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走劇のオッドアイ  作者: かさ
SGT地区大会編
58/121

ACT.54 結衣の父親

アンティークな雰囲気と、良いコーヒーの香りが漂う喫茶店たかのす


「自分の娘の活躍を観に行かずに、応援もしないで、ここで変わらずコーヒーを入れる・・・親としてどうなのかな?」


ご年配の男性が、コーヒーカップを傾けながら、店主の鷹見裕司に語りかける


「・・・辛いんですよ、結衣のドライブを見ると、あなた達に殺された兄のことを思い出してしまって・・・怒りや悲しみの複雑な気持ちがね。正直、今、あなたを絞め殺してやりたいぐらいにね。上柳鷹主」


淡々と、いつもどおりに喫茶店の店主として振る舞いながら、物騒な復讐心を語る


「確かに君の兄である、ホークマンの死は、私に責任があるのは間違いない。唯一の親族である君には、その権利はあるだろう」


申し訳なさそうに言う上柳の姿に、裕司は深くため息を付く


「・・・今日は、そんなことの為に来たわけじゃないんでしょう?結衣に事実を伝える日が来た、そう言いたいのでしょう。兄が結衣をここに連れてきて、面倒をみてくれと頼んでから10年以上・・・どういう風に伝えるべきなんでしょうかね?ホークマンの遺伝子で作られた人造人間・・・いや、デザインベビーと言えばいいのか」

「今更ながら、信じられない事実だろう」

「結衣の親として長く過ごしすぎましたよ。事実を知らないまま、車を好きにならずに幸せになってくれればいいと願って・・・いや、事実を知れば結衣は私を恨むか、嫌うんじゃないかって、そっちの心配の方が大きいですね」


親心を語る裕司の姿に、思わず笑い出す上柳


「すっかり親バカになったな。車好きになって欲しくない割には、そんな素振りを見たことないが?」

「そりゃ、結衣が望むなら応援して叶えてあげるのが親としてあり方でしょう?それに、兄さんなら車から遠ざけるような生き方はさせない。結衣がPTSDが発症した後もそれでもあの子は車を嫌うことなく、向かい合って来た。そんな姿を見せつけられればねぇ・・・なんやかんや、私も親であり、車バカなんですよ」

「・・・君なら、ちゃんと事実を伝えられる。そして、結衣も恨むなんてことはないだろう。あんなに優しく強い娘だ」


鷹見裕司という男の元で育ったことは間違いではないと、確信している上柳は、彼の入れたコーヒーを口に運びながらスマートフォンを眺める

画面に映っていたのは、SGTの地区大会の様子だった。2セット目、アルトとアルトワークスRの対決


「ほう、どうやら2セット目を辛うじて食いついたようだ。勝負は3セット目にもつれ込んだか・・・」

「リリスちゃんが走っていたんでしたっけ?怪我をしていても実力は本物って所だろうが・・・もう無理は出来ないでしょうね・・・そうなると最後の望みは結衣か」

「私好みの展開になってきたぞ・・・」


ほくそ笑む上柳の姿に、呆れてしまっている裕司


「本当にあなたという人間が嫌いだ。若者の逆境をどう乗り越えるのか、手間暇をかけて大掛かりな状況作り出し、試したがる・・・昔からそうだ・・・だけど、私も歳をとってしまった・・・認めたくないけど、その気持ちがわからなくない」

「それが私という年寄りの楽しみなのでね・・・もっとも、これを利用しようとしている者もいるからな」

「兄さんの遺伝子情報を元に、さらなる遺伝子操作を加え、作り出されたデザインベビーの実用性を証明するためのアルカディア機関の計画・・・SSR計画とそれの対立候補として鷹の再臨計画として、計画から外されていた結衣と徹也がその候補に挙がり、それが今試されている・・・」

「正直、今のアルカディア機関より、山岡徹也。彼が恐ろしい存在だよ、計画の一部の真相に自力で辿り付き、利用されているのにも関わらず、私を利用しようとしてる・・・彼の行動力と気概は若き日のホークマンに似ている・・・だが、あの思考能力や洞察力はオリジナルになかったモノを彼が持っている」

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