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走劇のオッドアイ  作者: かさ
ダークサイドシナリオ編 特務機動隊、自動車窃盗団を壊滅せよ
93/121

ACT.86 加奈の作戦

須田良輔、須田莉々は、親族恵まれなかった

両親を事故で亡くし、親戚中をたらい回しにされた挙句、誰も保護者になってくれず、遺産も奪われ、経済的に余裕がなかった

当時、高校生だったオレと幼い莉々が、大人を頼れずに生きていくには、犯罪に手を染めるしかなかった、それしかわからなかった

学はなく、決して頭が良くないが、手先が器用なオレはその腕を買われ、自動車窃盗で生計を立てていた

高校を中退して、莉々を食わせる為に…莉々が真っ当な生活を送らせる為と信じて

大好きな車を、誰かの大切な物を奪って、生きていかないといけない…明らかに人として逸脱した行動、最低な行い

無論、莉々には悟られなように…なまじ自分に善意のような良い心がどこかにあったのが苦しかった、罪悪感に押しつぶされそうになる…罪悪感なんて感じないぐらいの悪党になりたかったが、そんなことは叶うことがなかった

そんな悪事が何度も何年も続くわけがなく、窃盗団ごと摘発され、オレも警察に逮捕されてしまう日が来た

実刑は免れることもなく、刑務所に入れられる

どこか安堵というか、なにか解放されたような気分だったが…莉々はそれを許さなかった

当時中学生になった莉々は、オレよりも頼もしく、そして賢く…兄思いな妹に育っていた

どう説得したのかは不明だが、親族を説得…というか脅したのかわからないが、保釈金を用意してオレを釈放させた


”私の為を思うなら、これから真っ当に生きればいい”


…こんないい人間である莉々が…こんなオレのせいで、悪意たる存在に奪われることは



「あってはならないんだ!!」


そう叫びながら目を醒ました

見知らぬ部屋のベッドで目を覚め、見知らぬ黒いスーツを着た男女がいた…いや、見覚えがあった、たしかこいつらは……


「!?オレを追いかけていた奴ら!?あだだだだ!!??」

「オイオイ急に起きると体に良くないぞ、ただでさえ体中打撲だらけなのに…」


体中包帯等が巻かれており、手当されていた


「余程手痛い目に遭わされていたようだな?よくその体であんな走りをしていたものだな」


男は、オレよりも遥かに年下で…そして特徴的な瞳をしていた、宝石のように綺麗な金色と緑色の…


「お、お前らは一体なんなんだ…?」

「私達は特務機動隊、私はリィン、この子は神也よ。よろしくね須田良輔さん」

「と、特務機動隊?え?噂で聞くあの?」


車好きの中では、半ば都市伝説として語られる。自動車犯罪捜査に特化した組織、正義の味方…色々呼び方があるが、実在しないものだと思っていたのだが…


「その噂は、自動車犯罪に対する抑止力として意図的に広めてるモノね…そうね、あなた達のような厄介な自動車犯罪に対しての対抗手段、それが私達よ須田良輔さん…一応、あなたの仲間と経歴を調べさせてもらったわ…窃盗の罪で実刑判決で、現在は執行猶予が間もなく終わる頃にね…まあ、事情は仕方ないとはいえ…ね?」

「オレだって好きに盗んでるわけじゃない…アイツらが脅すから…」

「とは言え、警察なり、逃げるという選択肢はなかったのかしら?」


このリィンさんの言葉にすれ違いを感じた…事情を聞いているのなら、少しぐらい同情しても…いや、待て


「ちょっと待って…今、何時なんですか!?」

「今?21時過ぎぐらいかしら?あなたを捉えて、半日以上経過した頃かしら?」

「半日!?21時!?」


約束の時間は残り4時間…


「莉々は!?オレの妹の莉々はどうしたんですか!?アイツらに捕らえられて…!?」


二人は驚いた様子だった、どうやらオレがなぜ奴らの手助けをしていたのか聞いていなかったようだ

つまり、莉々は未だ奴らに捕らえられている…いや、それどころか命の危機が迫っている


「ちょっと待って…まさか、誰か人質がいるのかしら?」

「そうだよ!!こうしてる場合じゃ…ぐ!?」


急いで起き上がろうとしてが、ベットには手錠が繋がられていることに今更気づく


「…リィンさん、やっぱりあの外人ども嘘ついてたみたいですね」

「まあ…須田さんの話を聞かないと判断できないわね…話してもらえないかしら?急いでるにしても、事情を聞かないと」




須田良輔から聞いた話は、想像以上にエグい内容と切迫してる状況であった、妹である須田莉々が人質に囚われていること、そして残り4時間以内に盗難車を目的地に持っていかなければ人質の生命が危うい状況であること、今なお性的な暴行を受けている可能性があること

