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走劇のオッドアイ  作者: かさ
榛奈自動車部騒動
30/121

ACT.27 大会前日2

箱崎自動車 ガレージ外

日は沈み辺りが暗くなってきた頃、独特な過吸音を鳴らしながらガレージの敷地に組み上がった艶のない白色の23型アルトが止まる

形状はさしずめ一昔前のシビックを小さくしたような形に仕上がり

ガレージ外で待っていたと言わんばりに杏奈先輩が出迎えた

運転席から箱崎さん、助手席には自分、座席のない後部で配線を繋いでいたアイが配線を外し、それぞれ降りる


「おかえり、どうでしたか試運転?」

「ふぅ・・・久々にこういう攻めた改造車乗ったが、こう、フルスロットルで踏めないのは焦れったいな」

「勘弁してください箱崎さん、そいつのフルスロットルはただのターボや大排気量NAとは訳が違う、法定速度を容易く破りますよ」


そうなっても、速度制限をかけてたから速度違反になることはないが

組み上がり、エンジン、ミッション、それ以外パーツ各部にオイルを循環させる為に箱崎パパに試運転を頼んでいたのだ

それと伴い助手席でここ数日で予め作っていた数十パターンのECUユニットのセッティングを繰り返していき、AIユニットであるアイと共にパターンを絞っていた


「それで、どうだった徹也。ECUユニットのセッティングは?」

「かなり絞れて3パターンに、あとは全開走行してみないと・・・当初の予定通り、タイムアタック中にセッティングを完了させるしかないですね」

「結衣にも厳しい状況ね・・・そもそも乗りこなせるかしらね、かなり私の趣向によせたのに」

「面白い仕様だからいいんじゃないですか?前例がなさすぎてアイがいなければECUユニットのセッティングは難しかったです」

「そうですよ、マスター。私を労ってください」


アイはオレの腕にガシッと力強く抱きつく、可愛い女の子容姿なのだが、無機質の人形だから嬉しくなんともない


「アイ、おれの腕をへし折るつもりか」

「それだけ私の愛は強いんです」

「痛てえよ!離せ馬鹿!」


掴んでいるアイを無理矢理引き離し、痛みから開放される


「そういえば、うちの愛しい愛娘は?こういう時は真っ先に来るはずなんだが」

「ああ、奈緒ならあっちに・・・」


チョロチョロ辺りを見渡し探す箱崎パパに、杏奈先輩がガレージの奥を指をさすと、椅子に座りながら眠っている奈緒と阿部の姿

奈緒は阿倍の肩に寄りかかり、阿部は椅子に寄りかかり頭は天井を向いていた


「ああ、二人共オレが見ないところで夜な夜な作業していたみたいだからな。良くはないが、よく頑張ったよ・・・」

「そうね、しばらく放っておきましょうか。なんか微笑ましい姿だし」


そう、微笑ましい光景なのだが、その姿をよくと思わないのが箱崎パパ


「ほう・・・いい度胸してるじゃねーか、あのメガネ。いけ好かない奴だと思っていたがオレの娘に手を出すとは・・・シメるか」


殺気出して、二人の元に向かおうとするが


「ダメよパパ、二人共疲れているんだから」


エキゾースト音で帰ってきたことがわかったのか、静恵さんがやってきて止めようとするが


「そういう訳に行くか!知っているのか、作業してるあの二人の雰囲気!お互いなんか好意を意識してる感じ!神様は許してもパパは許さんぞ!」

「はぁ・・・仕方ない、アイちゃん」

「はい静恵様」


静恵さんがアイに指示すると、アイは箱崎パパの腕を掴み、事務所まで連行する


「痛だだだだだ!?離せアイ!これは父親として、あだだだだ!!なんつー馬鹿力だオイ!?」


フリフリな服を着た少女が大の大人を力尽くに引っ張る、なんとも奇天烈な光景だった

というか静恵さん、アイを手懐けていやがる


箱崎自動車 ガレージ

寝ている二人と連行された箱崎パパを放っておいて、杏奈先輩と共にカーリフトにアルトの車体を乗せ、足回り各部をチェックしつつ、タイヤをノーマルタイヤからSタイヤ(セミレーシングタイヤ)に付け替えて、明日に備えて準備をする


