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走劇のオッドアイ  作者: かさ
榛奈自動車部騒動
26/121

ACT.23 目に見えるもの、だから見えない

アルト制作 14日目 大会まで残り5日


アルトの車体改造とほぼ形になっていき、エンジンとミッションのオーバーホールとエンジンのベンチテストが完了し、残りは組み立てとセッティングになっていた

ドライバーチームも練習も順調であり、結衣はこちらの目論見以上のモノを見い出していた

リリス先輩と勇気曰く「人間業じゃない」

自分で提案してなんだが全く同じ意見だ。結衣はとんでもない才覚を目覚めてしまったのではないかと


箱崎自動車 ガレージ

ロールバーやスポット溶接でレースカーらしい車体になり、下地塗装やサビ止めを塗られ艶のないグレー色の23型のアルトがジャッキスタンドに乗っかっている

新品のサスペンション等の足回りの部品やフロントとリアガラス、その他冷却系のパーツ一式揃っているがバンパー系のパーツ、ボンネット等がまだ届いていなかった


「うちにアルト関係のパーツとか次々納品されるけど、徹也、たしか一週間ぐらいでエアロパーツ出来上がるって言ってたよね?どうしたのよ?」

「どうも設計を見直すってことで、今日中には届けるって言ってたんだけどな・・・仕方ない。無くても組み上げは出来るだろ」


エンジンチームの杏奈先輩も合流して、4人で作業に取り掛かかろうとした時、一台ガレージの外で平ボディの2トントラックが駐車する。全員そっちに視線がいく


「あれ?うちにあんなトラック使う業者いたっけ?」

「トラックの荷台の横にYガレージって書いてるな」


不思議そうに見る奈緒に、阿部は業者の名前に気づく


「・・・ん?Yガレージ?どこかで聞いたことあるような?」


杏奈先輩はなにか思い出した所で、トラックからツナギを着た40代後半ぐらいの男性が降りてくる


「お?徹也がいるってことはここで間違いないか。ほぉー、いい設備が揃ってるじゃないか」


ガレージを見渡しながら4人近づいてくる


「随分遅かったじゃないか叔父、急に設計を見直して完成したのか?」

「ああ、バッチリだ。元の設計よりデザイン一新してトラックに積んできた」


叔父とのやり取り見ていた杏奈先輩が口を開く


「もしかして、チューニングメーカーYガレージの社長さん!?」

「おや、ご存知だったかな?どうもはじめまして榛名自動車部の皆さん。Yガレージの代表かつ徹也の叔父の山岡トオルだよろしく」

「Yガレージの山岡トオルさんだって!?」


驚く杏奈先輩達以上に、離れた場所で客の車に潜って作業していた箱崎パパが反応した

びっくりした拍子にその場から立ち上がろとして


「あだ!!」


オイルパンに頭をぶつけていた


Yガレージ 関東大手の所謂チューニングショップであり、車種はスポーツから軽カー、ホットハッチと幅広く、独自のパーツ販売している


「山岡って結構普通の苗字だけど、こんな業界の大手の人の親族とは・・・いや、なんか色々納得が行くというか、一緒に作業していてもかなり手馴れた動きで、車の知識もそういう環境にいたからか」

「でも君たちも凄いじゃないか、この短期間でここまで仕上げるとはね。徹也が色々無理させたんじゃないかな?」

「バカを言うなよ叔父さん、むしろ無茶しまくる一家がいたから止めるのを苦労してたんだぞ」

「なによ徹也、一家って私とお父さんのこと?」

「失礼だぞ、徹也君。俺たちが一体いつ無茶したって言うんだ?なあ奈緒」


二人してドヤ顔で堂々と嘘を言ってくるぞこの親子。遅れて作業に参加したり、毎日作業に参加している訳でないが、静恵さんからこっそり夜な夜な作業を進めているというのは聞いている。二人の目のクマを見ればわかるが