後ほど、隊長と加奈が外人二名を再度尋問した

最初はとぼけていた…いや、始めから舐めいた態度だったが、加奈が見せしめに一名を半殺しにしたことで、やっと吐いた

今までの窃盗実行犯も、須田良輔と似た手段で協力を強要し、用済みになれば殺害していたことを自供させた


市民会館地下会議室


〈…なるほど、犯罪組織ヴィシュヌなら今回の件は納得出来る〉


隊員達、そしてビデオ通話で小柳が会議参加していた


〈リィン、奴らの拠点は?〉

「はい、犯人達が向かう筈だった場所を衛星画像から捉えたものです」


スクリーンに表示されたのは、コンテナが積み重なる港と停泊している船…


「これは、貨物船か?」

「そうね神也…どうやらここがアジトとガレージも兼ね備えてるみたい」

「なるほどな…道理でオレたち特務機動隊や警察がわからない訳だ。既存の窃盗犯のやり口ではないな」


風間隊長、島田、リィンは同感という感じで頷く


「山の廃車置き場とか、港でも倉庫だったりするが…もしかして、こいつら時折移動してるんじゃないか?」

「ええ、そうよ島田君。数日前はこの近辺の港にも停泊していたみたいなの。奴らは盗んだ車を貨物船の中で解体作業、そしてそのまま輸出してるようなの」

「思ったより大胆なやり方しやがるなヴィシュヌという組織は…だが、盗難車だけじゃ貨物船を動かす費用とかもあれじゃないか?」

「取り扱いが盗難車だけじゃないと思う、もしかしたら非合法の薬の運搬…そして須田良輔の話から推測になると思うけど、人身売買もやっている可能性もあり得る…いや、臓器の売買の方かしらね?」


奴らは実行犯の親しい人間を人質にしている、そして実行犯は殺されている…じゃあ残った人質は?考えられる結論はそういうことだろう


「そして、この窃盗犯達を殺害したのがヴィシュヌ幹部である、ガーネェヤ」


スクリーンに映し出されたのは、妖艶で美しい褐色の美女だが


「すごいわね、美女という印象がぶっ飛ぶぐらい、殺し慣れてるわね、このガーネェヤって奴」

〈さすがにわかるか加奈、まさかヴィシュヌの幹部とはな〉

「知っているんですか?」

〈暗殺を生業とする業界なら、名を知れてるような奴だ。もっもと、名前だけで、どういう手段や手口までは知らないがな〉


加奈や小柳だけじゃなく、オレも他のメンバーもこのガーネェヤという美女の異様はなんとなくわかる


〈現時点で、窃盗実行犯の確保ということで、我々特務機動隊の役目は終えている。後は警察組織に委ねるが…〉

「待ってください小柳父さん」


小柳が言いかける前に、加奈が待ったをかける


「現在囚われている須田莉々の救出は?ヴィシュヌは後3時間以内に彼女を殺害される…見殺しにする気ですか?」


恐らく、この場にいる者全員が言いたかった事を加奈が率先して意見する


〈…それは特務機動隊としての役目ではない、自動車を扱う犯罪というならともかく、あくまでも窃盗されているだけなら私達の役目はそこまでだ加奈〉

「救える可能性があってでも?今現時点で人質を救えるのは私達、特務機動隊じゃないんですか?」

〈それは越権行為だ、我々が超法規的活動が容認されているのは行き過ぎた越権行為をしないという信頼故だ、それに可能性としての話であるのなら、須田莉々は既に殺害されていてもおかしくないはずだ。奴らが約束を守るような組織であるのなら、口封じで殺害することはない〉

