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走劇のオッドアイ  作者: かさ
SGT地区大会編
55/121

ACT.51 SGT地区大会 二回戦 アルトワークスR VS アルト 前編

SGT地区大会会場から近い病院・・・とは言っても、車で30分程かかる。そして現在の時刻は8時45分、試合開始が9時。

すぐに病室のベットから飛び起きるが、体が思った以上に重たく、膝を付いてしまう

急に起き上がった反動で、加奈も起きてしまう


「ちょっと!?徹也!急に起き上がって大丈夫!?」

「か、体だがダルイ・・・」


どうやら、熱があるようで、上手く体が動かないがそうも言っていられない。対戦相手が相手なだけに、結衣だけで戦うのはマズイ


「うぐぐぐ!うぉりぁぁぁぁ!!」


声を上げながら、気合で立ち上がる


「う、うそーん・・・気合で立ち上がった・・・」


唖然とする加奈に見向きをしないで、近くに置いてあった制服に着替え、身支度をする。病室の扉が開き、何事かという感じで母が入ってきた


「ちょ、ちょっと徹也!?あなたまさか会場に行くきなの!?ダメよ!そんな、まだ顔色が・・・」


母の言う通り、顔色は悪いだろうな。正直、立っているだけでも相当シンドい。だが


「そうも言ってられない!相手が行衛がいるチームなら真っ当な勝負する訳がない!結衣が危ない!」

「大丈夫よ!チームには・・・」

「チームにはアイが協力しているだろ?」


母が言い切る前に、今の商店街チームがどうなっているのかは想像が付く


「AIであるアイは、オレのバイタルが異常を感知して、なにかしら行動を起こすことはわかっていた。そもそも、リリス先輩や勇気にある程度の戦術は教えているし、ピットガレージに残してあるディスプレイにデータがあるから、ある程度の対策は取れているはずだが・・・でも、全員気づいていないと思う。あっちのチームにいる、安道真里って女ドライバー・・・アイツは、フローモードの領域に達している可能性がある!」



午前9時 SGT地区大会 観客席

試合会場の観戦席には前日より、人が多く集まっていた。業界関係者やスカウト人、これは結衣というドライバーに注目している。一方は榛奈商店街の人達や近隣の結衣と仲の良い、小中学生が観戦に訪れており、その中に伊東と桜井がいた


「昨日は誰も応援に来ていなかったのに、今日になってこんなに集まるとは・・・」

「何かしらの意図を感じるわね・・・どうなんですか?坂崎先輩?」

「リリスちゃんに頼まれて、商店街とラッシー。どっちかが決着がつくまで応援しに来るのは控えてくれって・・・まあ、どのみちリリスちゃんに頼まれても決着が着くまで来る人はいなかっただろうしな。どっちを応援すればいいのかわからないって」


伊東と桜井は意外だと思った。恨んでいるなり、裏切り者だと思っていたからだ


「そもそも、自動車競技は資金がモノを言うという理解はあったからな。ラッシーグループが支援して、資金面や設備が充実になって、自動車部が活躍してくれるなら、商店街のスポンサーを降りるという案もやぶさかでもなかったし、ラッシーグループのスポンサーを選んだ子を恨まないって決めていたからな」

「知りませんでした。オレたちは、チームが二つに分かれた以来、榛奈商店街に立ち寄っていませんからね」

「まあ、そう決めても、悪く言う人もいなかった訳じゃないけど・・・昨日の試合、ネットの中継で皆見てたんだよ。なんやかんや、公式の試合でぶつかってよかったかもしれないって皆思ってしまったんだよ。全力でお互い戦い走り合う姿は、何かしらの熱に駆られてしまうようなテンション・・・最終的に、2チームとも商店街のみんな応援してたんだよ」


そう思っていてくれたことに、桜井は涙目になり、伊東も涙目になりかけたが堪えた


「正直、伊東はドライバーとして潰れるんじゃなかってオレは心配だったんだぜ?同年代のリリスちゃんでも凄い実力なのに、結衣ちゃんや加奈ちゃんのような規格外の実力がいるチームでやっていけなくなるんじゃないかって思ったけど・・・杞憂だったようでよかった」

「いーや、そうでもないですよ坂崎さん。去年とか挫けそうでしたけど・・・徹也がいたからこそ、実力を付けれて、ここまで来れたんですよ」


上村先生から徹也の存在を知らされていなければ、きっと腐っていた


「最初会った時は、車を譲ってくれって言い出したりして、なんだコイツって・・・だが、話してみて、すぐに凄い奴が榛奈自動車部に来たって思ったし、その直感が当たっていたようだ」

「そういえば、あれ坂崎さんのアルトでしたね。外見も中身も魔改造されて、そんな面影ないですけど」


つい一ヶ月前まで、一般道を配送していた酒屋の軽自動車が、このレース場で最高時速200km/h台で駆け抜けて、法定速度以上の速さでコーナリングしていく姿は、元持ち主としては、異様な光景であり、あんなにポテンシャルがある車だと思い知らせたようだ


