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走劇のオッドアイ  作者: かさ
榛奈自動車部騒動
28/121

ACT.25 鷹の再臨計画 2

榛奈商店街

アーケード街の東側入口近くに、商工会議所の前に立っていた


「ここだよな?榛奈商工会って?」


以前来た通りに、同じ時間帯で賑わっていたが、今回は結衣がいないおかげでスムーズに入れた

今回のこの自動車部の騒動の首謀者を尋ねるためにここに来ていた


「おや?徹也君?どうしたんだ、こんな所で?」

「坂崎さんじゃないですか、アルトを譲ってもらうことを交渉して以来ですね」


配達帰りだろうか、榛奈自動車部OBの坂崎大先輩が原付を降りて押していた


「ちょくちょく箱崎さん所覗いていたけど、凄いことになってないうちの車?」

「もう公道の車検通るか怪しいぐらい原型留めてないぐらいですもんね、坂崎先輩のアルト」


というか、普通に公道で操るどころか、並大抵の人間じゃ使いこなすのが難しい車になってしまったはず


「んで?どうしたんだ?商工会の前に立って?」

「それは・・・」

「私に用があるだろ?山岡徹也君」


商工会の扉が開くと、ご年配のお爺さんがこちらに声をかける


「こうやって、顔を合わせるのは初めてだね。はじめまして山岡徹也君、榛奈商店街会長 上柳鷹主(かみやなぎたかぬし)だ」


商工会議所 応接間

畳を敷いてある和室の応接室、敷かれた座布団に会長と対面するように座り、お茶とお茶請けを間に置かれる


「試合まであと間もないのに、私の所に来たということは。ある程度のことは知ったということかな?山岡徹也君?」

「ええ、今回の自動車部の騒動、その全ての計画の発案者はアナタということぐらいは」


そう言うと、ニヤリと会長は笑うがこっちはお構いなしに話を進める


「苗字は変わっていましたがね、ここのラッシーグループのエリアマネージャーは貴方のお孫さん、そして榛奈高校の校長先生は甥らしいですね。親族が協力するなら、こんな茶番劇を作り出すことは難しくないでしょうし、教頭先生という悪役も随分上手い役者を用意したものですね、本気で悪意のある人間だと思いましたよ」

「くくく・・・そこまで知られていたとは、想定以上だよ。何度も計画とシナリオを書き換えられる訳だよ」


驚く様子見せるわけでもなく、むしろ歓喜していた、このご老体


「ということは、私の目的もわかっているのかな?」

「あくまで憶測でいいのでしたら、さっきも言ったとおり茶番劇、分裂したチーム同士が己の信念のために戦い、対決する。しかもこれは商店街チーム、ラッシーチーム、どちらが勝っても美談になる。商店街を守るために戦う者と守りたい人の為に戦うものとそれを仕組めた悪役・・・ドラマチックな物語を形残す。物語の現実の経緯がどうであれ、そこから脚色すればさぞ伝説として残る・・・どうですか?」

「素晴らしい、やはり君こそ鷹の再臨に相応しいヒーロー像だ」

「鷹の・・・再臨?」


どうやら会長は自分の憶測の回答に満足が行った様子らしいが、気になる単語が出てくる


「徹也君、この榛奈町がかつてどんな町と呼ばれていたのか知っているかい?」

「・・・ホークマンが生まれた町」


静恵さんが言っていたことを思い出す、つまり鷹の再臨とは


「ホークマンに並ぶ、ヒーローを、そして伝説を作るためのシナリオ。それが私が、アルカディア機関の元会長である上柳鷹主が望むものだ」

「アルカディア機関!?」


さすがにこんな大物が関わっているのは想定外だった

アルカディア機関、様々なレース活動及び現在のSGTを管理運営をしている機関であり、そして今日の自動車産業に技術革命をもたらした世界的に有名な組織

人工精製可能かつ、環境に害のない石油エネルギーとナノマシン技術を確立させた世界に拡散させたことで様々な分野の技術にも影響をもたらしていた

そして、その組織のチームに所属し・・・いや、所属していたのがミスター・ホークマンである


「彼の死から数年・・・私にとっては昨日のようなことであっても世の中は忘れらていく」

「ホークマンの存在を生かすためにこんなことを?」

「・・・この老い先短い私は、最後に見たかったのだよ。若者たちが逆境と窮地を乗り越えていくドラマをフィクションではなく、リアルに現実的に」

「それに付き合わされる周りにはたまったもんじゃないですね・・・待てよ、この計画自体一体いつから始まっていたんですか?まさかオレの転校は想定外の筈じゃ・・・」


いや、アルカディア機関の話が本当ならもしや明堂学園にオレが転校するように仕向けることが出来るのか?


「計画自体は2年前から、本来は鷹見結衣ちゃんを今の君の位置にするはずだったが彼女では計画に達することができないとアルカディア機関は判断し、一度は計画は頓挫したが半年前に君を計画に組み込むことで計画は続行された」

「つまり、明堂学園からチームを辞めされるように仕組んだのは」

「どちらかというと君を守る名目もあったようだが・・・実の所、私でも把握しきれていないことをアルカディア機関が企んでいる」


元会長という立場であっても、組織の全容は把握しきれてないぐらい、巨大な組織なのだろうか

守る名目か・・・確かに明堂学園の一部の人間からは嫌われていたし、実際に重体になる危害も受けたことを考えると


「まあ、今更過ぎたことを考えても仕方ないし、事情と目的を聞いた上で自分のお願いをしに来たので」

「ほぉ、お願いとは?」

「このシナリオの役に演じるので、勝敗の結果やシナリオの結末がどうであれ1200クラスの参加に快く協力して欲しいというお願いです」

「ふむ、なるほど」


交渉したかったのはこういうことだ、本来なら実績等の勝てるという交渉材料が必要になるのだろうが、あっちの娯楽に付き合うのだ。それぐらいワガママ言ってもバチは当たらんだろうし、計画をかなり前倒しで1200クラスに出れる。利用できる力は利用してやろう


「条件を二つ、まずは君たちのチームが勝つこと。そして全国大会に入賞する。というのはどうだ?」

「構いません、元から全国優勝するつもりでしたし、そもそも今の1200クラスに挑むならそのぐらいの実力がないと勝てませんからね。」


しばらく考えて、会長が提示してきた条件。元から達成する気だった条件だったので乗った


「やはり・・・君は若い頃のホークマンにそっくりだ。容姿も性格も・・・挑もうとするその気概と周りを巻き込むことを恐れない堂々さ」

「是非とも、機会があったら昔のホークマンの話を聞きたいですね。話したいことは自分からは以上です」


話を切り、出された冷めたお茶を飲み干す


「とりあえず、事が終わるまで役を続けさせてもらいますが、終わればチームメンバー達には事情を明かす。いいですよね?会長」

「構わん、もう君たちは・・・いや、君はヒーローになっている。周りの評判は聞いたことぐらいはあるだろう?」


学校内どころか、新聞とかにもこの自動車部の騒動は話題になっている

窮地の状態の自動車部が転校生の登場で奮起していると、転校生のオレが実にわかりやすいヒーロー像になっている

これもこの人の手回しなんだろうなって、今になって思う

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