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走劇のオッドアイ  作者: かさ
榛奈自動車部騒動
25/121

協力者

アパート

時刻は22時過ぎ、珍しくこの時間帯になっても徹也は戻って来ていなかった

度々夜中に徹也の部屋に押しかけては、色々雑談をしつつ晩ご飯ご馳走になってる。丁度こちらの食費が浮くので助かっている

決して徹也が好きだとか興味あるとかそういう訳じゃない、あくまで監視対象として接している

神也に似ているからとかそういうことじゃない、徹也が集めまとめていた車両データとかのファイルが興味深いから来ているんだ

決して徹也に好意を抱いてるわけじゃないぞ小柳加奈、今日も晩ご飯をタカリに来たんだ

父さんのお財布事情を少しでも負担を軽減させるためだ、そうだぞ小柳加奈。こうして徹也の部屋の前で待っているのはその為だ、そうだ、これは親孝行だ


「あら?あららら?どちら様かな?徹也の彼女?」


一瞬フリーズした、徹也が美人に手を引っ張られながら戻ってきたからだ


「違うよ、そいつはお隣の小柳加奈さんだ。そんな関係じゃない」

「あらそうなの?」


一瞬イラついた、青筋を立てるぐらいには。ベッタリと徹也にくっつく美人さん


「へぇ~・・・徹也ってそんな年上の人に興味があるんだ、そうかそうかアハハ」


冒頭300文字程の私の感情を返せコノヤロ


「なに勘違いしてやがる、この人はオレの母親だ」

「・・・はい?徹也、冗談にしては下手すぎでしょ?」


徹也の年齢と考えても若すぎる容姿。いやでも徹也の養母ならありえなくはないのか?


「ふーん・・・あなたが小柳加奈さんか。初めまして、探偵で徹也の母の山岡華よ」


華は徹也から離れて、私の方に近づき耳打ちしてくる


(小柳さんから話は聞いてる、あなたと同じよ)


同じってことは、この人が父さんが言っていたシナリオの協力者!?


「何してんだ母さん?加奈に耳打ちなんてして?」

「決めた、徹也。この娘の部屋にお世話になるわ。ねえいいでしょ加奈ちゃん?」(話を合わせて加奈ちゃん)


小声で私に言ってくる華さん


「い、いいですよお母様」

「え?ええ?」


流石に困惑する徹也、そりゃそうだろう


「だって徹也部屋見られたくないんでしょ?」

「いや、確かにそうなんだが・・・」

「さあ!行きましょう加奈ちゃん!徹也も夜更しは程々にね!」


華さんは強引に話を切り上げ、私の腕を引っ張り、私の部屋には入る


アパート 加奈の部屋


「さて、どこから話をすればいいかな?加奈ちゃん?」


テーブルを挟んで向かい合い、話を切り出す華さん


「どこまで事情を知っているとか、いつかこちらの協力者とかいろいろ聞きたいのはありますけど、とりあえず、おいくつなんですか?私にはいいところ20代ぐらいにしか見えないんですけど?」

「あらら、嬉しいわね。でも残念、こう見えてももう30代後半よ?」


どうすればそんな若く見えるんだって、思っていたら


「ん~強いて言うなら常に我が子に愛情込めて接して、エンジョイした日々を送ってるから若々しく見えるのかしらね?」


っと、こちらの心情を読んで


「流石に表情である程度は考えは推測できるのよ?ただ加奈のお父さん小柳さんはなかなかの芝居上手ね、ありゃ徹也じゃ読みきれない訳ね」

「なるほど、徹也の並外れた観察眼はそういうことなんですか」


こちらの心情と考えを読み取り、会話のペースを持ち込む


「私の教えもあるけど、ホークマンの子としての先天性なものがあったんでしょうね」

「知ってるんですね、徹也がホークマンの遺伝子で作られたクローンということを」

「あなた達のアルカディア機関が絡んでいて、そしてSSR計画の一部であること、そして鷹の再臨計画も、もっとも知ったのは二週間前だけどね」

「え?二週間前?」


それは徹也がこの学校から来る前から知っていたということなのか


「徹也から頼まれたのは丁度一週間前だけど、まあ、可愛い我が子の取り巻く環境を調べるのは当然だからね。一ヶ月前から事前調査をしてたのよ。その調査の中で小柳さんに接触してね。徹也の出生に関しての情報を引換にそちら側の付いたってこと」

「出生を知りたがっていたのは、親だからこそだったんですね」

「あとこっちは徹也の過去の病気とか通院記録、どういう人間なのかという情報提供をしていたのよ。人間性とか性格はあくまでも私の主観に過ぎないけどね」


なるほど、森先生の報告は華さんの情報提供によるものだったのか。そして華さんがシナリオの協力者であることをあの会議で父さんが言わなかったのは悟られないように。アレ?でも?


