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走劇のオッドアイ  作者: かさ
SGT地区大会編
52/121

ACT.48 箱崎姉弟と結衣 5

「私はあの時、選択を間違えたかもしれない」


アルトの車内で、勇気君と昔話を振り返っていてた。奈緒ちゃんと私が親友になれたあの日のこと、状況が状況もだったが、私は真里を完全拒絶してしまった


「でも、聞く限りじゃ結衣先輩は何も悪くないような」

「その後の話はしたことないっけ・・・真里を張り倒した日、一部生徒は喜び、感謝していた。スカッとしたとか、よくやったとかね。言っていたのは真里たちに虐げられたものやイジメられた人達。そして真里は周囲から浮いた存在になり、無視して、誰も相手にしなくなった。自分がやったことは間違えたって・・・こんなの私が望まないことだった」


聞いてる勇気君は最初は意味わからず浮かない表情だったが気づく


「力で「悪を制した」結衣先輩の考えとは反すること」

「うん、別に私は悪者を倒す正義のヒーローなんかになりたくないし、なんなら正義の味方、正義のヒーローなんてものない方がいい。でも、私に喜んだ人達はそういう目で見ていた」


別に正義のヒーローを嫌っている訳ではない、むしろの好きだからこそ実在しない方が世の中平和だからだ

人がもっとも残酷になれるのは、正義という大義名分を得た時だ。歴史がそれを証明している


「真里に虐げられた人達は救われたかもしれないし、奈緒ちゃんも真里の呪縛から解放出来た。でも、真里自身が救われないんじゃ意味がない。真里が転校の機に私は責任から忘れていた・・・いや、逃げたんだ」

「結衣先輩、それは余りにも優しすぎる。いや、思い上がりもいい所だ。真里先輩は自業自得です」


勇気君の厳しい言葉は、その通りだと思うが


「それでも、もし時間をかければわかりあえた可能性もあったかもしれないし、歪な関係でも、真里は奈緒ちゃんのことを心から信頼していた」


『裏切り者』・・・最後に奈緒ちゃんに対して言い放った真里の言葉は、そうなんだと思う

私のエンブレムを奈緒ちゃんに投げさせたのは真里なりの信頼の確認だったんだろう


「・・・もし、徹也ならどういう選択したかな・・・」


ふと脳裏に、徹也のことを思い浮かべる。徹也ならこういう状況の時になったらどうしているのか?言動で上手く出来たのではないのか?真里とも良好な関係を築けたのではないか?

いや、違う、徹也はもしなんて考えない。これからのことを最優先で考えるのではないか?過去ではなく今をどうするべきかを考えるべきなんじゃないか。徹也がチームを率いて、アルトを完成させ、そして勝利に導き現在に繋げたことを

ああ、そうか・・・私のすべきことはもしを考えることじゃない、今を考えないといけないんだ


「・・・勇気君、ありがとう。昔話して良かったよ。私がすべきことがわかった。私は真里に立ち向かう。例えあっちが悪質な事を仕掛けてきても耐え、真里をドラテクの実力で倒す。それが今の私が真里に対して出来ることだ」


最初は逃げたい思いがあった。恐れもあった。だが立ち向かなければこれまでの私を否定することになりえる

勇気君は不安そうな表情で、何か言いたそうな感じだったが言葉を出さなかった


「・・・結衣先輩は・・・いや、このチームは勝ちます。先輩達の技術の結晶のアルトと、そして僕がアシストしてみせます」


おそらく、後ろ向きの言葉を言いたかったのだろうが、勇気君はあえて前向きな言葉で私に賛同してくれた


「勇気君・・・いつもは奥手で内気な感じなのに、いざという時は頼りになること言うし、行動をするよね・・・そういう所、格好良いよね」


言われた勇気君は恥ずかしいのか顔を赤くしていた。こういう反応をするから勇気君は面白い・・・でも、本当に頼りになるし、彼の名前通りに勇気が沸く


「そ、そうだ!結衣先輩は徹也先輩をどう思っているんですか・・・えーとその・・・」


話題を変え、早口で、顔を赤くしたまま言う勇気君


「さっきボソッと名前を言ってましたし、普段もよく話したり、結構意気投合してる所を見ますし・・・」

「うーん、徹也って不思議なぐらい意見とか話が合うだけど。なんというか、自分の分身?なんというかお兄さんみたいな感じなんだよね。呼び捨てで呼んでてもなんというかもどかしいさを感じたりとか」

「好意がある?」

「いや、それはない。徹也にも『異性として好意を持てない』ってハッキリ言われてるし、私もそう思ってるから不思議なんだよね」

「そ、そうなんですか・・・」


何故か勇気君は安堵していた。本当にどうしたんだろう


「ちょっと勇気君大丈夫?なんだか顔が赤いし、熱でもあるんじゃない?」


勇気君の額に手を当て、顔を近づけると、彼はさらに顔を真っ赤になる


「だだだだだ、大丈夫です!結衣先輩!ちょっと疲れてるだけかもしれない!そうだ!もう寝ないと!それじゃ、結衣先輩お休みなさい!」


慌ててアルトから降りて出て行く勇気君。あの調子なら大丈夫かな?

勇気君が出て、会話する相手がいなくなると瞼が重くなってきて、そのまま眠りについた



「もう!勇気ちゃん!なんで肝心な所で押していかないのよ!途中までは良かったのに!」


杏奈とリリス、そして上村まで盗み聞きに参戦していた


「いや、上村先生。結衣のあの鈍感というか、無警戒というか朴念仁ぶりはなかなか・・・勇気もよく頑張ったほうじゃないですか?」

「だからこそ、ガンガン押さないといけないのはわかるでしょ杏奈。姉といい、弟といい・・・素直じゃないというか、もどかしいというか」

「だからこそ面白いじゃないですか?」

「わかるけどねぇ・・・青春はそう長くはないんだからねぇ」


杏奈と上村は完全に面白がって聞いていたが、リリスは真剣に考えていた


「・・・上村先生。明日の試合・・・」

「・・・一応、RPスーツを着ておきなさいリリス」

「ありがとうございます」


私怨と私情があるとは言え、結衣の先輩として、リリスはその力になりたいというのは、結衣の話を聞いた杏奈と上村は理解してしまった。理屈で止められないという諦めもあったが


過去を振り返り、過去を知り、信じる、決意する、力になりたい。過去の私怨と復讐が待ち受ける試合に臨む榛奈自動車部



「しかし、結衣のあの無垢でいい娘だから勇気ちゃんがいつ先を越されるか心配なのよね・・・先生としては結衣と勇気ちゃんがくっついて欲しいけど」

「あれ?上村先生知りませんっけ?学校内に結衣のファンクラブがあることを」


杏奈が言う、鷹見結衣ファンクラブ。なお、結衣当人は感知していない


「ええ、それだけ結衣が人気あるから心配なんだけど?」

「あれの主目的は、結衣と勇気をくっつけようというのをモットーに掲げているんですよ。鷹見結衣ファンクラブというのもは表向きの名目で、正確には結衣と勇気ラブラブ大作戦クラブですよ?結衣が他の男子に言い寄られないのはその存在がでかいんですよ」


ちなみに会長は奈緒。当然結衣と勇気はそんなことを知らない。知らぬは当人ばかりなり

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