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走劇のオッドアイ  作者: かさ
SGT地区大会編
40/121

ACT.37 SGT地区大会 一回戦 2セット目 S660VSアルト 〈フローモード〉

グリットラインに前後に並ぶ、アルトとS660

シグナルが赤・・・黄・・・緑に変わり2セット目スタート

2台のスタートダッシュのタイヤスキール音が鳴り響く

スタート直後、アルトがS660を少し離す

低回転、中回転域のパワーならアルトに軍配があがる、スタートし第1コーナーから第2の緩やかなコーナーあたりで距離が一定になるが


第3コーナーブレーキングポイントから後ろから重圧感のあるプレッシャーを感じたが、徹也の後ろを気にするなという言葉を思い出し、最速のラインで振り切る体制で行く


「気にするなって言ってたけど・・・これベタ後ろにいる・・・」



「タイトセクションだとやはり速い、フローモードじゃないと振り切られていたか」


タイトセクションを抜け、ハイスピードセクション

アルトの数十センチ後ろを追う、多田の言う通りタイヤの余裕がなくなってリアが滑る上にトラクションが弱くなっている為にハイスピードセクションでも並べられず、後ろを着いていくので精一杯だ

第17コーナーからフルスロットルセクション、均衡は崩れることなく第20最終上りのヘアピンコーナー

フルブレーキングもこれ以上ないレベルで突っ込むがアルトはその上をいく


「よく逃げ切る・・・やはり速さだと結衣が上か・・・!」



商店街チーム ピットガレージ


「加奈の動きなんなの・・・本当に車の動きなの?」


運営の管理してるドローンから映し出されているモニターを見て、奈緒を初めとするモニターを見ていた全員が加奈の走りに唖然とする


「徹也、これが・・・」

「ええ、加奈はフローモードに入ってる」


リリス先輩が確認してくる

極限の集中状態、フローモードに入ったドライバーの走りはもはや車とは思えない動きをする。外したラインから速い走りが出来るようになる

リリス先輩とのやり取りを聞きながら、疑問に思った杏奈先輩が聞いてくる


「徹也、フローモードって具体的にどういうものなの?極限の集中状態だけじゃわかりづらいというか・・・」

「オレもフローモードに入れる訳じゃないんですが、身体能力が一時的に強化される、特に動体視力。今の加奈は周囲の動きがスローモーションに感じてるはず・・・それに伴い視力と五感で感じる情報を最低限かつ迅速に把握しきることで車のポテンシャルを余すことなく使いこなし走らせることが出来る。今の結衣の超空間認知能力程ではないと思いますが、それほど車の動きを感じ取れている」

「加奈のあの動きはそういうことなの・・・?ラインを外して速く走れるものなの?」


アンダーを出したり、リアをスライドさせて走っている加奈の走りは一見ラインを外してるように見える


「タイヤと車を効率よく動かせれば一定のラインを外してもある程度はリカバーして走れる・・・リアのタイヤが万全の状態ならかなり驚異だったはず」


リリス先輩の言葉に疑問を感じる杏奈先輩


「それなら最初からフローモードに入れば良かったんじゃ・・・?」

「フローモードに入るのは容易じゃないんですよ杏奈先輩。高い素質があり、闘争心と高いモチベーションときっかけになる感情のトリガーを引かれることが条件になる・・・加奈の場合は相当、最高の好敵手に追い詰められたことでトリガーが引かれたんでしょう・・・それにデメリットはあるんですよ」

「あれに欠点があるというの?」


聞くだけでは、恩恵のありまくるフローモードだが・・・決してメリットだけじゃない


「まず、あの状態を維持出来るのはそう長くないということ。いい所1セット持つかどうか。体力の消耗が激しく集中力が途切れてしまうし、回復にも時間がかかる。それとフトしたきっかけで解けてしまう、一度フローモードが解ければ再び入るのは至難なんですよ」

「1セットは持つって・・・結構ヤバイんじゃないの?」

「可能な限りの打開策は打ってはみますが・・・フローモードの入った相手に戦術がどこまで通用するか・・・」


レースは激戦とも呼べるテール・トゥ・ノーズのハイスピードバトルをし、2周目ホームストレートに突入していた

距離は数十センチ単位でアルトの後ろをS660が食い付いてくる


〈結衣、第3コーナーでホークイリュージョンを仕掛ける。タイミングは3、2、1のカウントでいく、3でホークイリュージョンのラインのスタンバイだ〉


ここで徹也から戦術の指示が来る

ホークイリュージョン、ホークマンの技を徹也なりの解釈と理論で再現できた技。数週間の練習や徹也と座学させられた時にコツを教えられ、タイミングさえわかれはある程度なら出来そうだが、実戦で使うのは初めてだ


「上手くやれるかな、初めて使うし」

〈フローモードに入ってる相手にホークイリュージョンは通用しづらいだろうし、加奈には一度喰らわせているから確実に防がれる・・・だが、結衣がやるとなると話は変わる、警戒して距離を取る。牽制にはなるだろう〉

