表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
走劇のオッドアイ  作者: かさ
浮上島編
117/121

ACT.105 stGTライト級一回戦 蒼鷹高校VS儀臥学園 1

浮上島B シティコース

試合は順調に行われ、いよいよ浮上島Bブロックの注目の対戦カード…というより、儀臥学園の注目された試合がいよいよ行われる


「…思った以上に観客がいるわね」

「Aブロックの明堂学園の試合が終わりましたからね、今度は注目の儀臥学園に集中してるんでしょうね上村先生」


明堂学園の試合は、ほぼ瞬殺だったらしい。一セット、2周目で決着がついたようだ


「徹也、タイヤのセット完了したぞ」

「わかった阿部…よし、全員集合だ!!」


メンバーを全員集め、この試合の作戦の確認を再度行う


「儀臥学園の先行で、こちらが後追いから始まる。予定通りにパターンはプランAで行う、1セット目は結衣、お前の出番だ」

「うん!」

「杏奈先輩、履かせたタイヤは?」

「予定通りに、ハードタイヤよ。結衣、わかっていると思うけど、耐久性はあるけどグリップ力は弱いからそこは気を付けてね」

「はい、わかりました杏奈先輩」

「結衣、まず2周だ。そこで相手がこっちの思惑に乗ってくればパターンは変える。オレの方も随時相手の動きとタイムを見る」

「わかったよお兄ちゃん。頼りにしてる」

「こちらの思惑通りに事が動けば…2セット、3セット目はリリス先輩が決めてください」

「OK、徹也」


なんかアレクサに聞いてくるようなトーンで返事をしてくるリリス先輩、どうやらテンションと調子はいいようだ

無線のチャンネルを、アイに合わせる


「アイ、タイムを遂次演算して、目標タイムを出してくれ」

〈わかりましたマスター…こんな融通の利くやり方、アルストリアには出来ない技ですね〉


挿絵(By みてみん)


結衣はアルトに乗り込み、スタートラインに向かう。チームメンバー全員配置に付き、オレはオペレートレンズを起動させる。目の前に複数のスクリーンが表示される

今までは複数のPCモニターから、情報を目まぐるしく見ていたが、オペレートレンズならかなり楽が出来る…まあ、オレにとってはだが

コペンと蒼いアルトが前後に並び、シグナルレッドから…グリーンへ

激しいスキール音とエキゾーストの咆哮、2台のマシンが一気にスタートし、加速していく

儀臥学園と蒼鷹高校の戦いの火蓋が切られた

エンジンと電磁モーター、両方の動力がフル稼働し、2台を加速していき、グリットラインのホームストレートから第一コーナーのブレーキタイミングには200㎞/hを越える

コペンとアルトは、どちらも可変機構がフルブレーキング形態になり、一気に減速、第一コーナー…フルブレーキング形態から加速形態に変形する


「ほう…あちらのコペンの可変機構、前日よりスムーズになっているか。ECUユニットを調整したか?」

「スムーズだと、やっぱタイム的に差は出るもんか徹也?」

「ああ、それだけコーナー時のロスが減られれるが…」

「それも想定内って訳か」

「そういうことだ、阿部。オレは人を信じるタイプなんでな、良くも悪くもな」

「嫌な信頼のされ方だな」



第一コーナーのブレーキングでもわかる、相手の上手さが

全力より、温存出来るギリギリの塩梅の余裕を残すドライバーの方が手強いというのはお兄ちゃんの談

第一コーナーからタイトセクション、ハイスピードセクションまで相手の動きを見せることなく、温存している

こちらを見極めているのは後ろから観ていれば理解出来る

相手のコペンが行動を起こしたのは、2周目の最終コーナー立ち上がり、ホームストレートからの加速からである


〈アラート!先行車両から電磁モーターの電圧上昇確認!オーバーロードシステム作動確認!〉


リア側のホイールがけたたましいスキール音を鳴らし、恐らく電磁モーターの駆動音がサーキット中に響くだろう

オーバーロードシステム

お互いに電磁モーター搭載車のみに使用可能としている、所謂電磁モーターのスクランブルブーストと言うべき装置

無論、このシステムはこちらのアルトも電磁モーター搭載時に同様のシステムを積んでいる

相手がオーバーロードシステムの作動がわかった瞬間に、間髪入れずにステアリング裏に付けているオーバーロードシステム作動スイッチを入れる

電磁モーターの生み出すトルクが一気にリアホイールから押し出すような加速、私の体のシートにさらに貼り付けれるような感覚が容赦なく襲う

距離は離れないものの、オーバーテイク出来る程の距離が詰まる訳でもない。長い直線での加速性能はコペンとアルトは互角…いや、真後ろについてスリップストリームに入っている状態で詰まらないとなると、空気抵抗的にコペンが性能的に若干ながら上であると考えるべきか

