


 ────え!?


「2人の案を合体させる時もあります」


 ───イヤ、聞き間違いか!?

 久我はミネルヴァと目を合わせる。そして、ミネルヴァに聞けとばかりに顎で指示を出す。


「え〜と…マリル。聞き間違いかもだけど、採用されるのは、どっちの候補って言った?」

 ミネルヴァがキョドキョドしながら聞く。目は泳ぎっぱなしだ。


「だから〜、リリルのだって」


 何故か残念そうなマリルと、勝ち誇った顔はリリルだ。


 ……あの物騒な名前はリリルが考えてる──だと!?

 あの凶悪なネーミングセンスの持ち主は、リリル

 ──だと!?


 ミネルヴァを見ると、口をパクパクさせたまま言葉が出てこない様子だ。

 ――ミネルヴァよ…俺たちの気持ちは今、確実に1つだぞ。


「いつも強そうなカッコイイ名前を考えてるんです」


 ───!?アレがカッコイイ…だと!?

 リリル…そんな可愛い顔して、あの物騒な名前をカッコイイなんて言っちゃダメだ!

 一応、マリルに確認しておこう。


「そ…そうか。リリルが考えてるのか…す、凄いな。ちなみにマリルは、どんなん候補に出してるんだ?」


 ミネルヴァが激しく首を縦に振っている。


「ん〜と、この前トロールに使った風魔法の時は『エアロレーザー』で火魔法の時は『タワーインフェルノ』…だったかな」


 ───!!またもや久我とミネルヴァと思いが1つになる。

 圧倒的にマリルの方が、ネーミングセンスあるじゃないか!というか、名前を合体させてる要素は何処だよ!?

 念のため、水魔法のも聞いておこう。


「最初の水魔法のヤツ?アレは何だったかなぁ…あ、そうそう『ウォータープリズン』だ」


 ――やはり合体要素はない…そしてマリルの方がセンスがいい。だがこれはあくまでも俺の感覚でだ。

 いや、ミネルヴァもそう思ってるはず…だけど2人は、いっせ〜の〜でで決めてると言った。

 …つまり、マリルもリリルの案に賛同してるという事。

 ダメだ…マリルも自分が思いつかないだけで、リリルの案の方が良いって思ってる…やはりこの双子のネーミングセンスはどこかおかしいのだろう…エルフの感覚では、これが普通なのか…。


 ミネルヴァに目をやると、まだ口を開けて固まっている。

 ――そうなるよな…あの可愛いリリルが、あの物騒な名前付けてるんだもんな…やたら『殺』ってついた名前を…。しかも本人はカッコイイ名前って言ってるし…日本人の俺的には、カッコ悪いとまでは言わないけど、とにかく物騒過ぎるんだよな…。


 久我とミネルヴァが困惑しているのに気付き、リリルが暗い顔になる。


「お姉ちゃん。私がつけた名前…変…ですか?」


 リリルが涙目でミネルヴァを窺う。

 慌てふためくミネルヴァは滑稽だ。


「そ、そんな事ないよ?私は素敵な名前だと思うな〜。だから誰が付けてるのか聞きたかったのよ、私はね!」

 ミネルヴァが久我をチラリと見ながら、リリルの口撃を躱す――


 ───汚ねえ!そんな言い方したら、俺が疑われるだろ!


「…お兄ちゃんは?」


 ──やっぱりキタ!!


