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走劇のオッドアイ  作者: かさ
榛奈自動車部騒動
17/121

定例報告会

薄暗い会議室 定例報告会に設けられた場所

巨大スクリーンと会議用の机に森先生と父さん、そしてスクリーン映る初老の男性

そして私の小柳加奈の4人の定例会議


「それでは定例会議を始めます、私加奈・・・いや81番の報告を開始します」

「君はもう81番ではなく、私の娘の小柳加奈だ。わざわざ訂正しなくてもいい」


父さんは名称を訂正した私を指摘し、小さく頷いて続ける


「プロト0 山岡徹也について。予想通り彼は商店街チームのリーダーとして抜擢され、さらに我々が想定を越えて事が進んでいます。もう使用車種からチューンまで開始しています」


それを聞いたスクリーンに映る男性が「ほうぉ」と関心を持つ


「こちらが用意したシナリオを越えてくるのかプロト0は・・・あの一族栄光気質の明堂学園で頭角を現すだけはあるか」


関心してるスクリーンの男性の後ろにもうひとり映る、榛奈高校とは違う学生服を着用し緑と金色のオッドアイが特徴であり・・・そして徹也に容姿が似る男子生徒


「だから僕が言った通りでしょ?白柳教授、兄さんは僕達が用意したシナリオを越えるし真相に迫る。そもそも彼は我々の想定した死の運命を越えた人間というのを忘れていませんか?」

「神也、お前はプロト0を買いかぶり過ぎだと思うが・・・森先生、プロト0の遺伝子情報の結果はどうだった?」


指名された森先生は立ち上がり報告する


「はい、彼の遺伝子情報を解析した結果、当時想定されたテロメアの減少が起きておらず普通の人となんら変わりありません。一点だけ言えばホークマンのクローンとして、SSR計画・・・スーパー・スター・レーサー計画のある意味成功例とも言えます」


白柳教授は顎に手を当て、思い出すように言う


「プロト0は試験的に遺伝子情報の一部だけを操作していたが、中途半端な操作が原因で10歳も生きることができないと判断され結果的に廃棄処分・・・なにか特別な要因でもあったというのか?」

「いえ、彼の経歴と過去の病院の通院記録や身体測定のデータから見ても特別なことはありません。生命の神秘とも言える我々の計算や測定では測れない奇跡とも言えましょう」


きっぱり否定し、奇跡として片付けるしかない要因


「その中途半端な遺伝子操作の反省を活かして、僕を含めたナンバー1の鷹見結衣を始めとするナンバー達は遺伝子情報を徹底的に操作され寿命の問題はなくなり、ホークマンを超えたクローンとして作ることに成功した。だが兄さんは特別な力を与えられた訳でもなく、あるとしたらホークマンの遺伝子を受け継いでるぐらい」

「彼、ホークマンの血を受け継いだだけはあるよ・・・経歴を見ていても若い頃の彼を見ているようだよ」


続けて父さんが報告する


「彼の経歴を調べたが、孤児院で山岡華に引き取れられた育てられ学業は優秀優等生。叔父の山岡徹が経営するYガレージで車を学び車を走らせていました。車好きの遺伝子はホークマンを受け継いだだけはあります」


父さんは普段見せない、にこやかに懐かしいそうに報告書のタブレットを見る


「小柳、悪徳教頭役よりその方が似合うな」


白柳教授は微笑みならがら、父さんに言う


「ただ役に入り込み過ぎたせいで、彼に疑問を持たれました。手段が手緩いと思われているでしょう」

「元々商店街チームを潰すのではなく、両チームが戦うことが目的なのだから徹底的な手段は不要なのだが・・・なにか問題あったか?」


白柳教授は父さんに問うと、父さんは頭を掻きながら報告する


「彼の手札を甘く見ていました、裏で探れる人材を持っていますよ」

「なんだと!?」

「小柳さん、それ僕も聞いてませんよ!?」


父さん以外全員驚いた、当然私も


「交渉し、一応懐柔させ我々の協力者としてシナリオに入れさせました」

「どこまで知られた?」


険しい表情で父さんを問いただす教授


「彼の出世とシナリオ、そして我々のアルカディア機関の関わっていること。もっとも彼女は徹也の出生を一番知りたがっていましたがね。問題ありません、表に公表することはない信用できる人物です」


