表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
走劇のオッドアイ  作者: かさ
新生榛奈自動車部編成
69/121

ACT.65 先輩としての在り方

「悠一、少しいい?」


教室から移動中、リリスに声をかけられて歩みを止める

リリスは浮かない表情をしていた


「どうしたリリス?そんな顔をして」

「うちの校舎内の部室があるじゃない?なんか、昼休みに徹也達の二年生達が集まってたって上村先生に聞いたんだけど、悠一は何か聞いてない?」

「いや?気になるのか?」

「うーん、徹也がいるとなると、何かあったのかなって思うかしら?結構複雑な立場だろうし、半ば押し付けたようなものだから、気になるというより、心配かしら」

「リリスは少し過保護な気もするが・・・まあ、先輩と後輩の板挟み的な中間管理職だもんな、三年生在籍中の部長任命は前例もないし・・・だかな、リリス。徹也がそんなことでヘマすると思うか?忘れたか?先輩相手に呼び捨てで、闘争心に発破をかけて、徹底抗戦を宣誓布告するような奴だぞ?」


いつぞやの喫茶店での出来事である、あの迷いを吹っ切らせるような啖呵と言葉を放った徹也の立ち姿は脳裏に焼き付いている


「あいつほどリーダーとして相応しい人間はいない、たとえ何者であってもな。心配せずとも上手く振舞うだろうさ」

「気楽に考えるわね・・・」

「ゴタゴタした騒動後にあの事実を伝えられてだぞ?少しぐらい気楽に受け入れないと、こっちが参ってしまうぞ」


気楽に考えているオレにリリスは呆れているようだった


「おやおや?元部長同士、仲良く傷の舐め合いか?」


ケラケラ笑いながらこちらに寄ってくる男子数名。三年生のテニス部とその部長だ


「・・・悠一、行きましょう」


リリスがその場を離れるように促すが、進路をテニス部員達に進路を阻まれる


「おいおい、それはないでしょ?成海さん?いや?後輩達の活躍のおかげで勝てた情けない三年生か?」


一瞬、思わず拳に力を入れてしまう。明らかにリリスを馬鹿にしたような発言は許せなかったが、殴りかかる訳にはいかない


「伊東も、ここまで言われて殴ってもこないとは情け無い奴だな?もっとも、二年生の後輩に負けるような奴じゃそんな度胸もないか!」


ゲラゲラ下品に笑う連中に、リリスも実力行使しかけそうな感じだったが、リリスとテニス部連中の間に立って塞ぐ


(リリス落ち着け、オレ達が暴力沙汰を起こす訳にいかない)

(わかっているけど!流石に今の発言は聞き捨てならないわ!事情を知らないで・・・!)


結構リリスも血の気があるというか、お互いに自分自身を貶されるぐらいなら構わないが、他の仲間がこう言われるのが我慢出来ない。ましてや全力で戦った相手同士なら尚更だろう

だが、SGTのライセンス持ちが不祥事や問題行動を起こせばドライバーライセンス停止か、剥奪もあり得る。こいつらはそれをわかった上で挑発しているのだろう。何もやり返してこない、やり返したら自動車部の方がダメージが大きいからだ

周囲にいる生徒はざわついたり、見て見ぬ振りしている中で、一人テニス部員の人混みをわけてこちらに向かって来る


「いたいた、丁度二人いらっしゃいましたね。伊東先輩とリリス先輩、少し引継ぎについて聞きたいことが」


あからさまに、わざとこの状況の中ではどうでもいいことを聞きに・・・いや、どうでもいいことじゃないけど・・・徹也がオレとリリスの目の前に現れた。テニス部員達なんぞに眼中にないように


「・・・おい、徹也。状況わかってる?」

「ええ、しょうーもない不毛な言葉を聞かされるより、こちらの話の方が最優先かつ有意義かなって」

「なんだとこいつ!!」


あからさまな挑発的な言葉に、テニス部員の一人が徹也の肩に掴みかかるが、徹也は虫を払うかのように手を払う

らしかぬ徹也の行動に、オレも勿論だが、リリスも驚きを隠せなかった

徹也の態度に彼らは激昂し、今度は徹也の胸ぐらを掴みかかり、壁際に追い込んでテニス部員達は徹也を囲んだ


「二年生の年下の癖に、随分生意気な態度をとりやがって・・・お前か、今の自動車部新しい部長か。結衣の生き別れたの兄妹だが知らないが、先輩に対しての礼儀も言葉使い知らないようだな?調子乗るんじゃねーぞ」


