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走劇のオッドアイ  作者: かさ
SGT地区大会編
38/121

ACT.35 SGT地区大会 一回戦 1セット目 S660VSアルト 〈ブラインドアイ〉

地区大会 ピットガレージ


〈これより、SGT地区大会本戦一回戦を開始します。第一試合、榛奈高校、ラッシーチーム、商店街チーム。ピットレーンに整列〉


会場中に試合のアナウンスされ、ピットレーンにて対戦チーム同士対面して整列し挨拶をする

球技系の試合と同じである

もっとも、見知った顔同士で挨拶もなんだかなって思うが

挨拶が終わるとSGTの運営委員から試合進行を伝えられる


「先行はラッシーチーム、後追いは商店街チーム。1セット5周、最大3セット、勝敗はノックダウンもしくは判定勝負になります。5分以内にそれぞれのグリッドラインに並んでください。グリッドラインに並んで車に搭載しているスタートスイッチを押すかもしくは手振り等で合図を送るように、両者のスタンバイ完了すればシグナルが点灯し試合開始となります。以上、スタンバイ開始してください」


運営委員が言い終わると各チーム、それぞれのピットに向かい各々準備をする


ピット 商店街チーム

アルトに乗り込み、片耳にインカムを装着し、RPスーツに電源連動プラグを刺しスタンバイ

運転席の窓を開けて徹也と話す


「思った以上に警戒されてるなありゃ、表情が今までと違う。だが想定通りに、初手は加奈が走る筈、慎重に様子見してくるだろうよ。初手からブラインドアイ状態で攻めてあちらの慎重を崩していくぞ」

「わかった、ラインパターンはどうする?」

「いや、考えなくていい。状況に応じてインかアウトで攻めるか指示をする・・・それじゃ存分に走ってこい!」


徹也が合図と言わんばかりの激を飛ばし、窓を締め、グリッドラインに向かう



ピット ラッシーチーム

S660に乗り込み、スタンバイしている加奈

先にグリッドラインに向かうアルトを眺め、乗っているドライバーが結衣だとわかる


「やはり結衣か、想定通りだけど・・・部長はどう見る?」

「徹也の事だから思惑があると思うが・・・狙うとしたら長期戦に持ち込むことだろうな、2セットのノックダウンを狙いたいところだが」

「様子見する余裕が欲しいわね。今の結衣は私達が知っている実力じゃないだろうし、何かを持っていると思う」

「結衣のトラウマが克服したとか?ありえそうだが・・・」

「何にせよ出たところ勝負しかないでしょ?速いとは言え私とこのS660と互角、1セットは逃げ切る」

「油断するなよ加奈、よし!行け!」


S660のギアを1速に入れ、グリッドラインに向かう


挿絵(By みてみん)


地方大会本戦一回戦一試合目 1セット目

先行 ラッシーチーム S660 型式JW5 車体重量800kg エンジン S07A 高回転域タービン換装型

後追い 商店街チーム アルト 型式HA23V 車体重量650kg エンジン K6A 電動スーパーチャージャー換装


SGT参加車両にスタートスイッチというを装着を義務付けられており、グリットラインに並びスタンバイ完了の合図として信号を運営システムに送られ、シグナルがスタートする仕組みである


S660とアルトがそれぞれ、グリットラインに並び、加奈と結衣はスタートスイッチを押しスタンバイ完了の合図を送る

歓声と2台のエキゾーストが響くサーキットに、シグナルが赤に点灯し始める

加奈と結衣はクラッチを踏み、ギアを一速に入れアクセルを煽る

シグナルが赤から・・・黄色へ・・・そして緑に点灯し同時にタイヤを鳴かせながら2台がスタートする


ホームストレートから、緩やかな第1、第2コーナーをS660と数メートル後ろに付くアルト

第3右コーナー、警戒しイン寄りのブロックラインをとるS660に対し同様のラインをとるアルト

結衣らしくない、というよりこのパターンならセオリーなアウト・インで走るのが無難な筈だ。ブロックラインで走っているならこの道幅で抜かれことはない

ブレーキングポイントでフルブレーキング体勢になった時に、一瞬脳裏に徹也を思い出しヤバイと思ったが遅かった


「アルトがいない!?まさか・・・!!」


気づいた時にはアルトの車体半分ほどアウト側に並んでいた

しかしこちらにまだ先頭の優先はある、ブレーキングタイミングを早めにリリースし、S660の旋回性能を生かしややリアをスライド気味にアウト側に寄るように走りアルトのラインを潰し、引かせたが次の第4コーナーは今度はイン側から攻めてくる結衣だが今度はレコードラインで接近戦を許さない走りにシフトし、アルトを少し離したが、今度は数メートルどころか数センチあるがないかのテール・トゥ・ノーズでタイトセクションを攻めてくる結衣

少しでも隙が出来れば間髪入れずにオーバーテイクを仕掛けようとしてくる

もはや様子見してる余裕がなく、本気で逃げる

結衣がここまでアグレッシブな走りをするなんて、初めてなんじゃないか?

