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走劇のオッドアイ  作者: かさ
ダークサイドシナリオ編 特務機動隊、自動車窃盗団を壊滅せよ
89/121

ACT.82 待機

I県の特務機動隊の活動拠点に来てから数日、リィンが仕掛けた車に盗難犯が餌にかからず待機を強いられることになる

リィン曰く、品定めをして、計画を立てているのではないかということらしい

現に、仕掛けた車の周りの監視カメラには外人や素行が悪そうな人間がウロチョロしているらしい


「けど、私達が狙う盗難犯はそういう人間じゃないのよね加奈」

「殺害されているのが全員日本人だからか、偶然というのは?ここは日本よ?」

「偶然に片付けるにしても、全員というのは引っかかる。それにある共通点がわかったのよ。殺害された窃盗犯は逮捕歴、服役していたということが小柳さんの調査でわかったの」


小柳父さんは、現場ではなく、別アプローチで捜査しているがどこで何をしているか不明だ


「前科持ちで日本人…ね。やはり共通点というか、窃盗犯のありきたりの経歴過ぎないかしら?」

「もっと情報とか入ればね、小柳さんもこまめに連絡取れればね…」


情報収集の都合上、踏み入れてはいけない場所や状況だとすれば、迂闊に連絡取れない


「しかし、この仕掛けてる車、私達が追ってる窃盗犯じゃない奴に盗られたらどうするの?」

「…あ、そういえば説明してなかったっけ?仕掛けてる車、かなり高度なセキュリティー対策を施してあるのよ。簡単に手出し出来ないようなものにしているの」

「手出しして、持ち帰ってもらわないといけないんじゃ?」

「ところが、高度なセキュリティーを施した車両も盗難されているのよ…かなりのエキスパートか、盗難技術を教えられたか特殊な装置を使った。どちらかにせよ、その辺の悪ガキの不良や半グレが手出し出来ないシステムを組み込んでるのよ」

「つまり、このセキュリティーを破って盗み出した奴は…」

「私達が追ってる窃盗団に関わってる可能性が極めて高いということよ加奈」


リィンは自信満々なドヤ顔である。自分が仕掛けたトラップに絶対的な自信があるからだ



市民会館 ヴァルキリ 整備ドック


「…立花のおやっさん、アレ大丈夫なんですかね?」

「知るか、放っておけ」



メカニックの皆さんが色々言ってる気がする


「…オウガ、加奈に好かれる方法なんかないか?」


R35ヴァルキリの運転席にダラシなく座りながら、このヴァルキリに搭載されているAIオウガに尋ねる


〈そんなの私が知るか。ある程度は人間との意思疎通が可能な私でも恋愛ごとはわからん。それは私を作った貴様が一番知っていることだろう?〉


自分で作ったAIに辛辣な返答をされてしまう


〈私は貴様の反応速度に対応する為にあるのだぞ?貴様の人生相談役ではない〉

「冷たいなおい」

〈そんな軽口に付き合えるAIが存在するものか、存在したところで、そのAIの演算能力はたかが知れている〉


後々、オレとオウガは超越したAIの存在を知ることになる…意志疎通どころか、意志そのものを持つAIがいたことを


「…意外だな、君がここまで人間らしさを持っているとはね」

「風間隊長」


オウガに愚痴をこぼしているのが聞こえたのか


「人間らしさ…ですか?」

「まあな、白柳神也…又はSSR計画の最高傑作のナンバー5(ファイブ)。あまりにも完成された故に、どこか人間らしさを感じないって、聞いたことがあってだな。特にレースになると、冷静、そして当たり前のように勝つ。人らしい暖かさというか、熱を感じないってな」


おそらく自動車競技の指導していた教官から聞いたのだろうな


「先の未来が視えるから、どうやっても勝って当たり前…というのは傲慢かつ、自惚れでしょうけど…いや、勝たないといけないという強迫観念もあったのか、だぶん、レースの対戦相手を意識していなかったからですかね」

「強迫観念?」

「…ご存知かどうかは知りませんが、大柳家がSSR計画の主導だった頃は過度な人体実験が行われ、名も与えられず、世に出ることもなく死んでいった者もいました。ある種の生命への冒涜、悪魔という存在がいるのであれば、まさしく奴らは悪魔の如き所業を知ってしまったんです、僕は」


SSR計画は大柳家以外にも、様々なアプローチによる教育、育成方法を考案し、実施していた


「僕は、白柳教授の元で育成されていますが、他の兄弟姉妹達(きょうだい)がどういうことをしているのかという情報は、隠れながら得ることが出来ました。僕という存在は、何十人の兄弟姉妹達の犠牲の上で立っている存在、彼らの流した血の上で、僕は生きている」