父さんがそう言うと、少々不服ながら納得した教授。だがもっと不服そうなのは森先生のようだ


「森先生に知らせなかったのはボロが出ると思ったので」


指摘され「う」っと声がでる森先生


「徹也は頭が回る上に観察眼が鋭い、半端な演技と嘘は簡単に看破する。森先生はなるべく会話などは避けてください」


そこまで言われさらに落ち込む森先生

先生は演じる役割としては不向きな人、すぐ顔に出る


「白柳教授、シナリオ通りの結末を迎えるのであればやはり彼らに出生を語る必要があるんでしょうか?」

「避けては通れまい、SSR計画白柳部門のナンバー5とナンバー6の二人の存在証明と価値はプロト0を倒すことで実証される・・・いや、証明しなければならないのだ。16年の歳月をかけたのだ」

「僕は楽しみですよ、兄さんと対決できる時を・・・この僕、白柳神也が兄さんを越え、僕達の力を見せつける」


話題はプロト0 徹也のことばかりになる


「結衣・・・鷹見結衣は?彼女も「鷹の再臨計画」のシナリオに組まれていたのでは」


そんなことを口に出してしまう、監視対象としてではなく、友達として


「ナンバー1か・・・森先生、彼女の様子は?」


私の問いに森先生を指名する白柳教授


「結衣ちゃんのASDは徹也君の存在で緩和される様子がありましたが、改善の見込みは不明です。彼女の心の傷は根深いものです」

「ふむ、ナンバー1の才能の成長速度は期待して、本来のシナリオの主軸は彼女の筈だったが件のチームの一戦であの報告書の通りの有様・・・大きく計画の修正をさせれることになった。私個人的には彼女には何の期待を抱いていない。鷹見結衣はホークマンになり得ない存在だ」


計画のトップである白柳教授は結衣はいらない存在として扱うようだ・・・

なにか私の表情で察したのか、神也が喋る


「加奈、一年以上監視し見てきた君には僕達が思う以上の何かを鷹見結衣に感じているのかい?今までの報告書もそうだが、加奈は鷹見結衣に対してなにか思い入れがあり過ぎてるのではないか?」


適確かつ私の心情を読み取る神也

思い入れがあるのは確かだが、それ以外に何かしら結衣に可能性を感じている

だが、それを正確に伝える言葉と確証が見つからない


「教授、テール・トゥ・ノーズで走り合ったことがあるドライバー同士で何か感じるモノはあるとは思います。鷹見結衣を期待外れと考えるのは早計かと」


言葉を詰まらせた私に変わって、父さんが意見をする


「ドライバーとしては認めよう。だが「鷹の再臨計画」に求められるのはドライバーとしての技量以上に英雄性だ。ヒーローとして伝説を刻むことが出来き、我々が用意したシナリオを達成しえる人物だ」


教授が唱える英雄性、それが徹也に当てはまる。


「ですが、山岡徹也の存在が鷹見結衣に何らかの影響をもたらす可能性はあります。それに・・・」


父さんは私の方を少し視線を向け言う


「私は自分の娘の直感を信じる」


血の繋がりがなく、ほんの一年前に計画の為だけに親子になった父の言葉

声は出さなかったものの、驚き、そして嬉しかった


「・・・子を持つ親としてか・・・」


ボソッと、教授は言う


「確かに兄さんが鷹見結衣をどう扱うか興味はあるね。ただの速いドライバーとして終わるか、ホークマンの遺伝子を受け継いだ僕達のような才能に目覚めるか、否か」


神也の表情がニヤける、自信の表れか、それとも純粋に楽しみなのか

それだけの圧倒的な実力と技能を持っていることを知っている


「ただ、81番。あまり私情を出さないように、あくまでも君はアルカディア機関の工作員かつ二人の監視役という役目を忘れるな」

「・・・はい」


最後に教授に釘を刺されて、定例報告は終わった

森先生は先に席を離れ、父さんと私だけの会議室


「加奈、白柳教授はああ言っているが気にするな。お前は自分が思うままの道を歩みなさい」

「父さん、それは・・・機関を裏切れということ?」


少し、意地悪く聞いてみる


「榛奈高校に来てから、正確には結衣と奈緒と出会ってから変わっただろ?口の悪さは変わっていないが・・・81番としてアルカディア機関の工作員としての道か、小柳加奈としての道か・・・どれを選ぶかは自由だ。私は父親として全力で応援はする」

「・・・偽りの親子関係なのに、どうしてそこまで?」

「小柳加奈という名前を付けた名付け親としての愛着と・・・まあ、父親の気まぐれだと思って、あんまり深く考えるな」


ホントにこの人はよくわからない、普段の顔と父親の顔で完全に使い分けるから


「父親役はここまで・・・悪い悪党教頭の役に入り込まないとな」


そういうとさっきまでのにこやかな父親顔の面影はなくなり、悪意溢れる「教頭」の顔になる


「さてはて、徹也達はこの状況のシナリオをどう越えていくか・・・」


だからこそ工作員として抜擢されるのだろうけど



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