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走劇のオッドアイ  作者: かさ
新生榛奈自動車部編成
81/121

ACT.76 microSD

加奈たちが喫茶店で徹也の過去を聞いてる頃、少し時間を遡る


部活終了後一緒に帰る予定だった加奈が急遽、たかのすの喫茶店で女子会とか言い出し、先に帰ってしまい一人寂しくバイクに跨って帰宅することになった

結衣や奈緒と何か企んでるようだったが

オレの監視の為に、加奈は別行動してもいいのかという疑問が読者の中にも言われそうなのだが、実のところ問題ない

オレも結衣もだが、携帯端末にGPS発信のプログラムがインストールされており、それだけじゃなくありとあらゆるところに発信機が付けられていることが最近発覚したのだ。靴底やら鞄やら服のボタンとかetc・・・一応プライベートに干渉しない程度らしいが

もし、結衣やオレに万が一があればすぐにでもアルカディア機関の人間が駆けつけるような体制になっているそうだ。反社会勢力やらテロ組織に狙われても返り討ちに出来るらしい。もっとも、アルカディア機関を敵に回す勢力はあんまりないらしいが

ちなみに自動車部3年生と1年生、多田や阿部は榛奈町から離れた隣町であり帰宅する方向も手段も異なる

帰ってやることはあるが、地区大会前ほど忙しい訳ではなく、折角一人なので榛奈商店街のある店に寄ることにした

店の扉を開くと、電子機器のパーツや精密機械のパーツの山がギッシリ詰まったコンテナが置かれている店


榛奈商店街ハードショップ


「おやおや?徹也君じゃないかい?」

「どうも店長、また来ましたよ」


所謂リサイクルショップなお店だが、家電の他に細かい電子機器パーツを取り扱うこの店はある意味オレのような人種には天国のようなお店であり、チョイチョイこの店に寄ったりしているせいでここの30代前半の店長と気兼ねなく話せる顔馴染みとなった


「店長、実はちょっと見て欲しい代物があって」


店長にオペレートグラスを渡し、いろいろ見てもらった。起動させたり、様々なプログラムを開いたり、分解してみたり

店長はものすごく目を輝いて分解していた


「組まれているプログラムが相当優秀なのか、樹脂系のパーツ以外全然専門的なパーツを使われていないようだ」

「これと同じ部品を揃えようと思えれば、揃えれます?」

「ああ、外装の樹脂パーツは3Dプリンターで制作可能だな。まあ、CPU関連以外はそこまで高額なパーツではないから、プログラムとシステムをコピーすれば複製品ぐらいは作れそうだな」


ハードショップに来た理由はそれだ、万が一の予備パーツの流通手段の確保であった。携帯端末そうだが、小型の精密機械を長時間稼働させるとなるとパーツの寿命が心配所であったのだ。おそらく一般流通してるパーツだろうと思っていたが、考えられて作られていたようだ


「しかし、よくもまあこんな趣味的な形だな・・・うん?なんだこれ?」


店長が基盤の裏側をひっくり返すと、microSDがテープに張り付いてた


「・・・確かeMMC系のストレージが別個に付いていたけど」

「いや、これただ単にテープにくっついてるだけだ。しかも8Gって・・・結構小さい容量だな」


店長がテープを剥がし、microSDを手元のPCで確認しようとしていた

テープで基盤の裏に貼り付けたとしたら完全に意図的に行ったものだと考えれば何故か?そもそも分解しないといけない場所に?オレが確実に分解すると信じて貼り付けた、オレに見て欲しいものだとしたら?

8Gだと容量的に動画か音声データか?


「店長ちょっと待て、たぶんそれはオレ宛のものだと思うから中身を見るのは」

「そう言われると気になるぞ徹也君?まあ、いっか」


その後、microSD取り外したオペレートレンズを元に戻してもらい、パーツの発注と少し買い物をしてからハードショップを出て帰宅する


アパート 自室

いつもなら加奈もこの時間にいるのだが・・・今頃3人で仲良くお茶でもしているか

取り出したmicroSDをデスクトップに入れて、ファイルを開こうとしたがパスワードを設定されていた


「ノーヒントかよ・・・うーん」


無理やり解析してパスすることも出来なくはないが、もしこれを仕込んだ人物が想像している人間だったらそんな手段を使ったらまずいだろうな

だが想像した人間だからこそ、思い当たるワードがあったが2つある・・・さてどっちだ?巡らせる、今日のアルトの仕上がりを見て消去法でワードが1つに絞り込めた


「・・・機械と共に歩む」


呟いた言葉をキーボードで文字として入力

不快なエラー音が鳴ることなく、ファイルが開かれた。正解だったようだ。

ファイルの中には音声データが一つだけしか入っていなかった。その音声ファイルを再生する


〈これが再生されたということは、思った通りだったかな?久しぶり徹也君、あの事件以来かな?明堂明理だよ。どうだったかなオペレートレンズとアルトは?徹也君なら誰がやったのかはすぐに気づいたと思うけど〉


