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走劇のオッドアイ  作者: かさ
榛奈自動車部騒動
20/121

ACT.18 結衣と子供達 3

自動車部 商店街 ガレージ


「このチェッカー端末か?結衣」

「うん、桜井先輩が置いていったのそれだよ」


徹也は端末のいろんな箇所を見る、横、後ろ、電源を入れて色々と触ってみる


「パッと見は何にもないようだが・・・バラした形跡があるな。中の基盤でも変えたのか?」

「でもなんで桜井先輩端末を・・・」

「・・・結衣、前話したウィルスの話を覚えているか?」

「ハイウェイウィルスだっけ?」


今回の事故の大元の原因ではないかと徹也が言っていたことだ


「実は、昨日このガレージに寄ってこのチェッカー端末を探してたんだよ。その時は見つからなかったんだよなコレがな」

「それまたどうして?」

「どうやってECUユニットに感染したのか気になってたんだよ。知り合いとか明堂の情報処理の奴とかにウィルスデータを調べさせてわかったのは繋げたら、防御機構のない電子機器問答無用に感染させる代物というのがわかったんだ」

「つ、つまり?」


思わず首をかしげてしまう


「ウィルスはこの端末に仕込まれていて、杏奈先輩がECUユニットに繋げたことによってアルトワークスに感染した。そしてその証拠隠滅を図ったのが・・・あくまでも憶測だが」

「・・・そんなことって・・・」


桜井先輩が仕込んだ。徹也はそう考えていた


「元々身内、いや学校内の誰かが仕組んだだろうなって思ったけど・・・桜井先輩って一体何者なんだ?これを仕込める人間って相当な専門知識がないと無理だぞ?」

「桜井先輩はそんな感じじゃないよ、美人で周りに気を配れるいい人って感じで、典型的なマネージャーって感じだよ。車の知識はある程度はあるけどメカニック程ではないはずだよ」