「私にシナリオの協力者ってことを言ってよかったんですか?父さん以外にそのことを知らせていないんですよね?」

「大丈夫じゃないかしら?要は徹也に悟られなければ問題はないって言われてるからね。その点なら加奈ちゃんは信用できるって小柳さんのお墨付きだったからね」

「随分アバウトというか」

「この計画自体、誰が計画に関与して、役に演じている、演じられているという詳細はアルカディア機関側の人間ですら知らされていないものね。そうすることで真相に簡単にたどり着かないようにしている。偶然性や誤算を含めて、それすら味方にするヒーローを祭り上げる・・・本当、茶番劇ね」


たしかに茶番劇なのだが、これを本気で実行しようとしているのがアルカディア機関なのだ

実際、徹也のこちらのシナリオを大幅に書き換えることをやってのけている。元々アルトワークスは破壊される予定で予め用意していた車があったのだが、23型のアルトを即日で用意してくるのだから行動力が早い

しかし、親であるこの人が協力するのは


「華さんは、こういうことをして平気なんですか?仮にも徹也の親なのに」

「我が子を騙しているようで心は痛むけど、小柳さんと約束もあったからね。約束を反故にしようものならそれこそ徹也の親として示しがつかないもの」


にっこりと笑う華さんに、徹也が羨ましく感じる。親の愛情を受けて育てられた環境なんだと思うと


「さて、こちらの事情は粗方話したかしら?ここから私から聞いていいかしら?加奈ちゃん」

「え?私から聞くことって・・・」

「そうね、加奈ちゃんはこの計画自体どう思っているのかしら?この計画が成功しようと失敗してもあなたは榛奈高校から去るということを聞いているけど」


父さん、そこまで話していたのか


「私は二人の監視役であり、小柳加奈はシナリオ上は二人の対戦相手にしか過ぎない。役目が終われば小柳加奈は81番に戻るだけです」

「だけどその気があればただの高校生の小柳加奈として生き行ける選択肢がある。本心ではそれを望んでいる」


父さんから聞いたのだろうか、いやこちらの心情を読まれたか


「そうですね、確かに自動車部と過ごす日々、結衣と走り合い、ドライビングテクニックを切磋琢磨して結衣と友達として付き合う・・・楽しくして手放しがたい環境。このまま小柳加奈として生きたい」


心の底の小柳加奈としての本音、だけど


「だけど、私は怖いんです。小柳加奈として将来生きていける自信がないんですよ。81番として生きていた期間が長すぎて、これ以外の生き方がよくわからない・・・どうすればいいのかわからない」


いつの間にか、自身の目頭が熱くなっていた。涙を流していた・・・初めてじゃないだろうか、こんなことを人に話すなんて

その姿を見た華さんは私を抱きついて、頭を撫でてくる


「大丈夫、加奈ちゃん。何も怖くないから・・・泣かないで」

「・・・はい」


抱擁と頭を撫でられる感覚、これが母の優しさ・・・初めての感覚で暖かくて優しさを感じた

しばらくして、涙が落ち着き、華さんはこちらの顔を見ながら話してくる


「私ね、徹也の身体のことを聞いたのよ。本来なら10歳で死ぬ運命を偶然か乗り越え、アルカディア機関が想定しなかったSGT二連覇をあの子とそのチームはやり遂げた。自らの運命も人が決めたレールを超える力はあるの、少なくとも私の息子はそれをやり遂げた」

「確かにそうかもしれませんが、私は徹也ほど強い人間じゃないんです・・・レールから外れることを恐れている臆病な人間なんですよ華さん」


そう言うと、華さんはおかしかったのか少し笑いながら


「徹也だって臆病な子なのよ?確かにいつも堂々とハッキリと誰にも構わず言葉を発せるけど、ほとんどは虚勢とハッタリで、本来はシャイな子なのよ。会話は優位に立てるようにあらかじめカードを何枚も用意して挑み、人を観察して本質を見極める・・・まあ、私の教育と影響なんだろうけどね」

「臆病は意外かなって思ったけど、確かに用意周到なのは」

「思考と言葉は人の特権って教え込んでるから、徹也は言葉が持つ価値と力を知っている・・・加奈ちゃん、徹也ならあなたを小柳加奈として手を引っ張っていけると思うよ」


自ら運命に打ち勝ち自らの道を歩む、徹也のその姿は眩しくて、惹かれるものがある・・・だが


「まあ、いっそうのこと私の娘として加奈ちゃんを引き取ろうかしら?」


笑顔で冗談を言ってくる華さん、嬉しいけど・・・既に父さんがいるから

それにしても、笑顔にしてはなんか華さんの息が荒いような?


「そんな感じで徹也を息子として引き取ったんですか?」

「うーん、徹也の時はね・・・一目惚れだったかしらね?」

「一目惚れ・・・?」


聞き間違いだと思いたい


「そう、一目惚れ」


聞き間違いじゃなかった

華さんはお腹をさすりながら、思い出すように話す


「当時ね、子供流産して子供が産めない体になって、さらに結婚して一年足らずで夫も亡くなってしまって・・・未亡人で落ち込んでいる中で徹也に会ってね」

「そうだったんですか・・・」


華さん、苦労していて


「落ち込んでいる私を慰めてくれて」


なるほど、それ一目惚れして養子に


「欲情しちゃって。私の子供にならないって?告白した訳なのよ」


ドン引きした、欲情って言った時点で身の危険を感じて部屋の隅まで離れた。え?息が荒かったのそういうことなの?


「いやいやいや、そんなドン引きしないでよ加奈ちゃん、いくらなんでも子供に手は出さないわよ。ただね、今の成長している徹也を見ると格好良くって」


両手に頬を当て、赤面している華さん

いろんな意味で徹也と私が危険に晒されていることがわかった


「華さん、ここから2m私に近づかないでください。破ったら部屋を追い出します」

「いやひどくない!?」


恋する乙女は美しい。上村先生がそんなこと言っていたが、年齢と見合わない若々しい容姿は常に徹也に恋していたのかこの人

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