とは言え、ここで責めても仕方ないので黙っているが


「まあ、ここまで遅れたお詫びだ。完成まで俺も付き合うぞ。いいよな、徹也」

「ああ、猫の手も借りたい状態だったから助かるよ叔父さん」


叔父が協力してくれると聞くと、一同大喜び。特に箱崎パパ


「あと、徹也。お前にどうしても会いたいって奴も連れてきてるんだよ」

「誰だ?」

「おーい、アイ!降りてきたらどうだ!」


叔父がトラックの方を叫ぶと、助手席の扉が開き、この場に合わないフリフリな服装を纏った金髪の女の子らしきモノが降りて来ると


「ごふぅ!?」


こちらに向かって走り出し、そのままの勢いで押し倒し抱きついてきた


「お久しぶりですマスター、親愛なるマスターはこういう感動的な再会がお好きだと思いましたが」

「ああ、生身の人間相手ならな!お前のような無機物の重てぇ人形じゃ感動もあるか!」


一見は人なんら変わりの姿だが、よく見れば


「徹也、もしかしてAIロイドかその子?」


眼鏡をクイッと、よく観察する阿部


「その認識は少し正しくありません、メガネ」

「メ、メガネ・・・」

「初めまして、AIユニットのアイと申します。この体はあくまでも仮初の体に過ぎません」

「AIユニットって、AIECUユニットのことか?」

「ああその通りだ、阿部。このバカ、さっさと降りろ」


渋々アイは俺から降りる


「AIユニットって、今だと高級車とかに搭載されてるけど。ここまで人間的なもんだっけ?もっと無機質なような」

「そうだな、うちにAIユニット搭載車とかたまに修理に入るが」


箱崎親子が困惑する、AIのアイの行動。杏奈先輩と阿部も同じ反応だった


「ええ、メーカーが作るようなAIとは違います。私は明堂学園の電子課とマスターが制作したAIユニットであり自我を持ちます。この体に本体を搭載してAIロイドとしてYガレージの従業員として働いております。つまりマスターの私物です」

「その言い方に色々誤解を与えかねんからやめんか、実際は明堂学園から離れると意思表示したのはお前だし、Yガレージ押しかけて従業員やってるのもお前だろ」

「こっちとしては助かるんだよなアイちゃん、お客さんの接客とかウケがいいし」

「おいおい、叔父まで・・・」


杏奈先輩は、アイに顔を近づけてまじまじと見る


「自我をもったAIって、たしか研究開発か個人使用でなら認められているけどAIユニットとしては危険が潜む為に車への搭載は禁じられているわよね?」

「元々高性能AIユニット開発だったんですよ、どういう訳かコイツに自我が出来上がってしまって、明堂の電子課連中も可愛かったのか捨てずに今に至る訳なんですよ」

「当然です。私のような愛嬌があり、好奇心旺盛な子は可愛いに決まっています。可愛いは正義なのです。」


顔の表情は無表情なのにドヤ顔してるのはわかる、このAI


「ところでお前は何しに来たんだ?アイ」

「マスターの新しい仲間達はどんな人かなっと、非常に興味深いのでトオル様にごねた次第でございます」

「そんなごねた訳じゃなかったけどな。本当は例のウィルスについてだよな?アイ?」


ウィルスという単語に全員反応した


「徹也、例のウィルスってあのハイウェイウィルスのこと?」

「そうですよ、杏奈先輩。だがおかしいな、確かに叔父には話していたが、調査とか明堂の電子課に頼んでいた筈だぞ。しかもかなり難航してると聞いたが」

「マスター、立ち話してもお疲れになるでしょうし、場所を変えて報告することを推奨します」

「長くなるのか、わかった」

「徹也、私も聞かせてもらっていいかしら?」

「・・・わかりました、箱崎さん応接室借ります。奈緒、阿部は作業を、叔父もお願いしていいか?」

「まかせろ、その為に来たんだからな」


箱崎自動車 応接室

杏奈先輩と自分、そしてAIロイドのアイ

アイは自分の腹元のパネルを開き、ケーブルを伸ばしタブレット端末に繋げる


「そもそも、マスターも電子課の皆様は目に見えるもの、表示されるものしか見ていないからわからないんですよ」

「そりゃどういうことだ?」

「このウィルスに感染させたECUユニットを載せて、車を動かしたことは?」

「出来るかよ、車をぶっ壊す気か・・・お前まさかやったのか?」

「ええ、電子課の皆様と明堂のテストコースをお借りしてECUユニットにウィルスを発症するように仕込ませ、私が走らせて実験してみました。私であれば壊れるだけで怪我とか問題はありませんからね」


