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走劇のオッドアイ  作者: かさ
SGT地区大会編
56/121

ACT.52 SGT地区大会 二回戦 アルトワークスR VS アルト 後編

挿絵(By みてみん)


SGT二回戦1セット目は2周目のハイスピードセクションに入っていた、アルトを操る結衣の後ろをピッタリ追いかけてくる、真里のワークスR。その距離は数メートル

結衣は接近戦に警戒して、視界を閉じたブラインドアイ状態で走るがドライバーの結衣とオペレーターの勇気はここまで不思議に思っていた・・・真里がここまで接近するだけで、何もアクションをしてこないことに

前日の打ち合わせで、後ろに着かれれば、かなり煽る走りをしてくると想定していたのに、そんな様子がない、不思議を通り越して、不気味すら感じさせる

2周目の最終ヘアピンコーナーをクリアし、ホームストレートで勇気君から通信が入る


〈結衣先輩!次の周から気をつけてください!真里先輩は・・・〉


勇気君が言い切る前に、後ろのワークスRから悪寒を感じた。目に映らずともわかった・・・加奈ちゃんと同じ雰囲気の威圧感を感じる


「真里も、フローモードに入れるの!?」

〈ええ、徹也先輩曰く・・・ここからはデータをアテに出来ないみたいです!結衣先輩の技量でなんとかしてもらうしか・・・いや!こちらも可能な限りアシストしてみせます!〉


ホームストレートから、フルブレーキングポイント。フローモードに入った者とそうでないと者の違いが決定的に違った、こちらの更に深いブレーキングポイントを取る真里に、さらマージンを縮められ、その距離は数センチ単位だろうか、背中からピリピリその威圧感を感じさせられた


3周目終盤まで、数センチビッタリ着いてくるワークスRに逃げるアルト。ワークスRを操る真里は余裕があるように見え、いつでも仕掛けられると思うが、まるで逃げる獲物を遊ぶように追い回す



ピットガレージでは、モニターしている勇気は、徹也にスピーカーモードで電話を掛け直していた


〈一応、過去のあらかたは加奈から聞いたよ。道理で憎悪と嫌な感情を感じさせられる走りだと思ったが、フローモードのモチベーションは、結衣と奈緒に対する復讐か〉

「徹也先輩、加奈先輩にやったように、フローモードを解くヤツは使えないんですか?」


先日のフローモードに入った加奈を、打ち破った作戦。それなら対応することが出来るのではないかと、勇気は考えたが、返ってきた返答は期待したものではなかった


〈無理だ、アレはオーバーテイクを仕掛けられる前提で出来るものだ。明らかに潰す目的の相手では成立しないし、そもそも加奈と真里のフローモードのモノが違う。そんなんじゃ解けない〉

「モノが違う?」

〈憎悪の復讐心は、自分自身や道徳を見失っても目的を果たそうとするからな。下手な作戦は相手の逆上を誘うかもしれん。あと、一度使った作戦に対して対策をとっていない程、相手もマヌケじゃない。真里のバックにいる行衛はオレ並みに悪知恵は働く〉


徹也の話を聞いて、勇気は黙って何か手がないのか考えようとするが


〈マスター、つまりもう我々に出来る事は、見守るだけですか?何もできないと?〉

〈・・・少なくとも結衣を信じて、応援するしかない〉


淡々、冷酷な結論を言うAIアイに、表現を和らげて言い直す徹也だが、それは何もできないことを決定付けた言葉であった


レースは変わらず、アルトの後ろにワークスRが追い回す光景が続いていた

通常のレースでも、追走される方は多大なプレッシャーを感じる。抜かれたら勝敗が大きく変わる1on1のルールだと尚更であり、ブロックの技量と精神力の強さが要求される

鷹見結衣という人間は精神力は弱くない。余程の威圧感のあることをしない限りは自分の走りを乱すことはない。ただ、フラッシュバックの発作が起こればどうしようもない

そしてブロックの技術は、徹也の練習メニューでマシになっているとは言え、オペレートなしではフローモードに入ったドライバー相手を防ぎきれる程の技量は結衣にはない。真里が本気で攻めの走りに入れば、簡単にオーバーテイクが可能である。にも関わらず、真里はワザと抜かずに結衣を追い回す。苦しめる為に、これ以上ない機会を伺いながら


観客席では、ザワつきと、榛奈商店街関係の人たちは結衣を応援する声に包まれていた。その騒がしい中で明堂明音と金堂宗太は冷静に分析する


「なるほど、行衛の奴、思った以上にいいドライバーを見つけたものね。実力はともかく、フローモードのレベルは前日の小柳加奈とは一つ上って所か・・・」

「にしても、行衛さん女を見る目はないな。ありゃ、俺でも口説きたくねぇ」

「めずらしいわね、宗太がそこまで言うなんて」


可愛い子に目のない、宗太がそんなことを言うのは滅多にない。例え容姿が綺麗でなくても、性格や芯が通ってるいるなら可愛いという男は、安道真里という人間をお気に召さなかった


「確かに容姿は可愛いし、綺麗だ。でも明音ちゃんもわかるでしょ?あんな憎悪に溢れる走りを全面に出してくる娘を口説くなんてごめんだね。あれは、誰も救えない」

「救えないか・・・的確かどうかはわからないけど、わかる気がする。鷹見結衣と安道真里の間に何があったかは知らないけど・・・鷹見結衣が勝つ方法は、同じ領域に入るしかない。何をもたついているかしらね・・・」


レースは4周目の最終コーナー立ち上がり、ストレートを駆ける2台、5周目最終ラップに突入した。ここまでずっと真里の憎悪の威圧感を感じ続けていた結衣は、精神的に厳しくなって来ていた。自分が持つ最高の走りをしているのに関わらず逃げ切れないのはドライバーとしてはたまったものじゃない。それでも瞳を閉じながら歯を食いしばって耐えていた


「ここまで来たら少なくともこのセットは耐え切りたい・・・!」


そんな思いと焦りが、付け入る隙を出してしまった。タイトセクションを抜け、第14コーナー、コーナリング中に右リアに衝撃が走った・・・ホンの少し接触された程度だろうが・・・その程度の一瞬でフラッシュバックが起きる

ざらつく映像にあの時の事故の光景と、原型を留めていない車から流れ出す流血・・・憧れが死ぬ瞬間を見せつけられる


「あああああああああああああ!!?」


声にならない悲鳴、呼吸も過呼吸になり、意識が飛びそうになるが、無意識ながらも体は辛うじて車を制御させていた


〈結衣先輩!!〉


意識が飛びそうな中で、勇気君の通信で我に帰れた。歯を食いしばり、顔をこわばらせ、吐き気や呼吸を整える


「つぅぅぅ!?」


嫌な感情を無理矢理抑え付け、立て直す。この時気づいたが、アラートが鳴っていた。コチラがペナルティしたという警告だったが、考える暇もなく、そのまま前を維持したまま5周目を走りきった。結衣の心はボロボロになって

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