「しかし、リリス先輩から事情を聞いたら怒ってるかなって思いましたけど案外そんな様子がないというか」

「ワザとワークスを壊したことには、メカニックとしてはらわたが煮えくり返るような思いになるのが当然だろうけど、それ以前に自ら車を壊さないといけないことを選択肢し、車好きとして苦しい思いをしたリリスに責めることが出来なかったし・・・友達として、相談相手になれなかった自分の未熟さを痛感したからね。まあ、リリスには相応の罰を現在進行形で受けてもらっているから、それで手打ちにしたし、奈緒とか他のメンバーに秘密にしてるからどっちもどっちね」


リリス先輩の罰とは、オレが提案し、今もそれに動いてもらっている


「しかし、徹也も随分ハードル上げくれるじゃない。悠一を挑発してその気させてさ」

「ドライバーは繊細なもんですから、少しの迷いが運転に支障が出ます。そんな相手に勝っても面白くないじゃないですか」

「その迷っていた悠一に負けたのはどこの誰かしら?」


ジト目で、図星なことを言ってくれる


「ありゃ、車の熟練度の差ですよ。それにあっちの手の内はおおよそ把握してるから今度はこちらが勝ちますよ」


あくまでも強気で虚勢を・・・いや、ハッタリをかます


「熟練度の差って・・・徹也も結衣も一度もこの車うごかしてないじゃない、結衣ならセンスで何とかなりそうだけど」

「制作した車がどう動くか、どう走らせるのかをイメージしないで制作やセッティングに関わっていると思います?車体を手で触って、車両の大きさを把握し、ペダルの加減、足回りをどう動くか、そういうのを考えながらやっていたんですよ?」

「なるほどね・・・そもそも設計もセッティングプランも徹也だもんね。テメェで作った自分の車ことをわかってないんじゃねぇ」

「方針を決めた初日に結衣にはもう一つ武器になる切り札を優先させましたからね、ただ思わぬ嬉しいというか少し複雑な誤算でもう一つ切り札が増えましたが」


正直、乗り手どころか人としても凌駕した力を結衣に使わせるのは少し悩んでいる。アイツも同じで凌駕する力を持っていた故に、勝つ目標を失い、車を嫌いになりかけていた。行き過ぎた力は人を迷走させる

車が大好きで、車を心から愛している結衣を車嫌いになってほしくないから

伊東先輩に迷うなって言っておいてこれだからな、今更なから人のことは言えなかったな


「よーし、こっちはOKかな。徹也はどう?」

「ええ、こちらもOKです」


そうこう話している内に作業を終え、アルトをリフトから降す

数週間前まで、ただの軽自動車がSGTで戦う為の姿に様変わりしていた


商店街チーム スズキ・アルト 型式HA23V

K6A改スーパーチャージャー換装 出力 200PS

車体重量650kg

フロント、リア、サイド、リアスポイラー等のエアロパーツ各種ウレタン製

全ガラス アクリル製に変更 7点式ロールケージ装着

5速競技用クロスミッション

SGT競技用ナノマシンブレーキシステム


「これ、元の持ち主の坂崎先輩乗れるかな?」

「いや、杏奈先輩。これ譲ってもらったものだし、第一車検に通りませんし、日常に使うには厳しいですよ」

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― 新着の感想 ―
[一言] ここまで読ませて頂きました!カーバトルの小説・・・ありそうでなかったテーマなだけにとても新鮮な気持ちで読めました。スポーツカーブーム、いつかまた来るのでしょうか。これからも頑張ってください!…
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