激昂する彼らに対して、胸ぐらを掴まれても苦しい表情もせずに、呆れた顔する・・・まるで哀れるように


「調子に乗るななんて、便利な脅し言葉を使うしか先輩として誇示出来ないようでは、お前らの後輩が哀れで可哀そうだな・・・先輩がなんだ?敬意が出来ない相手に、礼儀も敬語を使う必要なんて何処にある?」


胸ぐらを掴んでいた者が徹也を殴りかかろうとしてきたが、先に徹也に頭突きされてしまい、鼻血を出しながら徹也の離し、床に尻もちをつきながら倒れこむ

一触即発の状態、徹也を囲んでいる連中は身構えるが、徹也が睨むと引き下がる。こちらも悪寒を感じた、見たことがある、あの日喫茶店の時と同じ


「・・・先に言っておくが、アンタらが仕掛けてきたことだぞ?なに鼻血ぐらい尻もちついて倒れこむぐらいの痛みを味わう覚悟ぐらいあるだろう?」


ドスを聞かせた声、そして重く、心と体にのしかかるような感覚。徹也の言葉には重みを感じられる強さがある


「アンタらが考えている先輩というのは、後輩に崇められる、無条件で偉い存在だと思っているみたいだがな、それは全く違う。後輩たちに尊敬される人間、敬意されるような者が先輩というものだ。敬意される努力も行動を起こさず、見せずに、ただ偉そうに先輩という立場を誇示するような人間にだれが付いていくか。先輩としての礼儀を問う前に、お前らの先程までの言動を振り返るべきだな。仮にも競技を行う者同士、恥ずかしいと思わないのか?見苦しいぞ?」


重く、そして徹也なりの持論だが、間違ってはいない言葉。先輩としてあるべき姿を問われ、誰も何も言い返せそうとしなかったが、テニス部部長が絞り出すように言い返す


「じゃ、じゃあ、お前に負けたコイツらは尊敬される相応しいとかいうのかよ?お前を部長に仕立てたコイツらを情け無いとか、見下してるんだろ!」

「オレは力の優劣や勝ち負けだけではなく、振る舞いと意地や人間性で敬意すべき相手かどうかを見る。オレは自動車部の先輩達を情け無いなんて思ったことは一度もない!真正面から、200km/hを越える速度領域で命懸けで競い合った人間が情け無い人間であってたまるか!!」


今更気づくが、徹也はオレ達対して言っている。そして周りに見せつけるように、声を荒らげながら言葉を続ける・・・もはや演説というべきか

が、流石に騒ぎが大きすぎたせいか、生徒指導の先生に徹也とテニス部員諸共捕まった

特に徹也の頭突きが原因で、鼻血を出している者もいるから、言い逃れが出来ない状況だった


放課後、リリスからその後どうなったか聞かされたが、意外なことに両方とも厳重注意で特に厳しい処分やお咎めなかった

元々テニス部員達にも非があるが認められ、徹也に胸ぐらを掴んで殴りかかろうとした所を目撃した者が多数いた為に、徹也の行動は正当な防衛とされたらしいが・・・徹也が先生達を言いくるめたのが絵に浮かぶ


「なんというか、徹也の先輩になるというのは、結構なプレッシャーだな・・・先輩としてのあるべき姿か・・・」


その後、オレ達自動車部三年生にどうこう誹謗中傷するような奴はいなくなった。三年生の教室の前にあそこまで堂々と先輩として在り方を言われて、考えさせられる者や、関わりたくないと思った者と様々だ

徹也のあの言動は、そういう狙いがあったのだろう・・・大方、涼か奈緒あたりに乗せられたか

前々から思うが、徹也の言葉と行動は人の心を動かす、なにか力強いものがある・・・それを恐ろしいと思うか、頼もしいと思うべきなのか

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