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走劇のオッドアイ  作者: かさ
SGT地区大会編
53/121

ACT.49 神ノ代、鷹の残像

神社だ。薄いセピア色の背景の世界に神社の境内に立たされていた

鼻血を出してぶっ倒れて、そこから意識を戻ったらこんな所にいた。いや、正確には意識が戻ってないな。夢か死後の世界か走馬灯か・・・大方、夢だと思うが


「しかし、確かこの神社・・・懐かしいな、神ノ代神社だ」


神ノ代(かみのしろ)神社、自分が暮らしてる地元の神社であり、小さい頃よくここで遊んだり、初詣や縁日によく来ていた。まあ、どちらかというと、今目の前にいる人物に無理矢理に連れてこられたパターンが多いが


神ノ代結(かみのしろ むすび)さん・・・」


長い髪を後ろにまとめ、巫女服を着た女性がオレの目の前に立っていた。当時の年齢を考えると高校生の頃だ

現在は大学を卒業して社会人になっているはず、当時の自分の記憶の中で形成された幻影と言うべきか

彼女はコチラに近づき、顔に触れてくる


「死の運命を乗り越えたようだね、テツちゃん。こんなに大きくなって・・・あの時の奇跡が上手く行ったようだね」

「奇跡?」

「あれ?覚えていないかな?確かテツちゃんが8歳の頃だっけな?」


結は意地悪そうな表情になって、コチラを見ると。親指を思いっきり噛んで血を出させると、その血を含んだまま口付けされた

思い出した、小さい頃にこれと同じことをされたんだ。この人にオレの初めてのキスを奪われた。初めてのキスは鉄と血の味だったのを思い出した


「思い出した?」

「ええ、オレの初めてを奪った忌々しい相手ということは」

「あはは、大きくなっても相変わらずだね!・・・本当に、よかった」


結さんの反応を見て、夢にしては不自然すぎると感じ始めてた。まるで、相手も同じ夢の中で会話をしているんじゃないのか?


「ふむふむ、おおよその事情はわかった。テツちゃん。あなたの大切な妹を救ってあげて、このままだと彼女の心は壊れてしまう」


真剣な表情で、コチラに語りつける結さん。実にらしくない。いつもからかったり、笑顔を絶やさない人がこんな表情をするのは見たことがない

というか、妹ってなんだ?自分の出生自体わからないから、兄弟、姉妹がいる可能性はあるかも知れないが・・・まさかな


「あなたに、神ノ代の祝福があらんことを」


そう言われた瞬間に、神社の境内から見たことのない歩道に場面が変わった。いや、知っている。何度もここをニュースの動画で見返し、転校してこの街に来た時に花束を置きに来た場所

そして、その道路に悲惨な姿をし、原型を留めていない特徴のある蒼い塗装の日産GT–R


「ホークマンが死んだ道路、そして事故の場面か・・・!」


随分趣味の悪い夢を見せてくれる。結衣程ではないが、大きなショックを受けた事故だからだ。憧れで、目標の人が帰らぬ人になってしまった・・・それを目の当たりにした結衣は、今でもこの光景をフラッシュバックするらしいから、想像できないほどの精神的ダメージを負ったのだろう


「待てよ・・・この状況なら、まさか・・・」


辺りを見渡すと、泣きじゃくって座り込んでいる小学生ぐらいの女の子がいた。近づいて顔を見ると、その瞳は金色と青色の瞳のオッドアイ、結衣だ

ショックで過呼吸になり、その場から動けなけないようだ。こちらから触れようとするが、すり抜けてしまう。結衣にもオレのことが見えていないようで、こっちがまるで幽霊のようだ


「それが、鷹見結衣の心が壊れた瞬間だ」


自分の後ろに、聞き覚えのある声がした。それは、聞き馴染みがあり、優しい声。鷹の被り物を被っていたその男が立っていた


「ミスター・ホークマン・・・!!」

「大きくなった、徹也」


憧れであり、目標であり、そしてオレの名付け親・・・ホークマンが目の前にいた


「夢の中だから、オレの願望のセリフかもしれんが・・・とりあえず、そう言われて嬉しいよホークマン」

「確かにこれは君の夢であって、君だけが見ている訳ではない」


言葉の意味がいまひとつわかりづらい。普段なら、相手の表情や発する言葉のトーン等で思考を読めるんだが、ホークマンのように被り物をしている者、表情を変えない者、嘘をつくのが得意な相手では思考が読み切れない


「徹也、状況は全て揃った。結衣を救ってやってくれ。彼女はこの時から、理想の重荷に生き続けてきた。目に見える全てを救いたいという」

「状況が揃った・・・なんのことだ?」

「それは、徹也が知っていることなんじゃないのか?その時の為に打った布石」


オレの夢の中で、オレの思考を読んで、そして結衣を救う状況が全て揃った・・・思い当たる節があった。それは結衣の性格と気質と才能、結衣がこれまで築き上げたものを使った策。だが、同士討ちになるラッシーチーム相手には絶対使わない、いや、使えなかった


「ホークマン、なんで貴方は結衣のことを?」

「目の前に泣いている女の子を救えずに何がヒーローだ・・・もっとも、私は死んでいるが」


シャレにならないことを言ってくれる


「徹也、結衣。君たちは近いうちに真実を知ることになる。君達なら受け要り難いかもしれないが・・・これは私の罪であり、君達に関わるのはせめての罪滅ぼしだと思って」


悲しんでいる・・・表情が見えずとも、わかる。なぜだ?


「それは・・・結衣とオレの出生に関することなのか?」


思い当たることで、聞いてみる。両親がいない、そして日本人では珍しいオッドアイ・・・まともな出生ではない可能性は考えてはいた。だが、ホークマンはコチラの質問に答えず、一言


「・・・アルカディア機関には、気を付けろ」


ホークマンがそう答えると、背景が真っ白になり、そこにいた結衣やホークマンがいなくなり、一人ぼっちになってしまった


「・・・一人でどーするんだ?」

「あら?帰れないの?テツちゃん?」


再び結さんが現れた


「帰るというより、目覚めるのが正しいんじゃないのか?」

「そうかな?まあ、どっちでもいいか。私もホークマンも必要なことを、知りたいことを知れたし。テツちゃんの目覚めをずっと待っている娘がいるから、いい加減起きないとね」

「待っている?」

「気づかない?ずっとテツちゃんの左手を握っているのよ?」


結さんにそう言われて、左手に何か握られてる感触があった。握り返してみて・・・


目を開けると、小さい無数の穴が空いた真っ白な天井。見渡せば、点滴やら、腕に針が刺さっていた

ここが病院だというのはわかった。そして、握っている左手は、加奈の手を握り返していた。夜通しで看病していたのか、加奈は寝ていた


「・・・やべぇ、可愛い」


加奈の寝顔を見て、ホントこいつ可愛いなと思って眺めていたが・・・辺りが明るくてハッとする


「そうだ!?今何時だ!?」


時刻は8時45分・・・二回戦一戦目の開始は9時。試合開始が間もなかったのだ

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