「美人なのは同意だが・・・あの人初対面の時にどんな人なのか全然掴めなかったんだよな・・・」


徹也は頭を掻いていた。見ることが得意な徹也にとっては不覚だったのか


「あと、伊東先輩と多田君とは幼馴染なんだよ」

「そうなのか?」

「うん、小学生からずっと同じ学校で家が近所なのあの三人。詳しくはわからないけど、多田君は伊東先輩と桜井先輩にはタメ口で話すぐらいの仲だよ」


しばらく徹也は考え黙り込んでしまう


「結衣、このことは他言無用で俺が預かる。結衣はあんまり考えず大会のことに専念してくれ」

「いいのかな・・・」

「放っておけない気持ちはわかる。なにかわかれば教えるし、協力して欲しい時は頼む」


徹也の真剣な眼差しかつ、優しい表情を見せる。本当に不思議な人だ、なんでも任せられる


「さて、この話は一旦終わりだ。ところでな結衣、静恵さんがお金渡されてな、メカニック達に差し入れよろしくって・・・なにかいい店知らないか?」


端末をしまいこんで、徹也はお札を見せつける


「うーん・・・甘いものがいいかな?」


榛奈町 商店街

所謂アーケード街、時間帯なだけに買い物客や通行人が賑わう


「いや、静恵さんこれ人選ミスじゃねーの?」


商店街のあらゆる店の方々が結衣の所に集まり、案内どころじゃない


「結衣ちゃん、ワークス壊れたの本当か!?いつでも力になるよ!」

「大丈夫だよ電気屋のおじちゃん」

「結衣ちゃんや、たまにはお店に顔を見せてくれよ。孫の顔より結衣ちゃんが見たいんじゃ」

「花屋のおばあちゃん、先週会ったばかりでしょ?孫も大切してよ」


お店の人達に心配や励ましの声があがり、地元の買い物客の主婦からは


「あら、結衣ちゃんも隅におけないわねー。こんな色男な彼氏がいるなんて」

「違うよおばちゃん、この人最近転校して来たばかりで案内してるだけだよ」


彼氏扱いされる始末、勇気に申し訳ない

まともに案内されず商店街出口に出た時には両手に大量のビニール袋で塞がる

サービスなのか、結衣の人徳故なのか、商店街のお店の人達が色々と渡してきたのだ

買い物するまでもなく、差し入れが手に入ってしまった


「片方持とうか?徹也」

「いや、いいよ。結衣に持せてる姿を奈緒に見られたら何言われるか予想が付く」

「あー・・・ごめんね」


「男なのに女の子の結衣に荷物を持たせるのは何事か」とか言われそうな気がしたからである

商店街を抜け、箱崎自動車に向かう道中の公園に聞き覚えのある声と植えてある10m程ある木に子供達が集まっていた


「ノブとゴローとマミちゃんか?あれ?」

「本当だ、まだ帰ってなかったんだって・・・ああ、またか・・・」


少し呆れ気味な表情をする結衣、二人でノブ達の元に行く


「みんなー」

「あ!結衣姉ちゃんと徹也兄ちゃん!」


結衣が声を掛け、3人はこちらに気づく


「結衣お姉ちゃん、ニャン助が・・・」


マミちゃんが木の幹から生えてる結構太い枝の一つを指を差すと、ブルブル震えてるトラ柄の子猫が情けない鳴き声を上げていた


「なんだあの猫、降りれなくなったのか?」

「ニャン助、木に登るくせに降りれないんだよ・・・本当学習しないな」


ゴロー君の言い方だと、木登り常習犯なのかあの猫


「はあ、仕方ないな・・・徹也君、ちょっと荷物持ってくれる?」

「ん?どうするつもりだ結衣?」


両手で塞がっているが、腕を組ませ上手く荷物を持たせる結衣


「みんなちょっとどいて・・・せーのっと!」


結衣は助走をつけると、木に向かって走り出し、そのままの勢いで木に向かってジャンプし、木の幹を蹴り三角飛びする

猫がいる枝の所に飛び、両手で枝に捕まりそのまま逆上がりして枝に乗っかる


「よし!」

「う、うそーん・・・」


人間技とは思えない、アクロバットな動きをする結衣に、もう驚きで口があんぐり空いて随分マヌケな顔をしてると思われるオレ


「まったく、ニャン助ったら・・・」


ニャン助は嬉しそうな鳴き声を上げると、抵抗することなく結衣に抱き抱えられる

ニャン助を抱きながら枝からそのまま飛び降りて、見事な着地をする


「流石!結衣姉ちゃんだ!」

「え?結衣っていつもあんな感じなのゴロー君?」

「うん、結衣姉ちゃん運動神経抜群だもん!」


いや、あれ運動神経抜群とかそういうレベルじゃない


その後ニャン助を解放し、3人達と別れ、箱崎自動車に向かう

道中


「結衣ってなにか特別な訓練でも受けてたのか?なにあの身体能力」

「いやいや訓練って・・・うんまあ、小さい頃は結構外で遊んでたからその影響かな?」

「そんなんでオリンピック選手級の身体能力を持ってたまるか。あれだと他の運動部とかにスカウトされたりとかあるのか?」

「現在進行系で常に声はかけられるね・・あはは・・・」


その様子だとかなり声を掛けられてる上に、うんざりしてるんだろうな結衣


「でもなんか納得したな」

「納得したって・・・なにを?」

「結衣のドライビングセンスのことだ。やっぱり身体能力がダイレクトに反映されてるんだなって・・・とは言えまだ詰めが甘いが」

「やっぱりって・・・前例があるの?」


結衣の質問に明堂学園のドライバー達を思い出す


「ああ、身体能力が高い奴はスピード感覚が常人より遅く感じるらしいんだ。大概どのスポーツやらせても上手かったからな明堂学園のドライバー達」

「ふーん・・・明堂学園ってやっぱり凄いドライバー多かったでしょ?」

「まあ、全国の将来有力なレーサーをスカウトしてるだけはあるが・・・本当に飛び抜けて凄いドライバーは3人いたな。一人ぐらいなら結衣も名前を聞いたことあるんじゃないかな?海王 渉(かいおうわたる)って奴だけど」

「あ、聞いたことある。凄い名前だなーって感じの印象だったけど・・・明堂学園だったんだ」

「ちなみにアイツ、俺達と同い年なんだよ」


渉の奴、確かに苗字が珍しいからそんな覚え方されても仕方ないな


悪いことは正し、周囲を助け、象徴する力を持ち、榛奈町の人たちに愛されてる

この重たい両手のビニール袋が愛されている証拠だ

榛奈町の小さいヒーローとしての鷹見結衣のもう一つの、いや、本当の姿なんだろう


「静恵さんに感謝しないとな・・・結衣のことがもっと知れたからな」

「あら、嬉しいけど。そんなこと言っても徹也のことは私好きになれないな~・・・徹也ももっと自分のことを話したら?」

「なにも結衣のことが好きになった訳じゃないぞ?」


意地悪そうな表情をする結衣に、こっちも意地悪したくなった


「そうやって人の過去を詮索するには相手が悪いぞ結衣?俺は口先には自信はあるからな、もっと凄いことを掘り下げてやろうか?」

「う・・・嫌な予感がするからやめとこう。徹也は口の上手さと頭の回転の速さと見る目は確かだもんね・・・ここ数日の行動でそれを示してるし・・・あと徹也、表情がすごい悪人顔になってる。とてもじゃないけどお子様に見せられない顔になってる」


口先勝負に持ち込まれたら勝ち目がないと判断し、これ以上聞かなかった結衣。というか引いていた

どっちかという俺のゲス顔で引いていたみたい


「え?結衣、そんな引くぐらいオレの表情おかしい?」

「うん」

「まあ、機会があれば明堂学園のこととか話すよ。今はやることが多すぎる」


というか今日の練習と桜井先輩にウィルス・・・やることも調べること、考えなちゃいけないことが増えてしまった

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