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走劇のオッドアイ  作者: かさ
ダークサイドシナリオ編 特務機動隊、自動車窃盗団を壊滅せよ
86/121

ACT.79 金色と翡翠色の瞳の化物

榛奈自動車部練習場が集合場所になっていた、夜中だから誰もおらず静か・・・ではなく、ローターの轟音が響いていた

普段はタイヤのスキール音とエキゾーストが奏で、チューニングカーと呼ばれるカスタムされた車が疾走する場所に、あまりにも不釣り合いな戦闘用ヘリが降り立っていた


「確かに、ここならヘリが降り立つ場所には最適か」


ヘリのそばまで行くと、ドアが開き同じ黒いスーツを着た大柄な男が降りて迎える


「時間通りだな加奈」


聞き慣れた声なのだが、見覚えのない顔だった為に誰だがわからなかった。相手は私のことを知っているような口振りなのだが


「・・・私だ加奈」

「もしかして、小柳父さん!?」


数週間振りに直接顔を見た振りだが、似ても似つかない顔だった。以前は40、50代ぐらいの中年ぐらいだったのに、今は30代ぐらいの顔つきで若返っていた


「忘れているようだが、私には素顔がないんだぞ加奈?」

「変装の名人でしたね、父さんって」


小柳家の当主、アルカディア機関の工作員を育成し、特務機動隊を管理管轄をしている。秘匿する必要があるが故に小柳当主は工作員としての技量と戦闘力を有し、そしていくつもの顔と戸籍を持ち、使い分けてるらしい

小柳父さん曰く、素顔はとても見せられるようなものではないらしい


「ふふふ、どうだ加奈?父さんの今の顔は?」

「うーん・・・ザ・ダンディって感じのかっこいい中年になりましたね」


小柳父さんは嬉しそうな反応をする、余程自信作だったのか

ヘリからもう一人降りてくる、それは懐かしい再会、私の愛しい人と同じ容姿を持つ者だった


「直接会うのは2年振りかな?今は加奈と呼ぶべきかな?」

「どうしてアンタがいるのよ」


黒いスーツ、そして徹也に瓜二つの容姿。唯一違うのは金色と翡翠(エメナルド)色の美しいオッドアイの瞳が私を見る


白柳神也(しろやなぎしんや)・・・アンタは工作員でもなければ、特務機動隊でもないでしょ?」

「今回は実験的な要素があって参加させてもらうことになったんだよ小柳加奈」

「どういうことなんですか父さん?」

「SSR計画、ナンバー5の白柳神也、彼には特務機動隊への適性があるかどうかの実験だ。加奈も知っての通り、SSR計画の子供たちは並外れた身体能力と運転技能、そして神也は異質な能力を有している」

「少し先の未来を視る力・・・」


白柳神也は並外れた身体能力と思考能力、そして反応速度と動体視力で相手の動きの先を視ることが出来る、視えるのはホンの数秒先程度だが、レースにおいても・・・いや、どの分野においても万能な能力とも言えるものだ


「だけど、戦闘訓練を積んでいないんじゃ?」

「一応、ドライバーとして身体を鍛える為に君と同等の訓練を受けている。なんなら試してみるかい小柳加奈?」


神也は身構える、構えの時点でわかる。相当な技量であるのがわかる


「いいのかしら神也?やるからには手加減はしないけど?」

「構わないさ、全力で来い。小柳さん」

「いいだろう、互いの力を理解するには一番手っ取り早いだろう」


神也が小柳父さんの承諾を得ると同時に仕掛ける

まずは神也に顔に向かって拳で殴り掛かるが、神也は紙一重で避けると私の腕を掴んで私を取り押さえようする

足払いを仕掛け、体勢を崩そうとしたが、それを予知したのか腕を離し足払いを避け、体を後方転回して、私から一旦距離を取る

仕切り直して立て続けにパンチやキックを仕掛けるが神也は紙一重で全て避ける、回し蹴りや足払いを混ぜるがことごとく彼は避ける、本当に相手の動きが視えているのだ

ここで大振りにパンチを出すと、再び私の腕を掴み今度は完全に取り押さえられる


「勝負あったな加奈?」

「ええそうね、体術じゃ私の負けね・・・でも」


片腕から取り出した拳銃を神也に向ける


「これならどうかしら?」

「あ!ズルいぞ!?流石武器を使うのは!」

「あら?誰も体術で勝負するとは一言も言ってないわよ神也?全力で来いって言ったのはアンタよ?」

「う・・・」


自分で言ったこと故に、何も言い返せない神也。こういう時、徹也ならそういう状況にならないように作る、瓜二つとは言え、やはり彼とは別人だ


「勝負あったようだな二人とも」

「ええ、こりゃ頼りになりますね」


神也は私の拘束を解く。物騒な銃をホルスター仕舞い、改めて父さんに問う


「でも父さん、SSR計画で作られた人間が、こういう用途に使われるのは一番好ましくなかったのでは?」


直接なことは言わないが、神也の戦闘力はもはや生体兵器とも呼んでもいいほどだ。おそらくこの距離から不意打ちで撃っても躱される可能性もある。事実を銃を見せても余裕の表情だ。私を怪我しない程度に手加減していたのはあからさまだったが、本気だったら確実瞬殺されていた


