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走劇のオッドアイ  作者: かさ
SGT地区大会編
46/121

ACT.42 重なる因縁 2

行衛康彰。去年、SGTの後期地区大会で戦った相手であり、榛奈自動車部と鷹見結衣にとっては忌避したい人物であった

地区大会本戦、行衛と結衣の1on1の試合

行衛は結衣に抜かれ、ノックダウンで勝負が着きそうになった行衛は、自爆覚悟のプッシングをし、アルトワークスを大破、結衣の心に深い傷を負わせた相手である

試合後に謝罪もなく、悪びれない態度にSGTの運営はライセンス剥奪の重い処分を下した

榛奈自動車部メンバーは、2度関わることがない相手だと思っていたが


商店街チーム ピットガレージ


「行衛康彰、まさかSGTに参加しているなんて・・・想像していなかった」

「そして徹也とも因縁のある相手ってわけか・・・」


商店街チームは集合し、これまでの経緯を話をした。明堂学園に行衛がいたこと、海王渉と話したこと、そして


「安道真里先輩・・・よりによって」

「その安道真里って、結衣と奈緒、そして勇気は顔見知りなの?」


リリスがそう言うと、三人は首を縦にふるだけで、言葉が出てこなかった


「結衣、勇気はともかく。奈緒、らしくないわね、いつものアンタならハッキリ言うのに」

「杏奈先輩・・・すみません。正直、あまりぶり返したくない過去というべきか・・・」


奈緒が言いづらい内容となると、よっぽどのことかと察するリリスと杏奈


「リリス先輩、次の対戦相手の映像見ていたようですけど、どんな走りをしていたんですか?うちの兄貴のチームを破ったチームは」


奈緒を思って、阿部が話題を変えよう話をリリスに振る

チームアバントは、阿部の兄が監督をしているチームである


「うーん・・・これがね、1セット目の2周でノックダウンで決着がついてしまってるから情報が足りないだけど、実力は結衣に劣らずというべきなのか、マシンスペックがいいのか・・・」

「車種はなんです?」

「HA22型のアルトワークスR」

「ワークスR!?あのアルトワークスRなんですか!?」


結衣以外のメンバーがその車種の名前を聞いて驚く


「えーと・・・ねえ奈緒ちゃん、ワークスRって?」


恐る恐る、奈緒に聞いてみる結衣


「競技用前提に作られた受注生産のアルトワークス。それがワークスR。超希少車種でプレミア価格が付けられるほどの車なの。普通のK6Aターボと違って、ハイカム、鍛造ピストンが組まれ、5速フルクロスミッション、LSD、強化センターデフ、ハイフロータービン、大型インタークーラー等、純正の仕様で装備されてる、軽自動車のGT-Rとも呼ばれた車なのよ」

「そんなアルトワークスが実在してるなんて・・・」

「でも、SGT前提のチューンしてるなら、そんな大した差はないと思うけど・・・」


SGTの仕様にチューンする際は、フルチューンと呼べるほど改造を施されるのが大半であり、メーカーチューンやスポーツ仕様程度ではスペック的にとても追いつかない。その為に大した差はないと言える

奈緒や阿部のメカニック二人は、そう驚異に感じていなかったが、杏奈はそうではなかった


「いや、21型以前ならともかく、22型のワークスRは車体自体も力入ってて、その為にコストが高すぎてあんまり売れずに、ワークスRのなかでもさらに超希少車の位置になってる。20年前の車でも車体はしっかりしているというので評判はあったはず。それにワークスRのK6Aもベースがよく耐久性も優れているとも聞いてる・・・そして映像を見る限り、ストレートで全く駆動が途切れてない」

「電子式のシーケンシャルミッションということですか、杏奈先輩?」

「そうよ、阿部。HA36型のアルトRSを参考にしたパドルシフトとシーケンシャルミッションのチューンのパーツ出回ってるは知ってるでしょ?おおよそそれが組まれているとは思う」


アルトRSの登場で、それを参考にしたパドルシフトチューンセットがとあるパーツメーカーから販売はされている。SGTの規定で3ペダルが定められており、取り付けの難易度も高いのもあるのと、パーツ自体高額の為に、660クラスではHパターンの競技用クロスミッションが搭載車両が大半である