「なるほど・・・わかった。徹也お願い!」


迫るもっとも速度が乗った状態からのフルブレーキングポイントの第3コーナー、見えてはいないがほとんど同じアウトのラインで追うS660


〈結衣行くぞ、3・・〉


3の単語が聞こえた瞬間にアウトから僅かに車体をインに寄る


〈2・・・1!今だ!〉


合図ともにオーバースピードでフルブレーキングしながら、激しいタイヤスキール音と大きくアンダーステアに膨らむアルトをサイドブレーキとハンドルとアクセル、全ての操作をほぼ総動員させ無理矢理曲げる

後ろからも激しいスキール音が聞こえる



結衣が直前に僅かにラインをインに寄ったことで、勘づき、ブレーキングポイントを遅らせ距離を取る

案の定アルトは大きいアンダーステアでリアをスライドさせて曲げさせてコーナーをクリアした

数メートル離れてこちらもクリアする

ホークイリュージョン、それを仕掛けようとしていたのだろう。結衣がこんなミスはしない

流石にこの集中状態かつ2度目ならホークイリュージョンには引っかからない・・・とは言えかかるとミスは免れない上にフローモードを解けることを考えて、距離を数センチから数メートルで取る


2台は前周程白熱したバトルではなく、お互いを様子見する走りに流れが変わり3周目に突入していく


ラッシーチーム ピットガレージ

公式のドローンの中継映像をチーム全員眺め、多田が加奈の走りに疑問を持つ


「加奈の奴どうしたんだ、ホークイリュージョンを警戒しすぎじゃないか?」

「いや、涼。むしろあの速度域でよく見極めてるよ加奈の奴、そして結衣も上手くホークイリュージョンで牽制してやがる」

「どういうだよ悠一?」

「そもそも、ホークイリュージョンの原理は仕掛ける乗り手の技量と射程とタイミング、もう一つ、視線誘導が重要になる」

「視線誘導?」

「ああ、コーナー突入直前にわざと後ろにいる相手の視界右側に車体をずらし視界を僅かに向かせることで判断をほんの僅かに鈍らせるんだ。ホークイリュージョンはそのタイミングがドンピシャだから初見で防ぐのは難しいんだ」

「それに右ハンドルの車だから視界も妨げにもなるわけか・・・」


伊東の解説に勘付いた多田


「牽制って言うのは、右側に車体をずらすタイミングってことか?」

「その通りだ、幾らフローモードに入っているとは言え、ひとつのミスで解けてしまうからな。だかこのままじゃ終わらないだろうよ加奈は」



3周目も流れは変わらず、結衣と徹也はホークイリュージョンの牽制させつつ加奈のアグレッシブな走りを封殺するように走り、4周目タイトセクション終盤

第14、15コーナーで牽制する動きを見せなかったアルトの後ろをびたっり数十センチにつき隙を伺い

その時が来た

第16コーナー、オーバースピード突っ込みアルトだが、釣られることなくアウトに膨らむアルトに対しインに付きオーバーテイクを仕掛けサイドバイサイド状態持ち込む

結衣の方をみれば、目を閉じて、恐怖を紛らしていた

第17コーナーブレーキングポイント、こちらが前半分以上出て優先権をとり結衣は少し手前でブレーキングし完全にこちらが前にでて第17コーナーをクリアし、前後のポジションが変わる

最終コーナーまで、フルスロットルゾーン。後ろ数十センチ単位で結衣は真後ろに・・・いや左寄りだ、アウトから仕掛ける気なのか?


「・・・あまりにも呆気なさすぎじゃない?なんでこのタイミングでホークイリュージョンを仕掛けた?結衣がミスをしたというの?それとも徹也の指示をミスをした?」


疑問を感じつつアクセルを床まで踏み込む、迫る最終コーナーへ向かう

そしてフルブレーキングポイントで違和感を感じ、それが現実となった


「タイヤが、食いつかない・・・!徹也、これが狙いだったか・・!」



〈結衣、今だ!インからぶち抜け!〉


徹也の合図でコーナーに突入し、アウトに膨らむS660の横をインに付きオーバーテイクを仕返し、サイドバイサイド状態

徹也はフルスロットルセクション手前でワザとホークイリュージョンを不発させるように指示し、あえてS660を前に出せたのだ

もうS660のタイヤには余力のないのを見抜いていた徹也の読みが当たり、フルブレーキングポイントを変えなかったことでアンダーステアになってしまい制御が難しい状態になった瞬間を狙った

前輪駆動車特有のタックインを利用しアウトインでサイドバイサイドに持ち込むことに成功した

2台は並んだまま、最終コーナーを抜け、ホームストレートへ

低回転域から過給が効く上に、速度を乗せてクリアしたアルトが立ち上がりで勝り、S660は自慢のトラクションがかからずアルトを前に出してしまい、勝負は振り出しに戻った

S660が離れたことがわかり、瞳を開ける



グリットラインを通過し、5周目。前にアルト、後ろに十数メートル離れてS660


「してやられた・・・しかし、まさか結衣にオーバーテイクを仕掛けられる日が来るなんてね」


数日前までは考えられないことだ・・・そういう油断もあったか

レースは2台とも走りにキレがなくなっていた。お互いにタイヤがダレているのもあるが

それ以上に私のフローモードが解けてしまい、著しく集中力が落ちていたのもある

レースはそのまま面白みのないまま、2セット目が終わる

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