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走劇のオッドアイ  作者: かさ
SGT地区大会編
42/121

鷹の遺伝子と鷹の娘

観客席

ホームストレートやモニターが少し見づらい端っこ側

殆ど観客や関係者もおらず、榛奈高校同士の試合を静かに眺める

流石ホークマンの子供達というべきか、加奈も結衣も人並み外れた走りをし、今まで明堂学園の連中を注目していた報道陣と業界の関係者がレースに夢中である


「ふむ、小柳さん?それとも早瀬教頭かしら?こんな所でわざわざ付け髭やら変装して、本来ならラッシーチームの所にいないといけない筈じゃ?」


声をかけられ振り向くと、徹也の母親の山岡華がいた


「・・・悪役である私があそこにいても士気が下がるだけだ。しかし、それなりに変装に自信はあったんだがな、さすがは徹也の母親というべきか・・・今の私は小柳だ」

「ただ一人の父親としての小柳さんかしらね?隣、よろしいですか?」


どうやってここにいるのを知ったのかは聞くだけ無意味だろうなと考えながら、受け入れた


「加奈ちゃんは、やっぱりあの場所にいるべき娘ね。それ以上に本人も走りでそれを主張している」

「・・・走りを見ただけでわかるのか?」

「さあ?テキトーに言ってみただけど・・・その反応を見るとその通りだったかしら?私は車のことはある程度しかわからないからね」


・・・この人相手だと会話のペースを飲まれる。自分でもらしくないと思う

アルカディア機関の小柳家の当主にて、工作員として鍛えてきた私相手に、この山岡華は巧みな話術で優位に立ち情報を取る

協力関係になったのも、山岡華の話術によるものだ


「その表情と、その考えに云ったたところ。やっぱり加奈ちゃんはアルカディア機関とは決別すべきと決心がついたところかな?」

「元々離れさせるのを目的で今日まで鷹の再臨計画に便乗してきた。桜井鈴、あっちの顧問の上村礼司と成海リリス、そして事情が知らないだろうが勘付いている伊東悠一。彼らの協力があって今日まで来られた」

「全ては、ホークマンの娘・・・いや、ホークマンの養子である加奈ちゃんを自由にする為に・・・鳥籠に囚われた雛を解放する為に」


それがホークマンが死後に託した願いだから



「事情が事情なだけに強引な手は使えないし、とは言え過去の事実を今明かせばもっとも親しい結衣ちゃんとの関係が崩壊する可能性があるか・・・難しいところね」

「加奈が憎悪を抱いて二人の関係が悪くなることは彼も私も望まない。今の加奈に真実を伝えるわけにはいかないから実に遠回しかつ、自らの意思で決別させないといけないが・・・」


自分の居場所を作り、親友とも呼べる存在、仲間達に頼られ、ただの女の子の小柳加奈として生きていく事を選ばさせる。その手回しも準備も出来ている・・・はずだったのだが

山岡華が聞き出した加奈の本心は、想像より臆病な子というのを知らされてしまう

物心つくころ前からアルカディア機関の工作員として育てられ、家族の愛も与えられず、人の繋がりの大切さを教えられず、名前すらないまま10年近く過ごし

性別が女ということで色仕掛けも仕込まれ、初体験も終えている

そんな環境で育てられてた人間が、世間一般的な女の子として生きていくというのは、あまりにも未知の世界のだろうか

正直、遠回しな手段で導くのは手詰まりであった

私や話術が達者な山岡華・・・数多の言葉を交わしても、加奈の生き方を変えることは難しいだろう


「・・・少し話題を変えますけど、この勝負。小柳さんはどちらが勝つと思います?」


3セット目、山岡徹也と伊東悠一の勝負となった1on1のバトルの方に話題を変える山岡華


「均衡とした勝負になると思うが・・・勝つのは徹也だろうな。伊東もかなり実力者だが・・・言葉では説明しにくい、何かを感じるからな徹也には」


ホークマンの面影がもっとも近く、そしてSSR計画で生み出されたデザインベビー達とも異なる異質とも呼べる才能がそう感じさせるのだろう


「人を惹きつける魅力と言動に観察眼、それを活かす洞察力・・・どれもSSR計画にも想定されず、ホークマンにもなかった才能・・・もし、時代と環境が違えば間違いなく支配者として君臨したであろう危険極まりのない力を持つのが山岡徹也・・・走りと殆ど関係のない要素なのにな」

「兄さんや徹也もよく言ってたけど、頭が良くなければ現代の車は使いこなせないって・・・そういことなんじゃないかしらね?」


今の車は、AIやナノマシン工学、システム工学が絡むが複雑かつ単純に使えるようにはなっているが

限界領域で走らせるとなるとそれらの要素を学ばないといけない・・・無知な人間では速く走らせられないのは正しい


「しかし、小柳さん・・・徹也が支配者って面白い表現をしますね。私は詐欺師に向いていると思ってましたけど・・・加奈ちゃんのこと、徹也に任せてみたらどうかしら?」

「彼にか?・・・そもそも協力してくれるのか?」

「徹也はそういう事を見放さないタイプだからね。加奈ちゃんがこの居場所と車が好きであるなら・・・それに、徹也は加奈ちゃんに惚れているから事情を話せば何が何でも引きとめようとする」


もしかしたその可能性はあるが、華の提案には不安がある


「不安はわかりますけど、徹也は自分のその力を自覚してる上に危険性も理解していますよ。小柳さんが支配者と感じるのは徹也がその力の危険性を理解していないと思われているからでしょう?あの子はその力を悪いことに使いませんよ・・・あの子が信じるヒーローに誓ってね」

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