ACT.92 犯罪組織ヴィシュヌ殲滅戦3 小柳は命じる
機関室に向かってる間、船が動き出たと思ったら、何かを破壊するような爆発音がコンテナ船に響き轟く
その騒ぎで船の船員が騒ぎだし、異変に気付く。船倉で騒ぎが起き、侵入者がいるということを
数名がマシンガンを持ちながら船倉に向かって行くところを見かけると、想定外の時点が起きているのか
神也やオウガに無線の応答がない
「アイ、そこから状況はわかるかしら?」
〈いえ…ですが、異様な事態であることは確かでしょう加奈様〉
どうしたものか、このまま機関室に向かうべきか…それともここで船倉に向かう連中を足止めするべきか、選択を誤れば私達の命はない
悩んでる時間がない中で、一つの策を思いつく
「アイ、そこから船はどのぐらい離れているからしら?」
〈まだ港から視認出来るぐらいには…〉
「視認可能な距離なら、ヴャルキリの性能を持ってすれば貨物船まで来れるわね?方法と手段は任せる、アイは貨物船に来て、敵の目をそちらに向けて頂戴」
〈それを待っていましたよ加奈様、なら甲板から侵入して注意を引きましょう〉
…甲板から?
「ちょっと待てアイ、アナタ一体何をする気なのよ!?」
〈任せてください、こういう派手なことをやりたかったんです〉
そういうと無線の切るアイ。甲板からって…一体どうやるつもりだ?
ヴャルキリには一応、ブースターを使用して短時間であれば水上を滑空するように走れる機構があるが…甲板となると飛んでるしか…
「まさか、アイの奴!?」
上の方、甲板で爆発音と激しいスキール音が響いていた
少し時間を遡って
加奈様の言う通り、手段を任されたのでこのマシンの使える手段を可能な限り堪能…使って二人を助けよう、決して私の興味とか、厨二心とロマンがくすぐられてコレを使いたいとかではない
周囲のコンテナや、資材をワイヤーで破壊したり、体当たりで動かし、坂道のスロープを作り出す
〈計算、方向…着地地点予測完了〉
レクサス、クラウン、C-HR、そしてGT-Rのヴャルキリに比べ、加奈様の与えられたWRXヴャルキリは新型であることを知ったのだが、それは性能にも表れており、新型のパーツや武装の装備、そして…いや、今はここでは語るまい、アルストリアが眠っている間はコレを使うことはない
話を戻せば、ブーストモードも異なるブースターを積んでいることで上位のブーストモードを搭載されている、だからこそ可能な作戦
最高速度が叩き出せる距離まで、スロープから離れ、一気に加速し…そのモードの名を呼ぶ
〈スパイナルブーストモード展開!!臨界までカウントスタート!!……これを一度言ってみたかった!!AIとしての夢叶った!!〉
スパイナルブースター、螺旋状にブースト噴射し、常識外れの加速をするWRXヴャルキリ
ブーストの噴射による風圧が周囲の倉庫や建造物が震えさせ、車体に空気の壁を切り裂くように翔ける
車体フロント部をわずかに浮かせ、スロープに駆け上がる頃には時速500㎞/hを越え、カタパルトのように貨物船に向かってカッとんでいき
〈グラウンドファン最大稼働!着地点計測完了〉
甲板に着地地点にあったものを全て蹴散らして、貨物船に到着する
騒ぎを起こすために、WRXヴャルキリで走り回り、ワイヤーショットや車体の体当たりで手当たり次第、周囲の物や設備を破壊しまくる
現在、貨物船下層部
「マジで甲板まで来ちゃったよあのAI」
一体どんな方法を使ったのかは、後から問いただすとして、甲板での騒ぎに構成員達が上の方に向かっていき、船内アナウンスもそのことで、急行するような指示が飛んでいる
「これで、機関室や船倉方面は手薄か…」
引き続き機関室に向かおうと思った矢先に、通信が入る。今度はオウガだ
〈加奈、そっちは何が起きてるか状況を知りたい〉
「甲板でアイが暴れてるわよ。そっちこそ何があったのよ?神也とも連絡が取れないけど…?」
オウガの通信で、神也が置かれている状況を把握する
とりあえずは須田兄妹の救出には成功したが、神也がサイボーグと交戦中とのこと、助太刀に行くべきかと思ったが
