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走劇のオッドアイ  作者: かさ
榛奈自動車部騒動
29/121

ACT.26 大会前日 1

アルト制作 18日目 大会まで残り1日

榛奈高校自動車部 練習所 グリッドライン

殆ど軽自動車クラスの車しか動かすことがない自動車部の練習場にじつに場違いでレトロな車が、アイドリング音で既にその車の周囲の大気を振るわせる、まさしくチューニングカーと呼べる車


「これが八代目のスカイラインGT-R・・・BNR32、初めて現物をみたや」

「僕たちの世代だと、生まれた時からもうR35で現在もマイナーチェンジを繰り返しながらR35ですもんね、結衣先輩」


本来の形はわからないが、GTウィングとフロントの形状で見た目からもう速い車というのはわかる

白き怪物マシン、Yガレージのデモカー

グリットラインでアクセルを吹かし、エキゾースト音を練習場に轟かせる

不快でもなく、速くこの車を操りたいという高揚感を煽るエキゾースト音


「よーし、好調だ・・・結衣ちゃん、乗ってみようか」


トオルさんと運転席を入れ替わるように、硬めのバケットシート座る

運転席はアルトワークスと比べられないほど、メーター、助手席には液晶のモニターが複数

練習最終日に、乗せる車としてトオルさんが自分の店の車を用意することを提案

たまには刺激的な車もいいだろう、徹也も賛成。自由に走れのこと


「いいかな結衣ちゃん?最大ブースト1.2kg、レブリミットは8000、そこさえわかれば後は動かしながら慣れるだけだ」

「わかりました、まずは軽く走らせてみます」


運転席の窓を閉め、クラッチペダルを踏んでみるが、思った以上に重たくない。クラッチをゆっくりと離し繋がるポイントを探すが、あっさり繋がり


「あれ?意外に?乗りやすい?」


アクセルを踏み込んで加速していくが、拍子抜けした感想が徐々に飛んだ。想像以上の加速感が体に伝わり、すぐさまシフトアップしていくが加速感が終わらずそのまま第一コーナーに突入してフルブレーキングをかけるが


「!?重たい車だと思ったけど、以外に止まる!?」


超スローインファストアウトで第一コーナーを抜ける、全ての性能が今まで乗ってきた車と別格過ぎる

アクセルを踏み込むと再び加速感が来る、左の緩やかな第二コーナーをアクセルそのままで踏み込んでクリアしていき、右のキツイ第三コーナーをブレーキングタイミングを修正して理想のラインに今度は乗せていく、少しアンダーに膨らんが

続く、第四~第七のタイトゾーンに突入していくが難なくクリアしていく、第八、第九コーナーをクリアして立ち上がってストレートゾーンから第十コーナーに向かっていく


〈結衣先輩、モニター越しですが動きが良くなってきたような。馴れるペースいつもより早すぎません?〉


インカムから勇気君の声をかけてくる。この数日間、徹也からモニターで車を動きを見るように指示されており、リリス先輩がいない際はインカムをつけている


「そうだね、馴染んてきた・・・いや、不思議に馴染むねこの車、次は本気で行くよ」

〈わかりました、モニター上、GT-Rも好調そうなのでいつでもフルスロットルいけますよ結衣先輩〉


第十の緩いコーナーから、最終コーナーヘアピンカーブをクリアしていき、ホームストレートへ立ち上がりアクセルを踏みフルスロットル、フル加速状態

GT-Rのエキゾーストの咆哮がコース中に轟かせ、グリッドラインを過ぎた頃には速度は200km/hを越え、これまで体験したことのない未体験ゾーンの速度領域だったが恐れはなく、むしろ好奇心か高揚感が勝ちアクセルを緩めることはない、再び第一コーナーへ

先ほどのブレーキングタイミングの修正し、理想のアウト・イン・アウトでコーナーを抜ける

完全に馴染んだ、どう動くのか、どうやれば速く走らせることが出来るのかわかる


練習場テントピット

2周目を終え、3周目に突入する結衣先輩とGT-R

2周目の時点で性能差もあるが、この練習場のベストタイムを大幅に更新していた


「話に聞いていたけど、優しく可愛らしい容姿なのにとんでもないお嬢ちゃんじゃないか、完全にウチの車乗りこなしてるよ。いろんなドライバーを見てきたが速さならズバ抜けてる」


持ち主であるトオルさんも唖然としてるほどである


「結衣先輩が全開で走るなんて、結構久しいんですが、乗ってる車だけじゃなく結衣先輩自体も速さに一層磨きがかかっているというか」

「確か、いろんな車種を体験させていたんだっけ?徹也の奴、考えたもんだな・・・しかし、徹也の周りはどうしてこんな天才的なドライバーがいるんだろうな」

「徹也先輩もその天才の中に入るんじゃないんですか?」


計画の手際の良さと行動力、人と車を見る確かな観察眼と洞察力、人を納得させてしまう不思議な魅力と話術、そして初日に見せたドライブテクニックといい、常人を遥かに越えたスペックをこの数日感見てきて、徹也先輩は天才の部類に入ると思うが、トオルさんは首を横に振る