相手を観て判断してる内に第一コーナが迫り、ブレーキングポイント

コペンは完全に逃げ切り勝負に入った、これまで以上に深い位置にフルブレーキングをする。先程までの温存する走りではない、第一コーナーからタイトセクションのコーナリング、激しいスキール音が鳴らしながらコーナーを抜けていく

こちらもペースを上げるが、徐々に離れていく

タイトセクションから、第七から第八のS字コーナーを抜け、ハイスピードセクション。ここまでだいぶ離れている


「…2秒差?2.3秒差か」

〈ご明察、流石結衣様…数字を見ずに言い当てるとは〉

「伊達に特訓していないからねアイちゃん。残り2周、こっちも勝負をかけるよ」


勝負を仕掛けるのは目に見える今の相手ではなく、目に見えない先の先の相手、相手を追うという本能を抑え自分の走りに徹する



目の前でコペンがスターティンググリッドを通過し、続けてアルトも通過…その差は3.7秒差


「すげぇな、寸分狂いなく予定通りのタイムで走っているな結衣…しかも下の数字もキッチンと000で並んで」

「フツーなら、このタイム差は慌てるけど…なんというか結衣ちゃんがホント人間離れした走りをしてるんだな。それを散々叩き込ませたんだろう徹也?」


結衣にそういう走らせ方を叩き込んだオレが驚くぐらい、結衣の走りは数か月前より精度が上がっている

3周目初めに相手がスパートをかけた時点でこちらの予定通りの戦略を仕掛けていた


「可能な限りあちらにスパートをかけさせて、こちらは一定のペースを保ちさせて、マシンダメージとタイヤを温存させて長期戦に持ち込ませる…なにも駆け引きは接近戦だけじゃないからな」

「けどまあ、ヒヤヒヤする。こっちとしてはノックダウンで決着が付きそうで怖い」

「実際、オレもすげぇヒヤヒヤしてるよ阿部。結衣はオレの想定を超えてくるから」


その予想は大当たりする、4周目のスターティンググリッドを通過時のタイムは4.5秒差

コペンの3周目と4周目のラップタイムは約0.2秒差だが、流石にペースが落としすぎている


「結衣、大丈夫か?」

〈大丈夫だよお兄ちゃん。まだ詰めれるよ〉

「マジか…」


そしてラストラップ、タイム差は4.7秒差

結衣のヒヤヒヤさせる走りにこちらのチームメンバーは動揺している者達がチラホラ、特に奈緒はわかりやすい

儀臥学園の陣営側の方を目を向けると、あちらのチームメンバーは「惜しい!」という言葉を言っているであろう雰囲気であった

こちらの動揺している姿は、儀臥学園側も見えているはず



ラストラップ、最後の一周。表示されるタイム差と自分の走りとペースを逆算しながら走る

オーバーテイクによる接近戦の苦手意識の自覚のある私にとって、タイムを揃えて走るというのはうってつけの戦略をお兄ちゃんは立案してくれた

たった数ヶ月程度の時間の中で作り上げた自分の技術を信じて、操作していく

速く走るよりも、より神経を使う。これを続けてやるのは流石に集中力が保たないが自分の出番はこの試合において、この1セットだけの予定。このラストラップに全てを捧げる覚悟で挑む

タイトセクション、4.75秒差…ハイスピードセクション4.86秒…そして最終コーナー、4.97秒…!!

最終コーナー立ち上がり、アルトのハイスピード形態とオーバーロードシステムで最終ストレートを駆け抜ける

4.975…4.986…4.9秒!!頭の中でカウントしながら、スターティンググリットを過ぎる


〈…4.999秒差!…あ、あぶねぇ…〉


流石のお兄ちゃんも相当ヒヤヒヤしたのか、らしからぬ本音が零れている


〈結衣、誰もそこまで狙って走れとは要求はしていないから勘弁してくれ。心臓に悪い〉

「でも、これで勝つ為の布石は打てたよね?」

〈全くお前は…〉


クールダウンでコースを回り、ピットに戻る

蒼鷹高校と儀臥学園の勝負は1セット目で決着がつかず、2セット目に持ち込ませられた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