プレッシャーを与えられながら、2周目に入る


「部長ごめん、余裕がない」

〈ああ、そうだろうな。まさか結衣の奴トラウマを本当に克服したというのか?〉

「私の見間違いだと思いたいけど、チラッと見えたんだけど・・・結衣、目を瞑って走ってる」

〈・・・はあ?〉


伊東部長が珍しい反応をする。そりゃそうだろうが


「結衣の目ってオッドアイだからバックミラー越しでも目立つんだんけど、それが見えない」

〈目を瞑って、フルスロットルでコースを走り回ってというのか!?そんなバカな・・・〉

「それで恐怖心とかトラウマを軽減か無力化してるというなら・・・あの走りは納得がいくけど・・・このアグレッシブな走りは今までの結衣だと考えられないというか、このやり方まるで」

〈徹也だ・・・アイツが結衣に指示を出して走らせているんだ〉

「道理で一瞬徹也の感じがあると思ったけどまさかここまでとは、これが徹也と明堂学園が作り出したオペレート・コ・ドライバー・・・」


結衣のドライブテクと徹也の戦術的な走り、まるで違うタイプのドライバーを二人相手にしているようでやりづらい



2周目ハイスピードセクション


〈よし、結衣。ラインパターン3、S660のグリッピングポイントを潰して攻めるぞ〉

「パターン3・・・わかった」


加奈ちゃんをスローインで走らせず、アウト側から攻め込み立ち上がりからの加速を軽減させる目的で走る

目を瞑っていてもエキゾーストや気配で察知でき、かなりの接近戦をやっているのだろうと思うが不思議に恐怖感はない



商店街チーム ピットガレージ

レースは2周目のハイスピードセクション終盤にさしかかり、デットヒートと呼んでもいいぐらいのレース展開になっており、観客の歓声がコチラかでも聞こえる

商店街チームのピットガレージには机に置かれた複数のモニターを見ながら、インカムで時折指示を出している徹也


「持ってきた機材とか、アルトに取り付けた各種のカメラがこの為だったとは・・・しかし、よく結衣も的確に動けるものね」

「その為に練習してたんだよ姉さん、練習できない日はコース攻略と走行ライン、パターンを研究と覚えていたから」

「それもあるけど、信じられないのよね・・・あれで目を閉じて走ってるんだから・・・確かに人間業じゃないよね。しかしこんなことで結衣のPTSDを抑えれれるなんて」


奈緒の疑問に徹也が答える


「そもそも、結衣のPTSDが発症する原因は接近戦で近づかれたのを直接見る事でフラッシュバックしてしまうらしいんだ。視覚情報は簡単には誤魔化せないからな。念のための保険として、催眠療法で目を閉じて時は相手の車の存在を感じれるけど、恐怖の対象ではないという催眠をかけてもらっているんだ」

「そこまでやるなんて・・・徹也、アンタね・・・」


奈緒は徹也を睨む


「思いついたのは確かにオレだが、リスクがありすぎるからボツにしたんだが、結衣が強く望んだことを止める気になれなかった・・・いや、強力な戦力になれる誘惑があったから許してしまったのが本音だな」


自分が悪くないというの無責任だと思い、言い直す徹也

奈緒は睨みつつも、ため息をついてから


「・・・まあ、結衣が望んだならね・・・それに、久しぶり見たかもこんな生き生きとして結衣が車を走らせてるの」


ハイスピードセクションのラスト第20コーナーが2台とも接戦を演じながら抜け、ホームストレートへ


「目を閉じてる時って、結衣はどういう感じなの徹也?」

「うーん、オレの解釈になるが。結衣の超空間認知能力はコース全体に及んで把握しきることで、脳内で寸分狂いのないコースのビジョンが見えてるだと思う。3Dゴーグルの追体験やコース攻略や研究していた恩恵もあるが」

「ラリーのドライバーとかなら、ペースノートさえ的確に指示すれば例え道が見えなくても走れるとは聞くけど・・・でも相手の車は見えてないんでしょ?なんであんなテール・トゥ・ノーズが出来んのよ?」

「・・・結衣曰く、エキゾースト音と気配で察知は出来るだそうだ」


唖然とする奈緒に、困惑しながら言った徹也


「中学からの付き合いだけど、結衣ってエスパーか何かだったのか・・・」

「エスパーとか、超能力とは言わんが・・・結衣にはそれに近いものはあるんだろうな」


グリッドラインを通過し、3周目ホームストレート

S660のターボ対して、アルトの電動スーパーチャージャーは高回転域の最高速度の勝負ではターボに一歩劣るのに加え、MR駆動のS660のトラクションの前ではジリジリ離されてしまい、数センチから数メートル程離れていた