「そうだな、そう見えているんだろうな。確かに思考能力、観察眼と洞察力とか車への博識は大したものだ・・・でも実際は臆病だけど負けず嫌い、期待に応えようとしてハッタリと虚勢でなんとかしているって感じなんだよ徹也は」

「臆病なんて、なんか意外というか」

「君に似ている、いや君が言われていることかな?」


トオルさんの言葉にギクッとなってしまう。確かにそのとおりだし、徹也先輩のようにハッキリ言えるようなら性格なら結衣先輩に思いを伝えるのになぁーって思って憧れもあったから、本当に意外だった


「臆病だから、物事や人を見る。負けたくないから勝つ為に思考し、行動を起こすし、無茶もする。今もぶっ倒れてもおかしくないぐらい疲労してるのに無茶してるんだよアイツ」

「え?そんな素振りなんて・・・」


いや、普通に考えれば徹也先輩の負担は多い。ドライバーである結衣先輩の練習後のレポートを次の練習までには読んで、そこから練習に反映させ、レポートの感想も添えて返す。ボディ制作の作業にECUユニットのデータの打ち込みや内装パネル等の制作も徹也先輩が行っていた

でも疲労してる素振りなんてみせずに、周りを引っ張っていく


「気づいたようだね。叔父として、徹也とは長い付き合いだからなんとなくそういうのはわかるけど・・・まあ、止めはしないさ」

「い、いいんですか?」

「大丈夫だろう。若いうちに無理しても死にはしないだろうに、夢中になっていることに水を差すほど野暮じゃないよ」


そうこう話している間に結衣先輩は5周走り、一旦テントピットに戻ってくる



「結衣先輩これを」

「ありがとう、勇気君」


R32の運転席から降りると、タオルと飲み物を渡してくれる勇気君。顔の周りが汗だくになっていたのを今更気づく

久々の全開走行と未体験の速度領域で思った以上に体力が消耗していたんだろう、RPスーツを着ていてでもこれとは


「・・・結衣ちゃんの運転歴って一年ぐらいだよね?こういう走らせ方っていつから?」


トオルさんはR32のタイヤ各部と助手席のモニターを見ながらコチラに聞いてくる


「こういうって?」

「モニターだと不思議なタイヤの使い方だなって、4つのタイヤが均一に負荷がかかってるんだ。器用な走り方してるなって思ったけど」

「そんなこともわかるんですか?」

「各種センサーを取り付けてるから、ドライバーの運転がハッキリわかる車になってんだよこの車」

「うーん・・・ここ最近の練習のせいもあるけど、凄い乗りやすいんですよそのR32。アクセルオンオフのメリハリがハッキリしてるというか、加速感が自然だから細かいコントロールが簡単というか」

「ドローンの映像モニター越しで見ててもターボの車にしてはなんか、こう、繋がりが自然でしたよね」


私と勇気がそれぞれのR32の感想を言うと、納得したような反応をするトオルさん


「道理で徹也がこの車を選んだ訳だ、結衣ちゃんとこのR32は相性がいいんだ。このR32はフィーリングとレスポンス、繋がりを重視にして作られただよ」

「繋がり?」


フィーリングならなんとなくわかるが


「負圧から正圧への繋がりですか?」

「正解だ勇気君。簡単な話、ターボでありながら、NA(自然吸気)のような自然な加速感とレスポンスを持つ目的でこのR32は作られていてな。ターボの負圧から正圧が自然に繋がるようにエンジンを組み立て、セッティングしたんだ。加速力とパワーは同じ出力でチューンされたRB26には及ばないが、こういうフィーリングとの相性が合う人にいるからな。まあ、ほぼ趣味、趣向の車で実用性は皆無に等しいんだけどね」

「・・・もしかして、これって徹也の趣向で作ったんですか?」

「惜しいな。徹也が中学生の頃に作ったんだよ。エンジンを組んで、セッティングを出してな」


ここ数週間、練習と勉強を通して彼の車の趣向と考え方がおおよそ理解していた為に徹也が関わっているのは走らせている時に察していたが徹也自身が制作していたとは


「うん、どこにも異常はないな。結衣ちゃん、いつでも出せるよ」

「わかりました。よーし・・・時間いっぱいまで走るよ!」


タオルと飲み干したペットボトルを勇気君に渡し、再びR32に乗り込みひたすら走り込む

日が沈み、時間いっぱいまでR32のエキゾーストが練習場から轟かせた



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