「だとしても、ここでヴィシュヌを止めなければ新たな被害者、一方的に不幸になる人間が増えるだけです。今ここで奴らを叩かないと悲劇が繰り返される」

〈奴らの存在が露呈した以上、今までのようにいかない〉


小柳と加奈の会話はヒートアップしていった、やや感情的な意見の加奈、正論を言う小柳…

人しては加奈は間違っていないと思うし、組織としては小柳が正しい

会話は段々と口論となっていく


「この分からず屋!!目の前に助けられる人、助けを求める人に応えないで何が特務機動隊よ!!」

〈馬鹿者!大体、相手の出方も脅威がわからない以上、迂闊な行動が出来るものか!自惚れも大概にしろ加奈!〉

「アンタが指揮官なら特務機動隊の戦力はどこにも引けを取らない!そして隊員達は任務を遂行できるエキスパートなんでしょ!指揮官なら部下を信頼しなさいよ!!!」


もはや親子喧嘩のような有様。オレを含めて、隊長ですら、誰もこの会話に割って入る気がなかった

割って入れば殺されるんじゃないかってぐらいの二人とも気迫に満ち溢れている

一応、小柳は特務機動隊における指揮官である。それをアンタ呼ばわりしてるのだから、加奈の気の強さというべきか反骨精神はとても、隊員達には真似できないと、後々聞くことになる


〈加奈、命令に従わないと言うのであれば、お前の身柄を拘束。そして山岡徹也の監視役も降りることになるぞ?それでもいいのか?〉

「構わないわよ。誰も救えないで任を解かれたというのであれば、徹也も納得するわよ」


即答かつ、きっぱりと言い返すものだから小柳も驚く。そして僕たちも驚く

何せ、兄さんと恋仲であるのは周知の事実なのに、それと離れ離れになるということは…


〈………君たち特務機動隊が任務に背く行動をとるのであれば、私の手で君たちを特務機動隊員を始末しなければならない、余程の特例がない限り…な。無論私も君たち、そして仮にも娘である加奈を手をかけるのことは望まない…頼む加奈、理解してくれないか?〉


少し間を空けて、諭すように加奈に語りかける小柳…だったが


「…私を止めたければ、拘束するなりしなさいよ」


隊長の目の前で腕を出し、手錠をかけるように促す


「…加奈、お前は一体何を考えている?」

「それが最善だからですよ風間隊長。私のようなただの工作員では何も、理由もない」


加奈は手錠をかけれられ、隊長と島田さんと共に連行される

2時間後に、容疑者3名の身柄を警察に引き渡すということで会議は終わる、引き渡し後、白柳神也は特務機動隊としての任を解かれ、SSR計画…白柳学院に戻る


本当にそれでいいのか白柳神也?救える可能性があるのをわざわざ放棄する…

須田良輔とはさほど言葉を交わしたわけじゃない、過去を知っても元犯罪者であること…だが、妹を思う思いは本物だ。それだけは分かる、兄たる存在…兄妹に対する愛、想いと願いは…僕と似ているモノを持っている

だからこそ、放ってはおけないのに…兄さんならどういう判断をするだろうか…いや、僕の兄弟姉妹達は何が正しいと判断するだろうか


仮に救出作戦に必要なモノを考えれば、実のところ揃っている

僕のヴャルキリのGT-Rは特務機動隊とは異なる管轄、勝手に動かそうと動かせるが、リィンのネットワークをハックを使われば終わりだ

いくら高性能のAIのオウガでも、あの電子戦特化のC-HRヴァルキリでは無意味に等しい…単独では行動が不可能に近い状況…


〈…確かに、君一人では何も出来ないな神也〉

「全くだなオウガ…お前でも同じ結論か」


GT-Rヴャルキリの回収準備を行いながら、オウガに相談していたが…やはり彼も同じ結論に至る


〈神也、実力行使でやろうと思えば出来るのでは?一人残らず制圧してしまえば〉

「馬鹿を言え、そういう防御防護手段を講じていると思うぞオウガ…」

〈ですが、先ほどの話であるなら神也という立場であるのなら可能であることを話してしませんか?〉

「??」


少し不審に思った…確かにオウガがある程度のコミュニケーションは可能ではある

だが、こんなアグレッシブな意見をするようなAIではない


〈タンカー一隻なら、相応の装備をしたヴャルキリ一台でも制圧可能、一番いいのは加奈様が操るWRXのヴャルキリもいれば万全ですね。2台なら船一隻なら海の藻屑にも出来る〉

「…オウガ、お前一体何を?」

〈鈍いですね神也は、本当にマスターの弟なら先ほどの会話で読み取れたはずですよ、汚い大人のやり口…いえ、加奈様の思惑が〉

「…お前、一体なんだ?オウガではないな?」


不審は確信に変わる、これはオウガでない


〈悪いですけど少々彼には黙ってもらいました、なかなか優秀ですが私の足元にも及ばないAIですね〉

「馬鹿な…オウガがハッキング受けていたのか!?」


AIのボイスが、可憐な女性のボイスに切り替わる


〈私の名前は、AIアイ…初めましてマスターの弟様である、神也様。話はずっと聞いていましたよ〉

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