閑話
眩しい光がおさまると、さっきまで立っていた男の姿はもうそこにはなかった。
──頼んだわよ久我──
自分勝手な都合で、違う世界から召喚した男に全てを託す。こんな身勝手な事はない。
ただそうするしか道がなかっただけだ。
神様なんて名乗ってても、自分に出来る事は数少ない…せめてあの男の力になれるよう、負担を少しでも軽くしてやれるよう、サポートに全力を尽くそうと誓う。
――まず帰ってきた時に、ゆっくり休める様に、個室を作ろう。
時折入る念話で気のおけない会話をしながら、作業を進める。
神界にあるこの建物は、私たち神の魔力である程度自由に作り変える事が出来る。いくらでも住みよくしてあげるんだから。
──ボードゲームの指示が仲間を作る事を示唆していたから、何人連れて帰ってくるかは、分からないけど、みんなで食事を食べれる部屋も必要だよね。
そう思い急ぐ必要もないのに、大慌てでダイニングルームを作る。
作業を進めながらも、下界に行ったあの男の動向は常に把握している。今では念話も数少ない楽しみの一つだ。
昼間からお酒飲んだり、何もせず食事をしてたり、しょうもないところもあるけれど、意外にも異世界生活を満喫しているみたい。
本当なら指示をクリアする為に全力で突き進んで欲しいのだけど、多くは望めない。
神であっても、こちらはお願いしている立場なのだから。
あら?意外にも多くの仲間を見つけたようね。悲しい過去がある子達みたいだけど、思ったよりあの男は保護者してる。思ってたよりも良い奴だ。
私は私で個室を増やさなきゃいけないわね。見た事ないスライムの事も調べておかなくちゃ。
そろそろボードゲームを確認しよう。
「あは…ふふふ。やっも1つ目達成ね」
指示は無事にクリアしたみたい。マス目が淡く光ってる。
いつあの男が帰るって言ってもいい様に、転送魔法の準備をしておかなくちゃ。
あの可愛い双子にもプレゼントを用意しておこう。
あの子達、やっとこっちに帰ってくるみたい。
早く来ないかな!?楽しみだわ。