数か月振りに彼女、明堂明理の声を聞いた。おそらく転校するきっかけになった事件以来、明理とは会うことはなかった

明堂明理、明堂学園電子課所属、モータースポーツ部門の車体の電子系及び制御プログラム担当、自分が知る限り電子系において彼女の右に立つものはいないと言えるほどのエキスパート、天才。超高性能AIユニットであるアイを制作したのも明理だ

そして、オレとは思想の違いから相容れない存在でもあった。少なくともオレが知っている明理は


〈今は休学してYガレージでお世話になってるの、トオルさんもお店の人たちもいい人たちで、いろいろと学ばせて貰ったり、手伝っていたりしてるの。今回のアルトのチューニング計画は私が全面的に行わせてもらったの。設計した徹也君もすごいけど、榛奈自動車部の凄いね。ドライバーもメカニック達も・・・本当にいい環境そうだね〉


嬉しそうで、そしてどこか悲しそうな感じに聞こえていた。まあ、Yガレージに短期間で制御プログラムを組める人間はいないのと、AIアイを搭載したとなると明理以外考えられなかった。天才だよ彼女は


〈・・・そうだ、こんな話をしたいわけじゃないんだ。徹也君、ホントにごめんなさい。私たちの一族が徹也君の家族に迷惑をかけて、それも名誉も傷つけた。そして徹也君の居場所を奪った。謝罪や言葉だけじゃ償えないようなことを徹也君達にやった。ごめんなさい〉


実のところ、被害者であるオレはこの事件に関してはどうやって解決したのか不明なのだ。なにせ警察に拘留されて知らない間に無実が証明されて、その後に退部勧告を受けて転校した

実際、明理も被害者の筈だ。明理が謝る必要はないんだ


〈せめての償いとして、私は徹也君・・・いや、榛奈自動車部に協力することにしたの。例え明堂学園が相手であろうと、私は私のエゴで徹也君の役に立ちたい。例え徹也君に嫌われても、私は徹也君が好きだから・・・〉


参ったな、決してオレは悪くないと思うのに罪悪感がある。もうすでに加奈という約束した仲になっている人がいるのに、こういう告白されるとはな・・・しかも、アルトやオペレートレンズと言って贈り物まで送られているのだから、それに対してどう応えるべきか


〈ホント、私って何を言ってるのかな?ははは・・・それじゃ徹也君、アイの事を頼むね?私じゃ言うことを聞いてくれない子に育ってたし・・・これからの活躍を期待しているよ。それじゃ〉


明理からの音声ファイルはそこまでだった。一方的なメッセージで一方的な告白、恥ずかしがり屋の明理らしい行動とも言えるか

オレと明理の将来の夢と願いは似ているものだ、自動車による悲劇を防ぎたいという願い・・・だけど、その夢の在り方は相容れないものだった

オレは人と機械は共に歩むべき存在、対して明理は人は機械に操られるべき存在という考え方だった。明理の考え方も正しいとも思うが、オレは受け容れることが出来ない在り方だったから衝突した。明理と大喧嘩したし、暫く口も聞かなくなった時もあった。少なくともオレが知っている明理はそういう人間だった。だが、今のアルトをチューニングを見れば、かつての明理ではないのはわかった。ドライバーのことを考えた設計であり、今のAIユニットのアイを積むことはない

明理は受け入れたんだと思う、人と機械を共に歩むべき存在という考え方を

少し安堵する。どうあれ明理が元気であることがわかったことが

椅子にもたれかかりながら、色々と考えふける

思えば奇妙な縁というか、運命なのか、さまざまな事がいまに至っているということを

地区大会はアルカディア機関の計画、そして結衣達の過去との因縁

今度はオレが結んだ過去の縁が力を貸し、そして立ち塞がる・・・いや、少し違うか

SGT660クラス全国大会まで残り一か月近く、再編した榛奈自動車部と新たな力を得たアルト、かつてのオレの仲間が待っている、公式の場で戦うことを

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