「確かに好ましくないな。アルカディア機関のクローン達を犯罪やテロ、戦争等の戦闘行為に利用されるのは。だからこそ実戦でどこまでの戦闘力を発揮するのか、どういう判断をするのかを知る必要もある。我々で対処可能なのか」

「なるほど、一応私の監視の任務にも、最悪のケースとして徹也と結衣の殺害処理もありましたからね」


無論、そんなことはやりたくはないが

だが実際やり合ってみてわかった。まともにやり合うとマジで勝てない

考えてみれば、徹也はともかく、結衣も本気でやり合うとなるとおそらく苦戦する、それだけ身体能力が化物じみているのだ


「僕としては、正義の味方でありたいものだよ」

「・・・アンタってそういう性格だったけ?」


神也とは1on1や、レースの訓練相手として会うことはあっても会話をすることはなかった、神也からも話しかけれることはなかった。まともに会話したのは、小柳加奈として榛奈高校に潜入して定期的な報告会ぐらい、面と向かってまともに会話をしたのは今が初めてだ

言葉使いから、もっと傲慢かつ自信家だと思っていたが、少し違う。容姿は徹也にそっくりだが、精神は結衣に近いのか?


「兄さんに勝つのも目標であり、存在意義の証明も僕にとっては大事なことだが、車で悪事を働き、それで金儲けして貪り喰らう者たちを放っておけない。そしてそれを制する力があるならそれに僕はそれを行使したいのさ」

「正義という大義名分の力を得た人間は、もっとも残酷になれる。私達の存在はその力の使い道を誤ってはいけないのよ神也?」


結衣の言葉だ、彼女は正義のヒーローは好きだが、存在しない方が世の中幸せだと言い切る程、正義と力の在り方を理解してる


「当然だ、それは人が歩んだ歴史が証明している。力の使い道は誤らないようには心得るよ」


やっぱり、結衣と同じだ。正義の在り方、力の考え方も。少し彼という人間が信用に値する人物だと思えてきた


「やっぱり、姉がアレなら弟も弟ってわけね・・・」


聞こえない程度に、呟く


「?なにか言ったかい?加奈?」

「なに、頼りにしてるって言ったのよ神也。よろしくね」


手を出し、神也に握手を求める。彼は少し照れながら握手して応える


「上手くやっていけそうだな。二人とも出発するぞ」


父さんに促され、ヘリに乗り込むと、直ちに離陸して目的地へ向かう



ヘリの操作をしながら、小柳父さんが今回の事件の詳しい概要を説明する


「今回、特務機動隊が招集された一番の理由は、実行犯があまりにも凄惨かつ猟奇的な殺害をされているという点が大きい」

「確か、腹に大穴開けられて殺害されてるって・・・」

「そこのタブレットに死体の現場写真のデータがある、確認してみるといい」


タブレットで開くと、凄惨な現場画像であった。被害者の腹には、握りこぶしより一回り大きい穴が明けられ、そして被害者の後ろや周囲には大量の血や、おそらく腹に穴を明けられた際に粉々になった臓物や肉片がぶちまかれていた。数名、同様の方法で殺害されていた


「これは、酷いわね。これ骨ごと抉り開けられてるわね」

「しかも心臓の臓器ではないから、被害者は即死したもののもいれば、悶え苦しんだ者もいるな」


神也が指摘すると、確かに被害者は悶えている痕跡があった


「しかし、これを銃火器とかの凶器を使わずにどうやって?まるでドリルで貫かれたようなもんじゃない?」

「その割には綺麗にぶち抜かれている、ほぼ一撃かつ速やかに行われてるか?真っ当な手段を使ったとは思えないが・・・実行犯はまともな人間性ではないのは明らかだな。殺害するならここまで派手にやる必要性はない、完全に趣味だな」

「まともじゃないからこそ、今回白柳神也も招集した理由だ。殺害実行犯がもし怪物のような相手だとしたら?」

「怪物ですか?」


確かに、人間業とは思えない殺害方法を行う相手をそう呼ぶしかないか


「怪物には化物をぶつける訳か小柳。毒を以て毒を制すか」

「まあ、まずは窃盗実行犯の確保が最優先だ。その殺人犯に関しては最悪のケースだ」

「とりあえず、窃盗犯を確保して組織の全容を把握する・・・」

「そうだ加奈、確保と保護だな。今回はどんな組織なのかすらわからないからな。君たち二人は現地の特務機動隊と共に窃盗犯を確保及び保護。尋問してどの組織に指示されているか」

「でも父さん、窃盗犯って言ってもその組織に関わっているとは?まさか片っ端から捕まえるつもりですか?」


ナノマシンのハイテク技術が確立しているとは言え、それでも数百件盗難事例がある。それを捕まえるのは・・・


「盗難地区と殺害された実行犯の活動地域はおおよそ割り出せている。そこを重点的に絞り込めば、窃盗団の組織に繋がってる実行犯がいる可能性はある。詳しくは現地の特務機動隊に聞いてくれ」

「小柳、二人と言ったが。アナタはどうするつもりで?」

「私は私にしか出来ない調査をする。現場は君たちに任せるさ」


私と神也を連れ、ヘリは向かう、死地へ

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