プロローグ
遅筆ですがよろしくおねがいします。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「──ぶはぁっ、ハァッ、ハァッ、ぐ…ハッハッハッハ」
溺れる意識の中から、なんとか呼吸をした。
胸の鼓動が乱れる、息が乱れる…凄まじい動悸と胸の痛みで顔が歪む。
顔の毛穴という毛穴から汗が吹き出る。
あまりの苦しさに涙が頬をつたう。
痛みをこらえて歯をくいしばる口からはヨダレがたれている。
だが今はそんな事を気にしている余裕は俺にはない。
「なん…なんだ、この胸の苦しみは…」
「一体何が…あの時に…」
どれくらいの時間を激しく動悸と胸の苦しみに耐えていたのだろう…。
永遠とも思える苦痛の渦の中で微かに周りの景色がぼやけて見えた。
微かに見える見覚えのない景色の中、誰かがこちらの様子を伺っているのが見えた気がした。
「ここは…どこだ…?お前は…だれ…だ?」
掠れる視界の中そう一言だけ呟いて、俺の意識は闇へと沈んでいった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「すまない…せめて今は、今だけは、ゆっくり休んでくれ…」
そう独り言を呟き、汗と涙と涎にまみれ、力の抜け切った男を抱きかかえ、寝室へと歩みを進めた。
歩きながら、男の顔見つめ、これからこの男に降りかかる運命を、いや、災難と呼んだ方が正しいのかもしれない。
その災難の果てにあるものに想いを馳せた。
寝室のベッドに男を寝かせ、その横にある椅子に腰をかける。
そして海のように澄んだ青い瞳で、力なく横たわる男を見つめる続ける。
「許してくれとは言わない…こうするしかないんだ…」
そう独りごちながら乱れた男の前髪をそっと直す。
そして静寂の中、ただただ時間だけが流れていった…
◇◇◇◇◇◇◇◇
「ふわぁぁ…ねみぃ…」
欠伸と共に本音が混じる。
やりたくもない筈の受験勉強の合間に、当たり前のようにスマホをイジる。
将来の夢があるわけでもない、勉強したい事があるわけでもない。特に勉強が出来るわけでもない。
ただ周りの奴らが進学するから。
親や三つ年上の姉貴が進学するべきだと言うから。
そんなん他人の考えで大学進学を決め、イヤイヤながらに受験勉強をしていた。
その程度の動機ではやはり勉強が手につくわけもなく、すぐにスマホに手が伸びる。
「なんかおもしれぇことないかな〜」
「だいたい今さら勉強してもおんなじだっつーの」
スマホをイジりながら独りごちる。
勉強机の椅子の背もたれに体重を預けながら、適当に投稿小説サイトに目を配らせる俺は久我彰利(くが あきとし)18歳。受験を間近に迎えた、勉強普通、運動そこそこの高校三年生だ。
「なんか暇つぶしになりそうな、面白い小説あがってねーかなぁ」
そう言いながら週間ランキングの中から面白そうな小説を探していく。
ページをスクロールさせながら、ざっとタイトルに目を通していく。
「う〜む…読んだことあるのか、似たようなタイトルのしかなないなぁ」
新作でも探すかと、新掲載のページへとスマホを操作する。
ジャンル分けされたページをざっと見しながらスクロールしていく。
「気を引くタイトルなし!」
そう言ってサイトを閉じようとした時、ピコン!と新投稿の小説があがった。
『神様のボードゲーム?』
いつもなら気にも止めないだろうタイトルの小説だが、その時は何故か妙に惹かれた気がした。
「触りだけ読んでみるか…」
タイトルは[神様のボードゲーム]ね…ハハッありきたりと鼻で笑う。
作者は…と、[ミネルヴァ・テラース]さんね。知らない名前だな、新人さんかな?はたまた外国人作家さんかな?
そんな少し小馬鹿にしたような思いを持ちながら作品概要に目をやる。
ふむ…日常を持て余した主人公が異世界に召喚されて神様のボードゲームに無理矢理付き合わされるか…ありがちだな…そんな感想しか浮かばない。
でも一応読んでやるか!なんて上から目線でプロローグと書いてある場所をタッチする。
『ふわぁぁ…ねみぃ…』
<欠伸と共に本音が混じる。
そんなやりたくもない受験勉強の合間に、当たり前のようにスマホをイジる。>
<将来の夢があるわけでもない、勉強したい事があるわけでもない。特に勉強が出来るわけでもない。
ただ周りの奴らが進学するから。
親や三つ年上の姉貴が進学するべきだと言うから。
そんなんで大学進学を決め、イヤイヤながらに受験勉強をしていた。>
<やはり勉強が手につくわけもなく、すぐにスマホに手が伸びる。>
「はは…受験生なんてガチ組以外こんなもんだな」なんて軽く共感する。
『なんかおもしれぇことないかな〜』
『だいたい今さら勉強してもおんなじだっつーの』
「………」
読み進めていくと不気味な既視感を覚える…手が小刻みに震えだした。
気のせいだろう…偶然の一致てやつだろう…じゅ、受験生あるあるだからな。
なんて自分に言い聞かせながら、ドクンドクンと耳に煩く聞こえてくる早く激しくなる鼓動をなんとか鎮めようした。
「とにかく、つ…続きを読もう」
不思議と読むのをやめようとは微塵も思わなかった。
頬を汗がつたう事には気づいてはいなかった。
<スマホをイジりながら独りごちる。
勉強机の椅子の背もたれに体重を預けながら、適当に投稿小説サイトに目を配らせる俺は久我彰利(くが あきとし)18歳。受験を間近に迎えた、勉強普通、運動しか取り柄がない高校三年生だ。>
「──!!」
「!?」
「これ…俺か?俺の事じゃねーか…、さっきまでの俺じゃねーか!!」
そこで初めて俺は自分が滝の様に汗をかいている事に気付いた。
「な、なんなんだよこれ」
「わけわかんねーよ!」
ガタガタと震え続ける手に力を入れようとする。だがまるで自分の手じゃないかの様に震え続ける手に力を入れることが出来ない。
冷や汗が止まらず手汗もグッショリだ。
だがその手はスマホを離す事はない。
「うわぁぁぁあああ」
なんとかスマホを離そうと震え続ける手を振り回して、何とかスマホをベッドの上に投げつけた。
「はぁっはあっはぁっ」
乱れる呼吸。激しく響き続ける鼓動。止まらない冷や汗。耳鳴りまでしてきやがった。
「なんなんだよ…これは」
訳がわからない。急に1人でいる事が怖くなった。
そうだ、隣の部屋に姉貴がいる。姉貴に話を聞いてもらおう。1人でいるよりかはマシなハズだ。今はただただ1人でいる事が怖かった。
椅子から崩れ落ちるように床に這いつくばり、笑い続ける膝に自分の拳をぶつける。
「立て!立てよ俺!」
そんな願いも虚しく立つ事は出来なかった。力の入らない体で這いずるようになんとか部屋のドアノブに手を掛けようとしたその時ー
『ドグン!バグン!ドクンドクン!!』
「――んっ!ぐぁっ!」
一際心臓が大きく鼓動して、そしてリズムが狂いだした。
――苦しい。呼吸がしづらい――
「──死ぬ…のか?」
そう一言だけ呟いて、激しく鼓膜を殴り続ける心臓の鼓動と激しい耳鳴りの中に俺の意識は溺れていった…
誤字脱字などありましたら報告お願いします。
冒頭を、少し変更しました。