〈結衣、射程外だ〉

「わかった」


徹也の無線の合図で、目を開け、速く走ることに専念する


〈ここまでは予定通り、おそらく加奈はレコードラインで最速の走りで逃げるつもりだ結衣。多少なら離されてもいいが・・・ペースダウン出来る余裕は無さそうだな〉


流石、徹也は察しがいい。前のS660から感じるピリピリとした感じ


「ペースダウンで引き離されたら、確実に負ける。ただの直感だけど・・・ダメかな?」


理屈や理由はない、ただの直感だけど上手く説明はできない


〈結衣、試合前にも言ったがオレのオペレート・コ・ドライバーの役目はドライバーに指示ではなく、戦術的を提案するに過ぎない。少なくともオレはそう考えている。判断はドライバーに委ね、オレの指示が間違っていると思うなら従わずに自分の判断で戦っていい。それで従わないで負けたとか、ミスをしても結衣を責めたりはしないさ〉

「・・・ありがとう、徹也。ここから引き離されずに食いついて行く!」

〈OKだ結衣。思うままに走れ!〉


結衣の覚悟に応えるように、アルトの独特なエキゾーストが鳴り響く



〈すげぇなあのアルト・・・なんであんな音が出るんだ〉

「なんというか、私には何かに応えるような咆哮に感じたけど・・・なるほどね結衣、こっちのやることはお見通しな訳か・・・」


表情がニヤついてしまう、相手が結衣だからだろう

駆け引きも何もない、どちらが速いかのガチンコ勝負


〈楽しそうだな加奈・・・羨ましいぞ〉

「あら?2セット目は部長が走る?」

〈まさか、ここはエースを信じるさ。もはや長期戦は免れないからな〉

「なら、好きに走らせてもらう!」


第3コーナー、フルブレーキングポイント 

2台は今までにないデンジャラスタイミングでフルブレーキングし、アウト・インのラインでコーナーに突っ込んでいく

S660はリアスライド気味に、アルトはやや外側にアンダーを出しつつ駆け抜ける

続く第4、第6のブレーキングポイントを同様に走り抜け、ネガな部分を利用して立ち上がって加速していきタイトセクションを同様に2台は走る

タイトセクションは全回転域にブーストがかかり、レスポンスが優れるアルトがS660の距離を詰めていくがハイスピードセクションに入るとアルトが詰めたアドバンテージをS660が相殺していく

どちらもブレーキングポイントで油断すれば、突き離される。お互い車の長所を活かし3周、4周とコースを走る



商店街チーム ピットガレージ


「すごい試合になってるわね・・・地方大会の1回戦の1戦目1セット目で駆け引きもないハイスピードバトルになるなんて・・・でも徹也、これじゃこっちのタイヤが持たないわよ」


モニターで2台の走りを見ながら、心配するリリス先輩


「ええ、杏奈先輩。予定変更で次のインターバルでタイヤの前後ローテーションをお願いします」

「わかった。でも大丈夫?そんなことやったら長期戦に持ち込むのは難しくなるわよ?」

「やむ得ないでしょう、前輪駆動で負荷がかかりすぎたフロントタイヤで逃げ切れる程、加奈は甘くないですよ・・・しかし、まさかここまでやるとはな」


加奈がここまでモチベーション高く走るのは想定を超えていた。追い詰めれば、追い詰めるほど走りにキレが増す超アグレッシブなドライバー・・・2セット目のポジション交換で後追いになれば結衣でも逃げ切れるかどうか・・・


「まるで、リチャード・リシャールみたいな走りをするな加奈の奴」

「リチャード?・・・確か昔のレーシングドライバーよね?」


リリス先輩は思い出したようにその名前に反応する


「ご存知でしたか?イタリアのレーシングドライバー。確かオレや結衣が生まれた年にレースの事故で死んだドライバー。初めて走りあった時にも感じたんですけど、加奈の走りはそれに似てるんですよね。アグレッシブかつ追い詰められると本領を発揮するタイプ」

「でもたしか、そのドライバーは・・・」

「ええ、リチャードとホークマンはライバル関係であり、レースの接戦でお互いに事故を起こしリチャードは帰らぬ人になり、ホークマンは生き残った・・・因縁がある相手ですよ」


ホークマンに強い憧れる結衣に対し、リチャードに似る走りをする加奈・・・因果なのか偶然なのか


「徹也の戦術を持ってしても攻めあぐねるなんて、マキちゃんでもそんな様子を聞いたことないのに・・・」

「そこまでオレの戦術は万能じゃありませんよ、上村先生。だけどただでは勝ちを譲る気はないですよ」

「まだ勝算ある感じね」

「3セット目まで耐え抜けばですけどね・・・」


5周目に突入し、変わらずハイスピード勝負を演じる2台。結局均衡は崩れることなく1セット目を走りった

5周目タイムは1分34秒06と1分34秒56・・・加奈と結衣はタイムアタックの記録を塗り替えていた

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