「それに、今年の4月から今日まで商店街チームを引っ張って来たの徹也って聞いてるし・・・」

「それだけに、徹也が抜けている穴がデカいんですよね・・・昨日、やれることはやりましたが。その穴を埋めるほどに至っているとは思えませんし・・・」


午前9時、各チームがピットレーンで対面し、整列し、運営委員がとり仕切る


「それでは、榛奈自動車部商店街チームと私立ヴェルサイ学園チーム1との試合を開始します!先行は榛奈自動車部、後追いはヴェルサイ学園。両チーム、礼!」


各チーム一例し、準備と取り掛かるが、RPスーツを着用している真里が、奈緒に近づく


「・・・久しぶりね、奈緒」

「そうね、真里。まさか、SGTのドライバーになっているなんてね。どういう風の吹き回しやら」

「そうね、私を裏切った奈緒と、前々から気に入らない結衣を後悔させるいい機会だと思ったから」


クスッと笑う真里の表情に、邪悪なものを感じさせるものがあった


「真里、アンタが何を考えているのかは想像がつく。だけど私は結衣を信じる。真里なんかに負けない」


奈緒の返答は、真里にとっては気に入らないものであり、歯ぎしりしながら睨みつける。その顔は、あの日決別した時と同じ顔だった。真里はハッキリ言えば美人だが、それを台無しになるような憎悪に満ち溢れた顔になっていた


「・・・徹底的に潰してあげる・・・!奈緒の信じるものを全部・・・!」



一方、国道では一台かっ飛ばす白い車が走っていた。それはレトロ車両とも呼ばれてもいいぐらいの年代の車であり、結衣が操った車・・・BNR32 GT-Rが試合会場に向かって走っていた


「・・・ダメか!試合が始まったんじゃ、全員通信端末等は置いてるか・・・!」


病室から抜け出した徹也と加奈は、華の運転で試合会場に向かっていた。徹也のスマホは会場に置きっ放しになっていた為に華のスマホから覚えている番号から、チームメンバーにかけるが、試合に集中する為に、誰も電話に出ない。持ち歩いていない状態であった


「よりによって、私のスマホは充電切れだし・・・」

「加奈、伊東先輩の番号とか覚えていないのかよ!?」

「アンタみたいに番号まで覚えきれないわよ!普段かけてる相手ならともかく・・・なんで全員の番号を記憶してんのよアンタは!?」


どうしたものかと、考えて・・・R32のインパネのモニター気付く


「加奈、そこのモニターのツマミをの部分を長押ししてくれ」

「これ?」


加奈が長押しすると、モニターの暗転して画面が切り替わり、いろんな文字の羅列が並ぶ


「AIコールコマンド、アイ。マスターテツヤ、優先し、応答せよ」

『AIコマンド受託、音声パターンからマスターテツヤと確認・・・現在AIアイは、最優先案件で起動中、コマンドを拒否します』

「ダメか・・・」

「なんなのこれ?」

「R32を一時的にオンラインに接続させて。AIアイを強制的に呼び出すコマンドだが・・・アイツ、コマンドを自らの意思で拒否しやがった」


AIアイを呼び出せないとなると・・・後は、思い出した電話番号にかける


「わからない番号だから、出るかどうか・・・」

『もしもし?』


繋がった!


「上村先生!徹也です!」

『徹也!?あなた病院にいるはずじゃ・・・ちょっと待て、その周囲の音、あなた車に乗って移動してるわね!?』

「ええ、抜け出してきて、今そっちに向かってる所ですよ!試合は!」

『もう、始まって一周し終わる頃よ?』


そこから、上村から必要最低限の現在の情報を聞きだし、状況を把握する


『そんな感じよ』

「現在オペレートをしているのは、勇気でアイがアシストしている・・・上村先生、3周目辺りからはデータをアテにするなって伝えてもらえません?」

『それはどういうこと?』

「安道真里はフローモードに入れるドライバーかも知れません。仕掛けるとしたら1セット後半から。結衣には持てる技量で逃げ切れって伝えてください」

『わかった!すぐに伝える!』

「あと、上村先生。観客席ってどんな感じになってます?」

『ん?昨日より、人は多いわね。垂れ幕とか、あれは榛奈商店街や、近隣の学校の応援団ね』

「・・・そうですか」


電話を切り、上村の話で状況が揃っていたことを確信した徹也。夢の中で、ホークマンが言っていたことがようやく理解出来のだ


「あとは、きっかけか・・」

「徹也、安道真里がどうしてフローモード入れると思うのよ?」


不思議そうに加奈は尋ねて来るのも当然だろう。一見ではそう見えないだろうから


「あくまでもその可能性があるって話だが・・・オレはほぼ確信的だと思って話す。ヴェルサイ学園に行衛康彰の名前があったから、安道真里のタイムアタックの様子とか見直したりしたんだがな・・・あれは執念というより、もはや怨念のような走りなんだよ。何か強い憎しみとか、それをモチベーションにしているだろうな。それに実力も結衣やお前と勝るとも劣らない。フローモードは強い思いと、モチベーションでその領域に入るからな。安道真里にその才覚を持っている可能性は極めて高いと踏んでる」

「マイナス的なモチベーションでも、高い集中力を発揮できるものなの?」

「ポジティブでも、ネガティブでも、それをどう捉えるかは人次第だからな。しかし、安道真里に関していえば例外かもな。かなり闇を抱えてるかもな」


加奈は、奈緒や結衣のことだろうなっと思ったが、運転している華や徹也は別の根本的な原因に勘付いていた


「徹也、アンタならこの試合展開どうなるか予想がつく?」

「このままなら間違いなく、結衣は精神的に潰される。せめて1セット分時間稼ぎが出来れば・・・状況を打開出来る」

「到着まで後20分程・・・インターバル入れても3セットまで持ち堪えないといけない・・・それまでに徹也がいけば・・」

「いいや、オレじゃない。状況を打開する環境は既に整ってる。後はキッカケなんだが・・・加奈、お前、大きい声を出す自信あるか?」

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