「オ、オレ?オレモ…カッコイイッテオモッテルヨ」

 酷い棒読みになったが、何とか取り繕う。


「良かった…」

 リリルが心底ホッとした顔をする。


「ねえ久我、何で今カタコトだったのよ?」


 ミネルヴァが、ここぞとばかりに俺に全てを擦りつけようとしてくる。

 ──女神の癖に、やり口がセコイ…セコすぎる。


「べ、別にカタコトじゃねーし。あ、そうだ!俺の技にも名前つけてもらおうかな〜…なんてね。」


 久我は動揺を隠せず、その場凌ぎに適当な事を言ってしまう――その結果、


「お!?いいじゃん。名前俺たちでつけてやるよ」

「そうね、カッコイイのつけてあげる」


「──!?べ、別に無理に付けなくていいよ。一応、『絶険・白夜』って名前あるし…つ、次に出来た技に付けてくれたらいいから…」


 ――アカン…双子はもうその気だ。もう考え始めてる

 。助けを求めてミネルヴァの方を見るが、ミネルヴァは処置無しとばかりに、目を閉じ首を振っている。


 その間にも双子は盛り上がって、候補を出し合っている…時々物騒な技名が聞こえてくるが、気のせいだろう…。


「なぁ…最終決定権は、俺にあるんだよな!?」


 ──そう…どんな名前を候補に挙げられるようが、決定権さえあれば問題はない。


「はぁ?」「お兄ちゃんに決定権はありません」

「そうよ。2人がせっかく考えてくれてるんだから」

 ミネルヴァがニヤニヤしながら便乗する。


 ───こんのクソ女神がぁ!悪ノリしやがって!

 どうしよう…凶悪な名前に、無理矢理変えさせられてしまいそうだ――助けて神さま…ダメだダメだダメだ!その神様に嵌められて、こんな状況なのに神さまに頼ってどうする。

 考えろ…切り抜けるんだ…。


「「いっせ〜の〜で!!」」


「お兄ちゃん、決まりました!」


 ───ゴクリ──。


「結果発表〜!」


 空耳なのか?ドラムロールが聞こえる気がする。


「撃殺フラッシュです!」

「はい却下」

 一瞬の間もおかずに却下する。躊躇いなど無い。


 撃殺フラッシュは無いわ〜。


「却下ってなんだよ、俺達がカッコイイの考えたのに」

「お兄ちゃん…ヒドイ」


 いやいや、ヒドイのは君達のネーミングセンスだから。

 何故がミネルヴァまでジト目で見てくるし――。

 だが撃殺フラッシュか…合体させてるぽいな…今まで合体要素なんて一つも無かったのにだ。

 一応どんな案があったのか聞いてみるか。


「フラッシュセイバー」

「撃殺刃」


「すぐこの二つに絞られたんだぜ?」

「どっちも捨てがたいから、合体させたの」


 ……まあどちらも微妙だ。ここからどうやって撃殺フラッシュに改名するのを防ぐかだが…


「良い名前…付けて貰えたじゃない…ぷっ…」


 ミネルヴァは今にも吹き出しそうに笑いを堪えている。

 ──!!よく見ると太腿をつねっている。そうでもしないと吹き出してしまうのだろう。

 ――ここだ!…このチャンスを逃したら、改名の流れは変えられん。


「おや?女神様…太ももをつねってどうなされました?何か笑いでも堪えているように見受けられますが?」


 ミネルヴァは久我の思わぬ反撃に、体をビクッとさせる。


「お姉…ちゃん?」


 リリルの疑いの目だ。ふふふ…俺を嵌めた罰だ…リリルを悲しませたという十字架を背負うがいい。


「え?ちょ…何の事かな?ちょっと久我!」


「これはこれは…女神様はひどく動揺なさっている御様子」

 ──くくく…。


「なんだよ、結局姉ちゃんもバカにしてんのかよ」

「お姉ちゃん…酷い…」


 マリルは膨れて、リリルは今にも泣いてしまいそうだ…少し可愛そうだが、撃殺フラッシュへの改名の流れだけは、回避させてもらおう。


「違う!違うの!名前で笑い堪えてたわけじゃないの!」


 ──くくく…無駄なあがきを…。


「久我よ!久我の顔見てたら…ね!わかるでしょ!?」


 ──オイ。


「わかんね〜よ。兄ちゃんの顔が面白いのはいつもの事だろ!?」


 ───コラ。


「そうだよ!お兄ちゃんはいつも面白い顔してるもん!お姉ちゃんは、私達の付けた名前笑ってたんだ!」


 ────リリルまで…。


「違う!違うのよ!?久我は確かに、いつも面白い顔してるけど、特別変な顔してたから…」


 ─────もういい。

 久我は1人静かに立ち上がると、リビングのドアの前に音もなく移動して、


「お前ら酷すぎ…面白い顔してて悪かったな」


 そう言い残し、涙目になってリビングを出て行った。

 ――残された3人は、飛び上がるように立ち上がり慌てて久我を追いかけた。


 残されたオリちゃんだけは、何が起きたかわからずにまた眠りについたのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
押してもらえると励みになります→小説家になろう 勝手にランキング
ツギクルバナー
cont_access.php?citi_cont_id=781306879&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