「だが、今の大柳家は…」


SSR計画からは追放されたが、今もどこかで生きている


「僕は作られた最高傑作として、これまで死んでいった兄姉弟妹(きょうだい)達の為に、証明にしなければならない、生きた証を…僕という存在は兄弟姉妹達の生きた証を世間に刻む為に」

「それが、君の強迫観念という訳か。だがそれは…」

「ええ、当時のメンタルケア担当に言われましたよ。いずれにせよ、正気ではいられなくなるって…だからは僕は心を殺した、楽しさもない与えられた目標をこなすだけ…負けることは兄弟姉妹達に対しての冒涜なる、僕にはそれしかなかったんですよ」


勝って当たり前の存在、勝つことが全て、勝たなければならない、勝つだけの力も能力も技術も才もある

それが、白柳神也としての、死んでいった兄弟姉妹達の為に、SSR計画で生み出された僕たちの存在は無駄ではなかったと、刻む為に

だけど、それはかつての話だ


「結果的に冷徹な印象を与えることになったんでしょうね…でも、今は少し違いますけどね。兄さんの存在が、僕を人らしさを思い出させました」

「プロト0(ゼロ)か…またの名を山岡徹也…SSR計画のすべての兄、最初に作られた子供。私は彼のことはよく知らないが、彼の存在が君に影響を与えたのか?」


プロト0の存在は、アルカディア機関で存在を認知したのは半年以上前故に、情報が伝わり切っていないこともある。風間隊長が存在を知っていても、どういう人物なのかは知らないのは無理もない

それにSGTでも表舞台に立たたず、兄さんと明堂学園が意図的に情報を伏せた、隠蔽工作を行っていた痕跡があったからだ

元々、チームで目立つのドライバーだが、それにさらに隠れているのだから、戦術を持ち合わせた


「兄さんは、別の可能性を示した。ドライバーとして優れているとは思わない、思考能力も僕のほうが上の自身がある。だけど、計画から外された兄さんは自ら道を切り開いた。僕は敷かれたレールの上で育ってきた僕にとっては驚きしかなかった。本来、前人未到のSGT二連覇は僕らが果たす筈だったのに、兄さんはチームを率いる立場でそれを達成させてしまった」

「チームを率いる…か?」

「兄さんはドライバーではなく、チームをまとめ上げる指揮官として優れているんですよ。それはSSR計画の研究者、僕たちを育てた教授たち、アルカディア機関が保有する演算機ですら、その役割で成り立つということを予測できなかった」

「なるほど、それが別の可能性ということか…しかし、まだ10代の、それも高校生がチームの指揮官、監督して頭角を現すのは、信じられないというか…」


人の上に立つというのは、実力と知識と経験も必要になるが、一番重要なのは…


「人を従わせたいと思わせるようなカリスマ性、良い状況を作り出す行動力と観察力、人を思いやれる言葉を言える言動…僕にはない力を、兄さんは持っている…いや、自らその才を開花させた。可能性を示したんですよ兄さんは」

「君はその可能性に憧れたのか?」

「そうですね、憧れもある…でも、嫉妬というか、対抗意識というべきでしょうかね?僕のない可能性を持つ兄さんに打ち勝ちたいという思いが強くなってきたんですよ。初めてでしたね、恋焦がれるように、誰かに勝ちたいと気持ちを持つことが」

「…なるほど、その気持ちが君を人らしさにした訳か」


クスっと、微笑む風間隊長


「可笑しいですかね?」

「いーや、オレもそういう年頃もあったなって思ってな…そうかそうか…」


感傷に浸るように、納得しているようだ


「そんな奴に加奈を取られた訳か」

「そこで傷を抉るようなことは言わないでください。けどまあ、兄さんなら納得できますし、素直に応援は出来ます」

「いつから加奈に興味を持っていたんだ?」

「兄さんのことを知って、そうですね…兄さんに対してライバル意識を持ってから、加奈が魅力的に見えたんですよね…榛奈高校に潜入して、何かを得ることがあったのかと思いますが」


兄さんという存在があったからこそ、僕は人らしさを得ることが出来た。人らしさがあるから、人を恋することも出来る


「少しわかった気がするな、白柳神也という人間が。今回の特務機動隊に参加したのは、お前が自らの新しい可能性を模索したい、そして加奈も参加するから、彼女にいい所を見せられる、あるいは近くに居られると考えたんじゃないか?」

「動機が不純ですかね?」

「いーや、好きな人の前でいい所見せたいというのモチベーションを保つ良い方法だと思ってる。それに、君に比べたら、私のほうが特務機動隊のいる動機は不純なものだよ」

「詳しくは聞きませんが、風間隊長はどうして特務機動隊に?」

「私は、復讐だよ」

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