〈いや、神也一人で相手していた方がいいだろう、助太刀はかえって足手まといになりかねん。素手でヴァルキリにダメージを与えるようなサイボーグだぞ?〉
「そんな相手を神也がなんとか出来るとでも?」
〈彼の強さは、私も貴女もよく知っている筈だ。死にはしないさ。ただ、敵側の援軍は避けたいな〉
「…足止めしてもいいけど、船は動いているのよ?流石に止めないと、港から離れるのは私達にとってもよくない状況よ?どうする?」
〈問題ない、今解決する〉
向かおうとした機関室の方から、激しい爆発音が轟き、コンテナ船全体が大きく揺れる
〈…機関室破壊完了、沈むことはないが、これで奴らの船はもう動かん〉
「レールガンによる狙撃か…そうか、アンタはシステム外だからその武装を使えたわね…色々言いたいことはあるけどオウガ?」
私が機関室にいたらどうするつもりだったんだっと
〈生体反応と端末で位置がわかっていた。仲間を巻き込むようなヘボなことがAIがすると思うか?〉
「まったく…アンタもアイも、勝手に判断して動くわね」
〈だが、君たちの助けになっているだろ?〉
「違いないわね」
呆れもあるが、皮肉を込めて言う
〈だが、私が出来るのはここまでだ。さっきのガーネェヤのスピニングナックルによる損傷で装甲以外にもダメージが出てきてる。ブースト使用と、レールガンの発射の反動でエンジンと駆動系に支障が出ている〉
「了解、ここからは私達にまかせなさいオウガ」
ハンドガンを用意し、戦闘態勢を整え、船倉方面に向かった構成員達の方向に向かう
甲板では、AIアイが操るWRXヴャルキリが走り暴れ、構成員達を蹴散らし、施設を片っ端から破壊しまくり
船内で加奈と構成員達による激しい銃撃戦が行われ、一方的に加奈が構成員達を撃ち倒し、怒号と悲鳴が上がる
そして、船倉では人の形をした二人が、常識外れな戦いを繰り広げていた…
時間は、神也達が貨物船に着いた頃
市民会館地下、特務機動隊拠点
島田共に、神也に返り討ちに遭いに、スタンナックルで気絶させられてどのぐらい経ったか
何かの気配を感じて、目を覚ます
「見事にやられたようだな風間。どうだ?ホークマンの子供は?」
「…ご覧の有様ですよ指令官…いや、小柳さん。あなたの筋書き通りの展開ですかね?」
小柳さんの手を借り、その場から立ち上がる
「私の思惑をわかったのか?」
「いえ…ただ、らしくない行動に、公安の動きといい…神也達を勝手に動いてもらった方が都合が良いのかもしれないという直感に委ねたんですよ。まあ、少し痛い目を見ることになりましたがね」
「悪かったな、こちらも裏付けを取るのに時間がかかってな…まあ、この男がこの場に来てくれたのが助かったが」
小柳が指を指す方向を見ると、手錠で拘束されたまま気絶しているピースと名乗る男とその部下二名
「ピース…いや、公安部の駒度保平。警察組織の公安に属しながら、奴はヴィシュヌと繋がっていた。前科者の窃盗犯の詳細データを得ていたのは奴が流し、さらに捜査のかく乱と隠蔽工作も行っていた。ヴィシュヌが日本でバレずに活動出来ていたのは全て奴とそれに協力させられた者達の仕業だ」
「まさかだと思っていたが…ホントに警察内部に協力者がいるとは」
「今回の出動要請は警察上層部から、犯罪組織に情報を流している者がいるという疑惑から始まったんだよ。もっとも奴らにとっては我々特務機動隊の存在は誤算だっただろう」
駒度の反応から、特務機動隊の存在は知っていても半信半疑だっただろうか
特務機動隊の事情を知らなかった、わかっていなかったのはそういうことなんだろう
「それで、小柳指揮官。我々特務機動隊はこれからどうします?悪い子供たちを回収しに行きます?…それとも…」
小柳は改まって、指揮官としてオレに命ずる
「特務機動隊指揮官として命ずる。隊長風間、気絶してる者たちを叩き起こし出撃用意をしろ。特務機動隊、犯罪組織ヴィシュヌを壊滅せよ!」
「…その命令を、待っていました指揮官」