なにをしてるんだ、明堂学園


「勿論、万が一に備えてクッションを用意して車が壊れない配慮をしましたよ。結果は普通に走れましたがね」

「え?それってつまり実験は失敗したってこと?」

「いいえ、確かに100km/hを越えた時点でウィルスは発動していましたよ。だけど操作に影響は出なかった」

「ウィルスは発動しても普通に操作できる?え?え?」


困惑する杏奈先輩にそれ以上答ええないアイは、俺の反応と返答を待っているようだった

目に見えているものしか見ていないからわからない・・・


「つまり、ウィルスそのものは操作系統のプラグラムの破壊ではなくプログラムを破壊しているように見せかけるウィルスってことなのか?」

「その通りですマスター、そもそもハイウェイウィルスはECUユニットには簡単に感染できない仕組みになっているのはご存知だと思いますが、表示だけなら近年に前例があり、通称フェイクディスプレイ。よくイタズラ目的使われますし、悪質な自動車整備工はワザと感染させてトラブルが起きたと金をせしめるパターンはあります」

「つまり、発動条件はハイウェイウィルスであるが症状はフェイクディスプレイなのか」

「待って、じゃあリリスの事故は?フェイクディスプレイなら事故を起こすような操作不良は起こさないはずよね?」


杏奈先輩の疑問はもっともだ、現に実害が出ているんだから


「マスター、近年にこのフェイクディスプレイ問題に対ウィルスプログラムを制作した企業をご存知でしょうか?ナルミエレクトロニクスという企業を」

「ナルミエレクトロニクス?・・・そういえばそんな企業が」


ナルミ・・・NARUMI、成海・・・その単語で繋がった、杏奈先輩は企業名を聞いた時点で気づいたようだ


「対ウィルスプログラムを制作できるなら、その逆も可能・・・そして、わかった上で今回の事故をワザと起こした・・・そう言いたいのねアイちゃん?」

「その通りです、ここにはナルミエレクトロニクスのご令嬢がいらっしゃいますよね?そしてその方が事故の被害者・・・いえ、加害者というべきですか」


信じたくない推理だが、それなら納得がいく・・・つまりリリス先輩は


「リリス先輩はあっち側・・・教頭側だったのか?」

「でも、この数日のリリスの行動は解せない部分が多い、どうして今も自動車部に居て、なにも妨害をしないのよ?」


「なにかに踊らされているって感じ?」数日前に調査報告を教えた結衣の言葉を思い出す


「杏奈先輩、実は・・・」


杏奈先輩にこれまでの調査していたことを教えた。それと自分の憶測を


「たしかに腑に落ちないことは多かったけど、それなら辻褄は合うか」

「商店街チームとラッシーチームと言うより対決構図なんかじゃなく、どちらにもこの茶番劇を進めているん人間がいる・・・相当手が込んで、長い間、計画を建てられたものなんじゃないかと思えば・・・どうやら、問い詰めないと納得はしないですよね」

「徹也、リリスのことは私に任せてくれない?長い付き合いで、チームメンバー以上に友人としてね」


杏奈先輩はこちらを力強く見つめる。どうしても自分がやりたいようだ


「なるべく穏便にお願いします。メカニックとして車が破壊された心中は察しますが」

「大丈夫、元からそのつもりだから。それにもっと辛いのはリリスだと思うから」

「わかりました、ならオレは迷っているであろう伊東先輩と多田を問い詰めてみますか」


この茶番劇を演じている者たち、何を考え、どんな心情なのか

AIECUユニット

作中のECUユニット上位互換にあたり、通称AIユニット

ドライバーの様々な音声入力等対応しており、ある程度のコミュニケーションが可能

作中の世界では主に高級車、自動運転、自動ブレーキ等のアシスト装備車両に搭載されるケースが多い

ただ、ECUユニットより重量が重い為スポーツ走行、レースでは使用されることは少ない

AIユニットのアイはメーカーが出しているAIユニットより、高性能かつ自我を持っている

作中の通り、自我をもったAIユニットを車に搭載されていることを禁じられている

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