「もっと1on1バトルでの走行映像があれば、詳細なスペックとドライバーの特性は把握出来るんだけど・・・徹也なら、この材料で把握して、戦略とかセッティングを思いつくんだろうけどな」


頭を抱えながら、苦い顔で映像をみる杏奈。未知数な相手に、チーム内に不安の空気が漂う


「おいおい、オレたちに勝ったのに随分暗い雰囲気じゃないか?リリス」


その暗い雰囲気を打ち払うように、ピットガレージに入ってくる人物達


「悠一!それに、鈴に芝君も・・・」


伊東、桜井、芝が来た


「伊東先輩達、片付けして帰ったんじゃ」

「いや、車の片付けとか多田と一年生達に任せたんだよ結衣。徹也がいない状況じゃ、一人でも多く戦略を考える奴がいるだろ?それに違うチームで争い合ったとは言え、所属は同じ学校の部活仲間だ、協力するに決まってるじゃないか。そうだろ?鈴、芝」


桜井と芝は小さく頷き、伊東と同意する


「それに、あっちのメンバー表を見たんだよ。行衛康彰がいるなら、オレたちも黙っていられないからな」

「・・・協力してくれるのはありがたいけど、悠一。情報が足りなさ過ぎてどうしたものかなって・・・」

「たしか1セットのノックダウンで決着が着いた試合だろ?確かに情報は足りないかもしれんが、徹也が次の対戦相手のことを考えていないと思うか?あらかじめ対策と用意はしてると思うぞ?」


そう言うと、伊東は映像を再生していたデスクトップを触れていくつかのファイルを開こうとしたら、突然モニター全てが真っ黒になる


「あ・・・あれ?」

「ちょ、ちょっと悠一何やってんのよ!?」

「い、いやファイルを開こうとして突然電源が落ちるとは思わねーよ!?」


桜井は伊東を責めるが、モニターが再起動し


〈ハック完了、情報統合掌握完了、システムオールグリーン・・・現在必要とされる情報を提示・・・〉


女の子のボイスが流れ、モニターに次々ファイルが表示され、勝手に動く


「その声・・・もしかしてアイちゃん!?」

〈その通りです、奈緒様。そして初めまして、伊東悠一様、桜井鈴様、芝浩史様。私はAIユニットのアイと申します、以後お見知りおきを〉

「あら、コチラこそ。よろしくアイちゃん」


面を食らった伊東に対し、あっさり状況を受け入れる桜井にいつも通りの無反応の芝


「アイちゃん、どうして?」

〈ご主人のバイタルが一時期的に低下し、倒れたことを確認。こういう事態を想定し、あらかじめご主人のデスクトップに侵入できるように私が密かに用意していたのですリリス様。ご主人に代わりに、皆様のお役に立てれるようにと〉

「AIにも、徹也がこうなることがわかっていたのね・・・それなら」

〈休めと言って、ご主人にそんなこと言っても聞かないというのは、ここ最近付き合った皆様方ならご理解いただけると思いますが〉


みんなして、うんうんとアイの言うことに頷いてしまう


「しかし、このファイルと情報・・・徹也の奴、やはりその先を想定していた訳か・・・それに、これは行衛の走行パターンか?」

〈それは一年程前のデータですね伊東様。練習試合でバトルする機会があったのでその時のかと、安道様の走行と戦術は行衛様のパターンと酷似していたので、表示しましたが・・・〉

「これだけのデータがあれば、戦略とセッティングは立てられるんじゃないか、リリス?」

「ええ。なにせ悠一と鈴がいるなら、いける!」


希望が見えてきたことでチーム内に、歓喜の声があがる

未知数な相手の後ろが見えてきたからだ


「盛り上がってる所悪いけど、皆んな休憩しない?夕食もまだでしょ?」


ステンレスの大きいオボンに、おにぎりなどの食事を持ってきた上村


「先生、しばらく姿を見ないと思ったら・・・徹也の容体を確認しにいったんじゃ?」

「それはついでにね。徹也の方は、大事に至ってないけど、熱も出てきたみたいで、とてもじゃないけど明日試合に来られないわ」

「そうですか・・・」

「はいはい、そう暗くならないの!らしくないわよ結衣。とりあえず腹ごしらえしたら、各自作業に取り掛かるわよ!まだセッティングが出来てないんだから、今日は夜更かし許しちゃうわよ!」

HA22型のアルトワークスのグレードにワークスRは現実に実在しない車種です。

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